2006/8/30 (Wed.) 17:11:28
朝。


朝練を、怪我した比呂が欠席。顔だけ出して手を振って、
先輩に挨拶して出て行っちゃったから、慌てて抜け出して比呂を追う。

俺と喧嘩した時よりも、顔の傷は酷くはないが
右腕のほうがパンパンに腫れてて、そのせいで少し熱がでてるらしい。

『どうよ、腕は。』と声をかけると、比呂が振り返り『よお。』という。
右手を俺にぶらぶらとして見せて『超余裕』と言うアイツの強がりに俺の胸が痛んだ。

『他は怪我ねえの?』
『うん。たいした怪我は別に。』
『喧嘩、おじちゃんに怒られなかった?』
『うん。喧嘩できるのは生きてる証拠だからって言われた。』
『あはは。心広い。』
『んふふ。でも、迷惑かけたのには変わんねーけど。』

笑う比呂、きっと寝てないんだろう。すげえだるそうだし、すぐ目を閉じて、首を回している。

『大丈夫なのか?そんなんで。』
『今日、製図あるから、どうしても出たいんだよ。』
『熱はいくつぐらいあんの?』
『別に。いいから早く部活もどれよ。』

最近比呂は、聞かれたくないことをふられると、てきとー言って、逃げようとする。
しかもなんか、教室とは違う方に行こうとするから、俺は比呂をひきとめて聞いた。

『なあ、どこいくの?お前。』

すると比呂は俺の方を向いて、『昨日ボコられたとこに行くんだよ』といった。

なんで?もしかして、また呼び出されたのか?

昨日比呂を助けられなかった罪悪感でいっぱいの俺は、一睡も出来やしなくって
だからもう頭が冷静じゃないから、比呂の顔に平手打ちをしてしまった。

『いってえなあ!なにすんだよ!』比呂が怒る。
『お前また、空手部のあいつらと、喧嘩する気だろ。』
『は?なんでそうなんだよ。しねえよ。』
『嘘付け。ふざけんな。なんで俺に相談しねえんだよ。』

そしたら比呂は俺の腹を、蹴飛ばして俺に怒鳴り散らした。

『なんで俺が嘘つかなきゃなんねーんだよっ。憶測で突っ走ってんじゃねーよっ。』

・・・比呂は憶測で物事言われるのが大嫌いだ。
わかってんだけど・・わかってんだけど・・だけど・・・・。

俺は気が抜けて、比呂の肩に顔をのせぎゅっと抱きしめた。
比呂が一瞬痛そうな表情をする。・・ほらみろ・・。
服着たら見えないようなとこを、狙われたんだな。やせ我慢しやがって。

『どけよー。』といって、本気で嫌がる比呂だったが
俺が半泣きなのに気がついて、そのあとは黙って俺に抱きしめさせてくれた。

『お前見てるとあぶなっかしいんだよ。だから一人きりでうろうろすんな。俺のそばにいろよ。』

俺は言う。だってそうだ。こいつはバカだから。すぐカっときて、喧嘩して、俺の気持ちに気づけやしないし。

比呂は黙って聞いてたけど、いきなり俺に金ケリしてきて
『なにあんた。オレの親?』といって、すたすたと歩いていってしまったんだ。

俺は、比呂のほうにむかって『どこいくんだよ!バカ比呂!』といった。
するとあいつがギロっとにらんで『アイポッド落としたみてえから、探しに行くんだよっ!』という。
『エルレの新曲、CD幸村に貸しちゃったから、あれないと聴けねえんだよっ。
そんだけなのに、なんでおめーに過保護られなきゃいけねえんだ。ばーか。』

比呂は小走りに校舎に消えていった。・・・・またやっちゃったや。
なんで俺、あいつのことになると、とたんに思い込みの世界に落ちてしまうんだろう。

朝練にもどって、試合に合流する。すると幸村が寄ってきて『比呂と何してたの?』ってきいてきた。
こいつは何かと勘ぐるから、事実をそのまま話したら
『比呂は駄目だよね。人の優しさに感謝をもっとしないとさ。』と、珍しく紺野バッシングしていた。

5分休憩で、俺は体育館の壁にもたれて腰掛けた。
そうなんだよ。あいつはさ、俺にもっと感謝したほうがいい。
俺の気持ちをもてあそびやがって。勝手にもてあそばれてるの俺だけど。

そんなこと考えてたら、体育館の床近くの小窓が、そーっとあいて、ケツをつつかれた。
ビビッてそっちに目線をうつすと、窓から比呂のアイポッドがにょき・・とでてきた。
俺は窓をのぞきこむ。比呂が俺のことをじっとみて『あった。』といって、アイポッドをしまい
『さっきはごめん。』といって、窓をそっと閉めたのだった。

・・・ったく。

そういうことをするからさ、俺がいつまでもお前を追いかけちゃうんだろ?
駄目な比呂なら駄目だけでいいじゃん。どーしてそういう、かわいいことするんだよ。
比呂の事がかわいすぎて、むしろむかついたから浅井にボールをぶつけまくった。
すると浅井は、そんな俺を見て、げらげら笑って相手してくれた。

・・・俺ってどうしようもねえなあ・・・。
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