『俺、今日最終で帰るから。』って比呂が言うんだ。
『え？！なんで？！』
『だって、那央、明日仕事じゃん。』
『やだ。泊まってって。明日も泊まって！』
『また今度、那央が俺んとこ泊まりにくればいいじゃん。』
『・・えー・・最終って何時？・・。』
『22時すぎくらい？』
『えー！！！すぐじゃん！！！』
俺、ずっと、忙しいって感じの話してきちゃってたから・・。
気を使わせちゃってるのかもしれない。バカだバカだバカだ！！
『・・でも明日、比呂休みだよね。』
『・・・。』
『三連休って言ってたもん。あさっても休みなはず！』
俺は、ビールやツマミやアイスを、カゴいっぱいに入れた。
で、『ここは俺が出す。比呂の誕生日だから！』といって、レジに向かった。
そんな俺を見て、比呂、笑ってるんだよ！！わらうな！もう、俺には強行あるのみなんだよ！！！
絶対帰らせない！！！
助手席で、ツンっとそっぽ向いて、ほっぺ膨らませ続けた。
『なに怒ってんのー？』って、笑いながら茶化す比呂。うっせーし。
『帰らないって言うまで怒り続ける。』・・それだけ伝えて、またほっぺ膨らませた。
そしたら比呂、爆笑すんだよ！！失礼だよ！こんなに一生懸命な人に対して！
しばらく笑ってた比呂が、呼吸を整えながら、話しだした。
『22時頃に帰れば、そのあと明日の授業の準備できるかなーって思ったの。
朝、俺がいたら、支度すんのにジャマかなって思ったの。
お前と一緒に朝出たら、変に思われるかなって思ったの。
でも、どーしても、顔見たくてー。だからきちゃったんだけど。』
俺がほっぺをさらに膨らませて、比呂をギロっと睨んだ。
そしたら、運転しながら俺に目線を一瞬合わせてくれたその顔がかっこよくって、
ほわっとなった。
でもどうしても、泊まってほしい。
ヤってくれとはいわないから、あの腕の中で眠らせてほしい。
心の底から安心をして、熟睡をしたいんだ。
うちの駐車場に着いた。俺の隣、でかい車が停まってると、車をとめづらいんだよね・・。
でも、比呂、ぎゅいーんって、一発でバック駐車するから、膨らませてたほっぺも完全にしぼんだ。
俺の目は、ついにハートマークに進化した。
だからといって、強行策を途中でやめるわけにいかない。
部屋に上がってすぐに、『お風呂はいって！』といった。
着替えを持ってきてないって言うから、俺の買い置きの下着とＴシャツとスウェットを出した。
比呂がシャワーして、体洗って、湯船に使った音を確認した俺は、
ソッコー自分も脱いで、洗濯機まわす。
これでもう、比呂は、家に帰れない！
裸で風呂に入っていったら、すっごいびっくりした顔された！！！！
比呂、俺が頭を洗い出したら、湯船から出ようとするから、ギロっと睨んで動きを封じた。
その時、目を開けたから、シャンプーがはいっちゃって、悶絶する俺。
まあ、そのおかげで、比呂はまた、湯船にちゃんと浸かってくれた。
一通り洗って、比呂の方に体を向けて俺も湯船に浸かる。
狭いおかげで密着だ。ぴとって、比呂に張り付いたら、比呂、色々諦めてくれたみたいで、
俺を抱き寄せて、キスしてくれた。
『・・・痛そう・・・。』
舌を絡めながら、ゆっくりゆっくり口づけをして、
うっとりしながら比呂に寄り添ったら、包帯を取った比呂の左腕。
想像してたよりも、ドス黒くなった打撲あと。
よくみたら、縫ったようなあともある。
『ねえ、これ・・・切ったの？』
『ああ。それは枝の切れ端とかがちょっと刺さって、抜いて全部とるのに切った。』
『・・・・』
痛かっただろうなあ。俺のいないところで、痛い思いをしないで・・。
俺はそっと、傷の近くをさする。
そしたら比呂が、俺の首筋にくちびるをよせて、
一回だけ、手で、した。