ありがとう

17歳になりましたー。なんか、めちゃくちゃみんなに、祝ってもらえた。
昼飯なんか、パンと飲み物が、机からあふれ出たもんね。みんなのおごりで!キャ☆

すっげうれしくて、俺ずっと笑ってた。
いつもは俺の前を歩く比呂が、今日は俺より少し後ろ歩いて
みんなに祝われてる俺を、すげえ優しい顔で見守ってくれてた。

放課後、部活がなかったんだけど、そしたら比呂が『一緒に帰ろう』って言うんだ。
もちろん全力で頷く。2人で自転車押して歩いた。俺のチャリのカゴ、パンとか飲み物とかでいっぱい。

『すげえね。』『うん。でもうれしい。』
『那央も17歳かー。』『うん。』
『・・・。』『比呂においついたね。』
『おいつかれたね。』『はい!』

なんとなく、照れ笑い。ずっと一緒にいたいから、なるべく足どりを遅くした。
途中。比呂が不意に立ち止まる。『少し俺んちにこない?』っていう。

『いいの?』『うん。10分でいいから。』
『?』『パンとか入れる袋もやるよ。』
『やった!』『ははっ。』

比呂に促され、そのまま紺野家へ。

おばちゃんが出産をひかえて里帰りしているから、この時間帯、誰も家にいなかった。
『あがって。』この言葉聞くたび、俺はあの日を思い出す。・・比呂に告白したあの日。

あの日の俺・・・。勇気出してくれてほんとありがとうね。

部屋に入ると、比呂が俺を撫でてくれた。そんで片隅においてあった袋を俺に差し出す。

『?』
『おめでとう。よかったらこれ。』
『・・え?』

手渡されて袋を開けたら、綺麗なボーダーのマフラーが出てきた。
マフラーの下には、Tシャツ。で、その下には、スニーカーまで入ってる。

・・こんなにいっぱい?

比呂の暇時間の殆んどを、俺はいつも奪い取っていて
・・こんなの買いにいく時間なんかなかったんだろうに・・・。
うれしくって・・泣きたくなった。

俺、自分のカバンをおろして、中からピルケースを取り出す。
そこには前に比呂からもらったダイヤのピアスを入れてあって・・
それを比呂に手渡して『・・俺の耳に、穴開けて?』と頼んだ。

ずっとタイミング逃してて・・。ピアスしたいのに、なんかできなくて。
俺ら途中で別れたこともあったし・・だからなおさら。

でも、俺、今日、どうしてもピアスしたかった。
比呂の気持ちが俺の耳で、きらきら光るトコを見てみたかったから。
体に穴を開けるなら、絶対比呂にあけて欲しかった。

比呂は、少しだけ考えた後、黙ってコクリと頷いた。氷と、消毒と、真新しい針。
比呂のやり方が上手だったみたいで、ピアスをつけたあとも、そんなに痛みは走らなかった。

『すげえ似合う。』

照れ笑いの比呂。・・・似合うに決まってるよ。お前が選んでくれたものだもん。
俺は比呂にもらったマフラーを首に巻いてそれで比呂に抱きついた。

ベッドの上。幸せ。
エッチするわけでもなく。ただただ俺は、比呂にぎゅーって
心ごと抱きしめられて、安心して、すごく幸せだった。

この頃すこし、口数が減った比呂はなんかちょっぴり大人びてきて
俺一人ガキのままなんじゃないかと、かなり不安になったりしたけど
ガキみたいな俺を恋人にもっているから、比呂は大人っぽくなったんだろうし
そんな比呂がいるから俺は、いつまでもガキみたいにゴネられるんだなーとわかった。

俺は比呂に抱きしめられながら、こないだ比呂のアイポッドで聴いた
ピロウズの『天使みたいにキミは立ってた』を思い出した。
大好きな比呂の腕の中で、恋の歌を思い出してこんなに共感できるなんて。

そんな風に、恋愛漬けになってる俺の頭にあご乗せて比呂が、
次に会う約束をしてくれる。メシだとか、映画だとか、いっぱいいっぱい。
俺の未来は比呂と過ごす用事で、どんどん埋っていく。

生まれてこれたことがうれしい。
生まれてこれるって・・・すごいことだ。

だから人は・・生まれたその日を祝うのか・・。



俺の誕生日を一番祝いたいのって・・俺だあ・・・。

2007/09/13(木) 23:36:22
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