俺の知らない世界

比呂のおじいちゃんとおばあちゃんに会った。
おっくんぱぱのお父さんとお母さんだからかな。
比呂は少しだけおじいちゃんに似てる。

俺はなんとなく席をはずした。そんで外に出て携帯で麦に電話。

面会謝絶の間は、見舞いに来ても負担だろうからっていって
みんなで病院に来るのを自粛してたんだ。
とりあえず明日からは、面会オッケーになったみたいだから
その連絡をね。まっさきに麦に。

そのあと小沢に電話して、そんで近くのケーキ屋で
ケーキ買って、30分以上時間つぶしてから
病室に戻ったら、比呂が一人でぼんやりとベッドに座ってた。

『比呂?』
声をかけてみると、比呂が俺を見てぽろぽろ涙を流す。
俺は黙って頭を撫でて、抱きしめた。

おじいちゃんとおばあちゃんと・・三人で話をしてたみたいなんだけど・・
何の話をしたとかは・・比呂は何も言わないから、俺も何も聞かなかった。

そしたらさ、ベッドの上に本屋の袋が置いてあるのね。
何かなって思って聞いてみたら
『わんぴの新刊。じいちゃんが買ってきてくれた。』って比呂がいう。


俺は比呂の手をにぎりしめる。

比呂のおじいちゃんは、どんな顔してわんぴの新刊買ったのかなあ。
比呂の命が助かって・・きっとうれしかったんだろうけど
比呂みたく・・沢山の思い出がよみがえってつらかったんだろうな。

おっくんぱぱは、比呂のお父さんだけど
おじいちゃんやおばあちゃんの・・たった一人の子だったから・・

年をとってからの子だったんだって。
だから目に入れても痛くないほどかわいかったんだって。
でも自分たちより早くに・・突然死んじゃったから・・
きっとつらかったんだろうなあ・・・


すごく・・つらかったんだろうなあ・・・


ワンピの本をぺらぺらめくってたら
紙切れが落ちて俺がそれを拾う。
書いてあったのはひらがなだらけ。
俺は黙って比呂に渡した。

それを見た比呂は、紙切れを見て
視線をはずすと、また、涙を流した。
比呂は全部見てきたから・・。
自分のつらさだけじゃなくて周りの人たちの苦しみも。
俺は比呂の背中をさする。抱きしめる。ぎゅ。




ひろ
じいちゃんとばあちゃんは
ひろがどんなにおおきくなっても
ずっとずっとおうえんしてる
ちゃんとしあわせになるんだよ

2009/03/05(木) 00:01:32
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