『那央文字』

今日、ハルカさんが店にきた。

彼氏と旅行に行くみたいで、その途中で寄ってくれたみたいなんだけど、
なんか、那央から荷物たのまれたみたいで、保冷バッグとダンボールを
おいていってくれた。

なにかな・・って思ったら、そのダンボールに

<13日になった瞬間にあけてください。>と書いてあった。

しばらく考えて、やっと気がついたんだけど、俺、誕生日だわ。



前に電話で那央が、『誕生日前の休み、俺、テスト問題つくったりしないといけなくて、
そっちにいけないんだ・・・・ごめんね。』とかいうの。

俺も、母の日当日までは、店忙しいし、ちょっと前に、利き手怪我しちゃってさ、
車の運転控えてたから、こっちから行くわけにもいかなくって、

会えないねって話してたんだ。あれから毎日バタバタ生きてて、誕生日のこと忘れてた。

日付変わるまであけるなっていうし、そのまま自分の部屋においておいた。
保冷バッグも開けちゃだめとか書いてあって、心配だったけど、
書いてあることに従うことにした。


ハルカさんは、沼田さんの料理にほれ込んでて、静岡で土地買って
カフェ兼植物屋みたいなのやろうと思ってるみたい。
まあ、沼田さんを引き抜くとか無理だろうから、地元で人探すんだろうけど。

それきいて、秋山さんが、うちの店と沼田さんの店の垣根とっぱらって、
駐車場とかを共同にしたらどうかとか言い出したのを
俺と沼田さんで却下した。分かれてるからいいんだと思うよーって。

母の日の売り上げが、過去最高でよかった。
スタッフ増えたから、がんばらないと。人を雇うって、なんかすっごい大変な
ことなんだなあって、心底思う。
俺を雇ってくれたハルカさんには、感謝してもしつくせないや。


仕事終えて、秋山さんが沼田さんとこにいった。
俺は風呂にはいったあと、沼田さんが作ってくれた飯食って、ビール一本飲んで、
自分の部屋で仕事した。

那央からは、メールが15分おきに届いた。

<まだあけちゃだめ。

同じ文面で、きっちり15分間隔だから、自動送信とかなのかなって感じだった。

で、日付が12日から13日に変わった瞬間、今度は電話がかかってきて、

『お誕生日おめでとーー!!!!』



って、でっけー声でお祝いされたー。近所迷惑だから!!!

『ちゃんと約束守った?!』
『守った。まだあけてない。那央、テストできた?』
『まだだよー。でも楽しい。気合はいる。』
『すごいね。テスト作るとか。』
『うん。結構簡単そうで難しいんだよ。こういうのは。』
『なんとなくわかる。ねえ、あけていい?』
『だめ!あ、でも保冷バッグのだけは心配だからあけてみて?』
『・・心配ってなに?!!こえーこというなよ。』
『大丈夫!あけて!』

いわれたとおりに、保冷バッグをあけると、とけ残ったドライアイスと
かわいい箱が入ってた。
箱を取り出してあけてみると、ロールケーキがはいってる。

『ケーキだ・・・。』
『大丈夫だった?崩れてない?』
『すげえ。何これ、お前つくったの?』
『うん!!!比呂のこと思って作ったんだよ!だから成功した。』
『わー・・ありがとー・・・。』

感動で、ちょっと変な声になってしまった俺を、電話の向こうで笑う那央。

残りは電話きってから見てね☆っていわれて、そのあと5分くらいしゃべって
電話を切った。

ダンボールをあけてみると、手紙と写真となんか派手なラッピングの
プレゼントが入ってて、その下にもなにかあるなっておもったら、
アームウォーマー?みたいなのがはいってる。
手編みかなってかんじで、でもかたっぽだけだったから、
那央、間違えて入れちゃったのかなって思ったんだけど、
なんかメモがつけてあって、<怪我した手、ひやさないでね。>
って書いてあった。


うれしくて、すぐに腕にはめて、手紙を読む。
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