紺野の出張に合わせて、幸村くんが休みを取って横浜に来た。
紺野は月に1~2回、こっちの店を手伝いに来るけど、幸村君は久しぶり。

幸村君は、ちょっと色々あってね。だから紺野も静岡に置いてくるのは
不安だったんだね。特に今回は泊まりの仕事だし。

ちなみに現在、カフェと植物屋の両方を、秋山と俺で経営している。
とはいっても駐車場をつなげただけで、店自体は昔のままだ。
住まいはカフェ2階の住居スペース。外で借りようと思ったんだけど
お互い遅刻できない立場なので、店に住むのが最善だという結論に至った。

植物屋の方の2階には、もともと紺野が暮らしていた部屋があって
紺野は泊りの仕事の時には、そこに寝泊まりをしている。

木曜の夜に横浜に来て、金曜土曜が仕事。
幸村君は紺野が仕事をしている間は、ずっと部屋でパズルをやっていた。

夕飯はうちの店で4人で食べた。夕飯と言っても21時過ぎ。
幸村君に『早めの時間に届けようか?』と声をかけたんだけど
『比呂と一緒がいいです。』というので時間まで待ってもらった。

幸村君は昔と変わらない。
ずっと紺野のそばにいて、いつも紺野のどこかを触っている。
肘だったり、背中だったり、服の袖や裾だったり。

変わらない二人を見て、なんとなくだけど安心をした。
ずっと仲がいい。何か問題が起こっても、ちゃんと乗り越えて
より強く手を握り合える関係。『別れ』という選択肢のない関係。
ずっと続いていってほしいし、もっともっと幸せになってもらいたい。

飯食い終わって解散して、日付が変わった頃。駐車場のチェーンを
かけ忘れてたことに気が付いて、秋山と二人で外に出た。
すると、道路の方からくすくすと笑う声が聞こえる。
紺野と幸村君だった。幸村君は手にアイスを持っている。

『どうしたー、買い物?』
『・・はい。ちょっとコンビニ―』
幸村君は紺野にピッタリ寄り添って、黙ったままニコニコしている。

すると秋山が店の庭木について紺野と話をし始めた。
なにもこんな夜中に話すような事じゃないのに。当然幸村君は興味なさそう。

紺野に『食べていい?』と声をかけてから、アイスに齧りついた。
このアイスはコンビニのじゃないな?どこで買ってきたんだろう。
アイスを齧りながら紺野の背中に顔を擦り付けたり噛みついたり。
そして紺野の右手をぎゅっと握って自分の頭を撫でさせる。
よくみたらデコピタ貼ってるなー。体調悪いのかな?

『幸村君、熱?』
俺が声をかけたら、幸村君がニコっと笑って
『少し暑いねって言ったら、比呂が買って貼ってくれました。似合うからって』
といった。そして『あっ』というと持っていた袋を漁る。

『チョコ食べませんか?そこのコンビニで新作出てて・・。』
そう言って渡してきたのは幸村君が食べてたアイス・・と思っていたもの。

アイスじゃなくてチョコだったのか。道理で全然溶けないわけだー・・。
俺の隣でニコニコしてる幸村君。

『紺野と一緒に来れてよかったね。』って俺が言ったら、
幸村くんが目を潤ませながら、涙声で『はい』って言った。