那央と付き合ってることが幸村の両親にばれた時、ちょっと色々あったんだけど
そのあと那央のお母さんに呼び出されて、打ち明けられたことがあった。

中学の時に受けたいじめが原因で、那央がパニックを起こしやすくなってるってこと。

病名もついてて、医者に通って診断書も出たし、治療も受けたりしていたから
甘えや弱さで症状が出るわけじゃないから、それは覚えていてねって言われた。
で、ここ数年は落ち着いているけど、酷いときには手が付けられなくなるから
後々那央の事が重荷になると思うし、別れるなら早く決めてあげて・・とも言われた。

「好きで一緒にいたいと思う人だから、病気があるなら支えます。」って俺はこたえた。


付き合う前・・友達だった頃から、那央は俺の前でパニック状態になる事があった。
息を止めて、遠くの方を見て、抜け殻みたいになっちゃって・・・
俺が名前を呼ぶと我に返って、今度は過呼吸みたいになって
涙ボロボロで体も震えて・・・そんな感じ。

初めて那央の家に泊まった時もだし、たしか林間学校の時もそう。
もちろん付き合ってからも何度もあった。今でも時々ある。時々だけど。

『仲が良かった人の態度が突然変わる』そんな事をイジメで経験させられたから、
なんの問題もない時ですら、失う恐怖みたいなのに怯えてる。
俺がのんきに『手をつなげて嬉しい』みたいなことを思ってるとなりで、
那央はその手が離れることに怯えて怖がってる。

中学時代に那央をいじめてたやつらを殴り倒したい気分だけど、
そうしたところで那央の負担が減るわけじゃない。
まあ那央の負担が減るわけじゃないとしても、俺は殴り倒したいけど。

・・震災の時にはちょっと症状が酷くなって、階段から落ちて怪我もした。
救急車を呼んで、入院をして、PTSDって診断された。
あの時は、さすがの俺も本当に毎日生きた心地がしなかった・・・。
目を離したら那央が死ぬんじゃないかって、怖くてたまらない毎日だった。

・・・・いつだって那央は何も悪くない。那央は全然悪くないんだよ。
弱い子でも、ずるい子でもない。わがままでもなんでもない。
素直で本当に優しいんだよ。かわいくて、俺本当に大好き。

ヤってる時に感情がごちゃごちゃになって発作を起こすこともある。
夢で俺に捨てられたって言って、夜中にわあわあ泣くこともある。
でも俺が話をしたり抱きしめていれば、ちゃんと安心して落ち着いてくれる。
対処ができることだから、重荷になんか全然ならない。

・・・・正直いうと、那央のお母さんに打ち明けられた後、
俺自身、弱気になることが一度もなかったとは言えない。
まだ信じてもらえねえのかよって・・思ったことがないわけではない。
でも、それは俺の思考がバカだっただけ。今は猛烈に反省してる。

隣にずっといてくれたもんね、那央はいつだって、俺を信じて。
そもそもそんな風に俺が弱気になる時は、那央の問題以前に
俺自身が単に弱ってんだよ。寝ないでゲームやってたとか、
食い過ぎたとか、そういうので。ただの不摂生。
守ってく人が出来たんだから、俺ひとりだけの体じゃないのにね。

・・・・何事もない時は何も考えず、意識せずにいようと思う。
那央は今まで通りでいい。悩むなっていうのは無理だと思うし、
それこそこれ以上重荷を背負わせたくない。本当に今まで通りでいい。
那央本人ですらコントロールできないものを、どうにかしようとは俺は思わないよ。
そういう部分は那央の短所じゃない。今むきあって頑張ってる部分じゃん。
頑張ってることは褒められてほしいよ。えらいよ那央は。

那央がした悪い事は浮気ぐらいだろ。あれはマジで許せなかった。
でも許せないといつまでも忘れられないから許したけど結局思い出すと許せない
そういう点では俺も頑張ってる。まじで褒めてほしい。