新幹線を待ってる人が結構いたから焦ったけど、比呂が指定席でとってくれてたから、
余裕で座れた。グリーン車は、人少ない。

最悪、俺の部屋に一泊するしかないかも・・って思ってたらしい比呂は、
新横浜駅の近くの店で、一泊に必要なものを買ってきたんだって。
だから紙袋ぶら下げてたのか。無駄な買い物させちゃったかな・・。
心がチクっときたけれど、相変わらず、地方と地元の静岡茶の違いについて
話てる比呂みてたら、ま、いっかって気持ちになって、つられ笑いで俺も笑顔になる。

新幹線が走り出した。

そしたら、比呂が、紙袋から、折を一つ俺に渡す。

・・・それは、今日いく予定だったすし屋の折詰め。
『腹減ったー。たべよー。』
ちゃんと二人分。・・・比呂も夕飯、ガマンしてくれてたんだ・・・。
ずっしり重い。おなか鳴ったし、涙まで出た。

包装あけたら、超豪華で。

『おとといのうちに、大体の時間で予約してたんだけどさー、
店で食うってのやめて、折にしてほしいって頼んだんだよ。
デパートの仕事のときに、時々会う人だから顔見知りでさ。
いいよーって言ってくれて。待ってる間に、茶碗蒸し食わせてもらったんだけど、
超うまいの。今度いこうなー。』
『うん。』

・・・生徒は怪我するし、保護者同士が揉めるし、予定は狂うし、
・・比呂が連れて行ってくれようとしてたおすし屋さんもナシになっちゃって・・
しまいには腹も減ってたから・・・なんかもうほんとに俺、追い詰められてたみたいだ。

何の気なく買った静岡茶。・・・そっか。俺、今日は朝からずっと『夕飯は寿司!』って
イメージで生きてきたから、自然と茶を選択してたんだ・・・。
普段は、自販で買って飲むとかないもんなあ・・・。静岡茶。

おなかがグウグウなるから、鯛の昆布ジメをおそるおそる食べた。
・・・・そしたらもう、耳の付け根が痛くなるほどうまくて・・
ちゃんとかまなきゃもったいないって、咀嚼しまくって、飲み込んだら、
後味までめっちゃおいしくってさ・・比呂を見たら、爆笑してた。

『やっぱ俺、魚には負けるわー。』だって。

************************************************************

いつもなら、欲望のままに、ガツガツ食べて後悔するんだけど、
今日はちゃんと、ゆっくり味わって食べることができた。幸せだ・・・。
すごいなあ・・。食べ物で、こんなに人を幸せにできるなんて。

空っぽになった折を、もとのとおりに包んで、ひざの上に置く。
あと5分くらいで新横浜だなあ・・・。

『比呂。』
『ん?』
『・・新幹線、指定で買っててさ、もし俺これなかったら、ヤバかったね。』
『・・・・?』

『さっきほら、「最悪、静岡一泊すれば・・」とかいってたじゃん。』
『ああ。』
『だから、なんでそんな風に考えてたのに、チケット指定で買ったのかなって。』
『ああでもほら。お前、学校出る前に、メールくれたじゃん。俺、あんときもう
静岡向かってたからさ。思ったより早く終わったんだなーって思って。
向こう出る前は、もっと会議とかが遅くまでかかると思ってたから、
最悪、最終に間に合わないか持もって思ったんだけど、
あの時間に終わったって事は、すぐに駅に向かってくるだろうなーってさ。

ほら、せっかく駅に着いてもさ、チケット買うのに時間かかって、間に合わないとか
あれじゃん?だから、とりあえず。まあ、とりあえずってやつだよ。』

とりあえずで、指定席二人分買っちゃうとか・・。
でも、・・・・でもうれしい。うれしいなあ。

・・・最近、仕事での悩みが多くて、ほとんど毎日、イラついてた。
生徒の前でイラつくわけにはいかないから、いつも家で、サボテンに愚痴る。

今日みたいに、仕事で忙しいとか、予定外のことがおこって、ペース乱されたりするとさ、
比呂と会えないことが、それほど苦じゃなくなるというかさ・・
言葉は悪いかもしれないけど、『それどころじゃない。』状態になるじゃん。心が。

だけど、そういうとこ、駄目だよね。俺の一番、駄目なとこ。
結局まだまだ俺なんか、自分中心にしか、世界回せてない。

比呂だって、高校出た後すぐに知らない土地で、仕事を任されて、
目が回るような毎日だったと思うんだ。
でも、俺は、あまりにも会えない日が続くと、時々比呂を責めてしまってた。
約束の時間をずらしてほしいって言われるだけで、頬膨らませてすねたりして。

でも比呂は、極力俺と会ってくれたし、時間をやりくりして、精一杯俺を支えてくれてた。
横浜と京都という距離を、埋めてくれてたのは、比呂の優しさと行動力だった。

なのに俺は何?静岡と横浜なんて、超近いのに、なんでもっと積極的に
自分から会いに行こうとしなかったんだろう。
比呂に会えないから、安らげなくて、比呂に会えないから、溜め込む一方なんだって、
ちゃんと自覚してんのに、・・・高校の頃、両思いになるために
努力して頑張ってくれた俺に対して、もうしわけなくなるわ!

『比呂。』
『えっ?!なに怒ってんの?!』
『怒ってない。相談がある。』
『いいけど、もう新横浜つくから。じゃあ、車の中で聞くし。』
『わかった。』
『・・・なあ。』
『なに?!』
『すしだけで足りた?帰りなんかかって帰るか?』
『おなかは、いっぱいだけど、まだ何か食べたい。酒も飲む。』
『わかった。』

俺の眉間のしわが、いつもより一本多く出てたらしく、
『怒るなよ!13日の金曜日だからって!』とかいうから、ぐおーって
比呂に襲い掛かったら、ちょうど新横浜について、ホームの人に見られてなかったか心配。

帰りの車で、俺の日ごろの悩みを全部比呂に話したら、
比呂は黙って聞いてくれたあと、信号待ちで、俺を見て、
『先生って大変だなあ・・・。』って言ってくれた。

それだけで・・なんかそれだけで、救われたって言うことは、
俺がイライラしてたのって・・比呂に、自分ががんばっている姿を
見てもらえないことに対するイライラだったのかもしれない。

途中で酒と、お菓子と食い物買って、あと10分くらい走ればパンタグラフってときに、
比呂がコンビニに寄って、わざわざアイスを買ってくれた。

『なんか、なつかしいよな。高校の頃、よくコンビニでお前用のアイス買った。』

そんなこといいながら、シートベルトガチャンって締める比呂みてたら、
スキすぎてしにそうになったから、ほっぺにキスして、ぎゃあぎゃあ騒いだよ。



結局俺って、ずっとこんななのかなあ〜。


まあいいか!
***************
ハッピーバースデー那央ちゃん。一日送れてごめんし。(2013.9.14〈SAT〉)