2007/5/28 (Mon.) 23:04:07

昨夜。23時。いつものように比呂から電話が入る。

『バイト終わったー。』『おっ疲れ〜』
付き合い始めて少したった日から、比呂はこの帰るコールを欠かさない。

別に俺のとこに帰ってくるわけじゃないけど、この一本の電話が俺の一日の締めくくりなのね。
大好きな比呂の声を聞いて、ねむるっつーのが俺の日々なわけ。

で、昨日もそんな感じで電話がかかってきたんだけど、
なんかいつもと違って、店からじゃないなってわかったのね。
っつーのもBGMがない。そんでガサガサ音がしない。
そのガサガサってのはいつも比呂が、帰り支度しながら俺に、電話かけてくるんで、その際の音。

やけに静かだなーと思って、『帰り道?』ってきいたら、『うん、そう。』って比呂が言う
『うん、そう。』って、・・・・なんかかわいくね?
俺が微笑ましさにのけぞってたら、外を車がブーンって通った。
そしたら比呂の携帯からも同じタイミングで車の通過音が・・・。

ベッドに寝転んでた俺は反射的に飛び起きると、カーテンを勢いよく開けた。
そしたら家の前の道に、ぎょっとした顔で比呂が立っていた。

慌てて階段を静かに下りていく。若干説明に矛盾があるようだが気にしない。
寝てる親とかを起こさないように、泥棒のように、階段を下りた。
玄関をそっと開けると、比呂がいた。しかも何?この人・・・花束持ってる。
比呂は俺に無言で、その花束を差し出したんだ。

『どうぞ。』
『は?』
『あげる。』
『え?なに?』
『花・・・。』
『みりゃわかりますよ。』
『・・・あげる(二度目)』
『・・ふふっ。』

俺は比呂から受け取った花束をみて、ちょっと感動で喋れない。
比呂も照れくさいのかな・・。地面とか空ばっか見ている。
気持ちを切り替えて、涙を目の奥に押し戻す。
会話したい。じゃないと比呂、照れて一生俺に目を合わせてくれなそうだ〜。

『うれしー。何で何で?』花束に顔を埋めながら聞く。
『や・・まあいーんじゃねえの。理由なんか。』・・・その理由が聞きたいんだけどなあ。

『これ、比呂が作ったの?』
『・・・・うん・・。』
『俺のために?』
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん。』
『ありがとう。』
『・・・・・・・・・・ん。』
照れ笑い。かわいい。

比呂がすごくかわいい。


『じゃあ・・帰る。』そういって比呂が自転車にまたがる。
俺は、花束抱えて、比呂の腕を掴む。じっとみつめたらキスしてくれた。
それで俺の頭を左手で引き寄せる。

『よかったね・・那央。潤也が・・・。』
『うん。』
『ほんと・・よかったよなー・・。』
『・・・・・うん。』
『お前、もう寝るの?』
『まだ寝ないよ。』
『・・・じゃあ、帰ったら電話する。』
『・・待ってるね。』
『うん・・・わかった。じゃ。』

比呂の左手が俺から離れる。
でもすぐにその手で、俺の頭を撫でた。

『・・・。』
『・・・。』

言葉はない。でも比呂が俺を見る目が、とても優しかった。

うつむくことで、比呂が視線を切る。俺は比呂から目が離せない。

比呂の左手が俺の頬を撫でた。
またキスをする。抱き寄せる。頬を摺り寄せる。
大好きな比呂の声が、耳元で俺の名を囁く。


ああもう何度目なんだろう。
毎日俺は同じ男に心射抜かれて恋に堕ちていく。
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