かわいそう。

比呂が練習試合で流血・・・・。

今日、ピカ西高校で練習試合があったんだけど、そのときに、
相手のファウルで比呂が大怪我して病院に行った。

比呂のドリブルを何とか停めようとして、相手が比呂を突き飛ばしたんだ。
スピードにのってた比呂は、ラインの外側に転んで受身とろうとしたんだけど
その先に相手の女子マネが座っていたから
その子を避けてジャンプして、顔から扉の鉄柵に激突してしまった。

すごい音がして、比呂が、だらんと全身の力が抜けた感じになり床にバターンと倒れた。
女子マネがあわてて、比呂のとこに駆け寄る。
比呂のおでこから血が出ていて、意識がなくてみんな息を呑んだ。

そんななか、一人で佐伯が、『比呂っ・・・・比呂っ・・・。』と名前を叫び
そしたら比呂が目を開けて『・・・いってえ〜・・・。』っていって起き上がろうとした。

そしたら血がダラダラダラ〜〜〜〜〜と勢いよく流れ出てきて、
俺なんか言葉なんて出ない。女子マネがタオルで傷口を抑えた。

西高の監督さんが、体育館に備え付けられてたらしい救急箱を持ってかけてくる。
ガーゼとかで、応急処置した比呂は、そのまま近所の病院に連れて行かれてしまった。

俺・・・。比呂がその女の事をかばってさ・・・自分の身を犠牲にしたことが釈然としなかった。
もちろん比呂のことが心配だし・・・そんなこと言うのおかしいと思うけど・・・

でもその女子マネ、なんか比呂のことをさ・・・泣きながら心配しやがってさ
『紺野さん・・紺野さん・・。』っていってんの。1年女子か?くっそ。気安く紺野を呼ぶんじゃねえよ。

30分位したら、比呂が上機嫌で帰ってきた。
俺、嬉しくて駆け寄ろうとしたら、その女子マネが比呂の腕を掴んで
『すみませんでした・・。かばってくださってありがとうございます。』とかいうじゃん・・。


なんだこのブス女!(怒)




比呂は、『あ、全然大丈夫なんで。』っていって、彼女の背中をぽんポンッと叩いた。
カチンときたぞ、何でそんな女に、優しい態度とるんだよお前は・・・。
そのあと、俺のとこに比呂が来たけど、そっぽ向いてやった。
ばーか。お前みたいな八方美人なんか、どっかいっちまえ!

比呂が戻ってきてから、練習試合は再開した。
比呂があんな目にあったのに、何で再開するの?とか思ったんだけど、
麦に言わせると、流血の有無はともかく、バスケではわりとああいう大惨事があるんだって。

さすがに比呂は試合には出ないで、体育館の隅で寝ていた。
例の女子マネが(何故か)比呂に付き添ってたんだけど、
それをみてノガミ先輩が
『ピンク村なおー。おまえ、紺野の様子みててー。』という。
そんでその女子マネにむかって『西のマネさん、そいつにはうちの部のやつ、つかせますから、
もう大丈夫ですよー。すみませんねー。』っていった。


ノガミ先輩大スキだ!!!!!




女子マネが、『でも・・。』といって、比呂をみる。比呂は、その子に笑いかけて、『ありがとう。』という。
その笑顔に、俺、またご立腹。でも俺が比呂の横についた途端、比呂が思い切り涙目になった。

『ど・・どしたの?』俺は思わずパニくる。
比呂が俺のジャージの裾をつかんで、試合中のみんなから見えないように
顔の向きを変えるとこういった。

『ちょ・・・超いてえ・・・・。』

どうやら・・やせがまんで、平気なふりをしてたみたい。
よくみたら、手とかもあざになってて、すごい痛そう・・・。かわいそう・・・・。


『痛い?』『・・・うん。』
『大丈夫?』『・・・・。』
『先生に言ってもう一回病院行く?』『・・やだ・・。だって手当てしてる時、すげえ痛かった・・・。』
『・・そう・・。』『那央、ここにいてよ。』
『・・・え?』『他の奴ら来たら教えて・・。』
『・・・・。』『・・・いってー・・・・。』
『・・・・比呂・・・。』『・・・泣きたい・・・』

俺は比呂の手のアザを、そっとさすった。


『他の奴ら来たら教えて。』

それって、他のやつらの前では、元気なふりをしたいからってこと?
俺だけ特別なの?俺の前でだけ、そんなふうにおおっぴらに弱いとこをみせてくれんの?


ごめんね比呂。
お前怪我してかわいそうだけど、
なんかおれ、幸せ気分になっちゃった。


2007/06/02(土) 23:15:37
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