2008/8/18(Mon)18:43:02

昼前に比呂のバイト先を覗いたら、サボテンの手入れをしている比呂を見かけた。
あー・・また何か無理してんな〜・・って思ったから、携帯にメールを入れてみた。

<今日から幸村合宿だろ?
<たまには遊ぼうぜ!

すぐに返事が来た。


<めーちゃんが泊まりに来る。
<お前も来いよ。

今朝、泣く幸村から電話が来た。事情を聞いて俺は胸が苦しくなる。
『比呂に疑われるかもしれない。どうしよう・・。』って言われたから
俺はアイツにこういった。

『そんな男じゃないよ。比呂は。お前は勉強に集中しな。』

バイト上がりの時間見計らって、比呂の店に顔を出した。
そしたら比呂が胃のあたりを擦りながら奥からでてくる。
『あ、お前、見た?俺・・さっきメール・・。』
そういうから、俺は黙って頷いてから、
『行くよ。でもその前に、ちょっと話ししねえ?』
と比呂に声をかけた。そしたら比呂は眉をひそめる。

『ユッキーの話だったら聞きたくないけど。』

********

川原のとこの自販でジュースかって二人で話をした。

『比呂、川好きだろ?水遊びしてえな〜。』
『ああ・・うん。』
『・・・喧嘩したのか?』
『・・ううん。してない。』
『じゃ、なんかあったのか?』
『・・・だから、ユッキーの話は今日はいいって。』
『・・・・。』
『それより他の話しようよ。』
『・・・じゃあ・・。』
『・・・。』

俺は比呂の胃のあたりをはたく。

『薬、まだ飲んでんの?』
『ああ・・たまにね。痛いときだけ。』
『今、痛いんじゃねえの?』
『いたかねえよ。』
『大丈夫かよ。』
『うん。』
『・・・・。』

・・・ばーか比呂。

『ねえ・・・。』
『ん?』
『お前・・ユッキーになんか言われたの?』
『・・いや?別に?』
『・・・・・。』
『・・・・・・。』
『・・・ごめんな・・?なんか。』
『なにがだよ。』

ユッキーが俺に何かを打ち明けたことを比呂は察してるんだろう。
疲れたようなため息を一つつくと、比呂は俺に話し始めた。

『お前に・・迷惑かけてばっかだな。』
『ばーか。なんでだよ。』
『・・・・・・・・。』
『いいんだよ。別にお前も幸村も俺の友達だし、友達の相談のるのはあたりまえだろ?
それに、変な相談とかは受けてねえし。』
『・・・・うん・・。』

比呂はひざを抱え込んでボンヤリ川を見る。俺は比呂の肩を抱きしめかけてやめる。

『だいたい比呂は頑張りすぎなんだよ。お前だけが頑張る必要ねえんだよ?』
『・・・。』
『俺らをもっと頼れよ。幸村の事だって、もっと相談してきていいんだよ?』
『・・・・・。』
『俺らはさ、お前んとこの関係を知ってるし、隠す必要とか全然ねえし。』
『・・・。』
『百戦錬磨の俺様が恋愛相談にものるぜ?』

比呂は俺のことをぼんやりとみた。そしてふふっと笑って口を開く。

『あのさー・・。』
『んー?』
『お前、彼女つくらねーの?』
『ああ・・・うん。まあな。今はいらない。』
『好きな子は?いねえの?一人も。』
『いない。今は友達とつるんでるのが楽しいから。』
『・・・・・。』
『彼女なんか、今はいらね〜な〜・・・。』
『・・・・・。』
『・・・なんだよ。それがどーした?』
『や・・、俺・・なんかいつもお前に寄っかかりすぎてるからさ・・・。』
『・・?』
『お前、本当は女とかいるのに無理して俺に付き合ってくれてんのかな・・とかさ・・。』

胸がズキっとする。

『んなわけねーだろっ!』
『うん・・。そうなんだろうけどー・・ちょっと・・・。』
『・・・・・・。』
『ちょっと思っただけだよ・・・・。』
『・・・・。』
『・・・・・。』
『・・・・比呂・・』
『・・・なに?』

俺はジュースをぐびっと飲む。心をとりあえずグっと押さえつける。
いっちゃいけない自分の想いを、心の一番奥に蹴り飛ばして
比呂の顔を見た。そして話す。

『俺が調子悪いと、いつも一番にお前が気づいてくれるだろ?
何があってもいつでも、お前はそうだよ。
お互い様だよ、そういうのは。だって俺ら親友じゃん。』
『・・・・・・。』
『だから俺に遠慮とかすんなよ。最近おまえ、前みたいに技とかかけてこなくなったし・・
そういうの逆にさみしいぜ?前みたいにもっとバカやろうよ。な。』

ボケた表情で俺の話を聞いてた比呂が、ふふっとわらった。
視線を川のほうに戻すと、何かを考えこんでいる。俺は黙って比呂の言葉を待つ。
すると比呂がケホっと小さく咳をして、そんで俺の方を見てまた笑った。

『・・俺が横浜行ったら・・おまえ泊まりにこいよ。バンプのライブのときとかさ・・
ホテル代わりに使えばいいしさ。
卒業しても、めーとお前と三人で色々遊びたいなって思うよ。
横浜の店の周りって、超森林なんだ。基地とか三人で作って遊ぼうぜ。』

小さくてかすれた声。比呂が心の中で感じたことを
言葉にして俺に伝えてくる。


ああ。幸せだ。
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