ごはん。

俺と加瀬とおぎやんとヒノエの合格祝いをみんながしてくれた。
小沢と麦と坂口と斉藤と西やんと楠本と比呂がきてくれてね。
刺身とか舟盛なんだよ。比呂と麦の知り合いの和食屋さんみたくてさ。
ツマミにつかう高級梅干とかも裏メニューで出してくれてさ。みんなで死ぬほど食ったし・・

死ぬほど喋った。死ぬほど笑った。

今日は岸先生が出張でね・・学校にいなかったんだ。
だからさ、比呂の携帯借りてさ、みんなで報告したんだ。
そしたらね『先生たちから連絡もらったよ。よかったね。おめでとう。』ってさ。

うれしかったー・・俺、岸先生がいなかったら・・もしかしたら挫折してたかもしれないもん。
そんな話をしてたらね、加瀬が梅干食いながら話し出したんだ。

『俺・・受験の前の日にさ・・すげえ不安になっちゃって・・・
岸先生に電話したんだ・・。前に電話番号おしえてもらってたからさ。
失敗したらどうしようって・・半泣きで相談しちゃったんだけど・・岸先生がさ・・色々はなしてくれたの。』
『なんて? 』
『あの人・・、自分の志望校、受験できなかったんだって。』
『え?』
『風邪だかでさ、本命大学を受験できなかったんだって。で、他の大学も受けてたから、
合格したとこに入ったんだけど、だけどやっぱり本命大学、いってみたかったんだよねーっていうんだよ。』
『・・・・・』

そんなことがあったんだ・・。俺は黙って聞く。加瀬は感慨深そうに話を続けた。

『一年待って、ちゃんと受験して、で、頑張って合格して、あの大学にいってもよかったなって、
少し思ってるって。だけど、あの頃の自分にとっては、現役合格するって事が大事な気がして
一年間の寄り道が、とても大きなことのように思えてその選択を考え付く余裕すらなかったって。』
『・・・・。』
『でも今思うと、一年の寄り道なんかたいしたことじゃないんだよって。
大事なのは自分がどう選んで、どう生きてくかって事だから
本命大学うけられなかったんだったら、次のチャンスを待ってもよかった。ほんとに今そう思うよって・・・。』
『・・・・・。』

『加瀬は、とりあえず今体調いいじゃん・・受けられるんだからとりあえずがんばれ。
でも、万が一今回落ちたとしても、だったら一年勉強して、また来年受ければいいだけのことだよ。
・・・って、受験生のお前には・・そんなに簡単に言うなっていわれるかもしれないけど・・
でも本当は単純なんだよ。すぎてみればそんなことは。

受験だけじゃなくてさ・・これからお前が色々壁にぶつかるとして、どんな時でも一番大事なのは、
お前の人生そのものなんだから・・まず生きてるってことが大事。何かに失敗したら、諦めればいい。
諦めたくない夢だったんなら、成功するまで頑張り続ければいい。
どっちにしたって、お前はお前の将来を自分で決められるんだよ。
明日の試験はとりあえず、今できる最大限の力を出して頑張れ。
結果でたらどうするか考えな。相談乗るよ・・・って。』
『・・・・・。』
『うれしかったっけやー・・・。なんか・・。』

・・・そんなことがあったんだ・・・。

俺も色々はげまされた。岸先生や比呂・・小沢・・家族・・友達・・・みんなに励まされた。
すごくうれしかったんだよ。
みんなが気を使ってくれて、二次会カラオケだったんだけど、俺と比呂を先に帰らせてくれた。
2人で手をつないで夜空見ながら歩いた。

『比呂・・・。』
『・・・んー? 』
『ありがとう。』
『・・・。』
『俺・・受験して本当によかった。』
『・・・・うん。』
『逃げなくてよかった。』

比呂は俺の手をぎゅっとにぎると
息だけの声で『がんばったね。』っていってくれたよ。






2009/02/10(火) 23:23:25
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