坂口がまた上を向いたから、俺も何となく上を見る。
冬の夜空。胸の奥に突き刺さるような星の光。

『・・沼田さんは僕と同じで恋とか愛は、男の人とだけ・・で、
だから他の人達よりは僕らは同じです。だけど、でもちょっと違って・・。』 

『うん。』

『僕はあの・・比呂ちゃんへの恋は実らなかったけど、でも僕は・・
告白してふられたわけではなかったじゃないですか。で・・今も仲良くて
親友です。深刻な悩みの相談は、僕、麦ちゃんじゃなくて比呂ちゃんにするんです。』
『はははっ。まじかよ。』

あははって、声をあげて笑う坂口。

『まじです。へへっ。比呂ちゃんは、感情論で話さないから、僕に合ってるんです。
あの人は、人としての話をしてくれます。導いてはくれますが、答えはいつも僕に決めさせる。
僕がただ誰かに対しての愚痴とか恨みを吐き出したい時も、比呂ちゃんがいいですね。
あの人、全然知らない僕のムカついている相手のことを、ボロクソに言ってくれるし、
しょうもない呪いもかけてくれるし。』
『ああ。わかる。寝ぐせが取れなくなる呪いとかだろ?』
『はははっ。そうです。そんな感じのヤツです。笑い飛ばしてすっきりして、元気が出ます。
次に呪いの相手に会った時とかも、比呂ちゃんの呪いの時の顔が浮かんで、そうなるとなんか笑えて、
怒りもすうっと収まるから・・・・』
『そうか。』

くすくすと笑った後、坂口は息を吐いて下を向いた。

『僕・・・一緒に沈んじゃう人は駄目なんです。麦ちゃんは・・優しい人だから。
あ、比呂ちゃんが優しくないってわけじゃないです。・・麦ちゃんは、いい意味で、弱虫です。
僕は比呂ちゃんに告白しなくてよかったし、命がけで告白した相手が麦ちゃんで本当に良かった。』
『・・・うん。』
『あの人の弱さと優しさが、僕を生かしてくれてます。告白して、返事もらえて、
今も付き合い続けられてます。しかも幸せな毎日です。好かれてるのが、わかるんです。
・・・友達の好きと恋人の好きは違います・・。僕、初めての恋愛で、それを実感できてます。
願いが叶う前はつらい事ばかりでしたけど、叶った後は幸せばかりで。
飛び越える前よりも、飛び越えた後のほうが、自分に自信もつきました。
でも・・・・。』

『・・・・。』

『でも、沼田さんは、本当に辛いことが多かった。色々大変だったって話を、前に聞いたんです。
僕が男の人しか好きになれないって話をしたときに、たくさんの話をしました。
恋人同士になってからの裏切りを何度も経験してきたって話とかも。』

『・・・うん。』

『ちゃんとした別れとかもほとんどなくて、捨てられたり騙されたり、
全くの他人同士の時だったら、沼田さんみたいな人だったら、騙されるような
事はなかったはずで、相手が恋人だったからこそ、信じて結局裏切られて・・・』


坂口はそういうと、顔を上げてまっすぐに俺を見た。






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