ヘルプコール

『那央ー・・ごめ・・ちょ・・きて・・・』

8時頃、いっきなり比呂から電話があって、風呂入ろうとして全裸だった俺は、
慌てて服を着たんだけど、でも万が一の場合にそなえて着なおした服を一瞬で脱ぎ散らかし
シャワー浴びて、さらに気に入りの服をだして、それを着てから比呂の家に向かった。

玄関のドアは相変わらず無施錠。
『入るよー。』とかいいながら、階段あがって比呂の部屋にいくと
比呂が枕に顔を埋めてて、どうした?ときくと頭が痛いと言う。

おばちゃんが里帰りに行くときに鎮痛剤を隠していって
もしも頭が痛くなったときのために5錠だけ渡してくれたんだって。
だけどそれを前に飲んじゃって、もう手元に薬がなんにもなくて
おじちゃんに電話すれば薬のあるところ教えてくれる事になってんだけど
心配かけられないし・・電話なんか出来ないって

とにかくほんとに、頭痛そうで、でもこんな比呂置いて買いに行けねえし
困ってたら電話がなって、電話の相手は麦だった。
比呂に電話したみたいなんだけど全然でないから心配になって
俺に電話してきたみたい。事情を話したら薬を買ってきてくれるという。

10分もしないうちに麦が薬を買ってきてくれて
それを飲ませてベッドに横にならせて、俺が頭を擦ってやってたら
そのうち比呂は眠ってしまった。

『よっぽど痛かったんだな・・・。』麦が言う。

『うん・・ごめんね?』
『いいよ。お前がそばにいてよかった。』
『・・・・。』
『おばちゃん、薬隠していって正解だったな。』
『・・・・うん。』

なんか辛そうな顔のまま眠る比呂。大丈夫かな・・・どうかな・・・。
俺は比呂の頬を触る。すると麦が『熱、ある?』ときいてくる。

『ないよ。さわってみなよ。』俺が言うと、麦はそ・・っと比呂の頬を触る。
『うん・・。ないね、よかった。』といって、麦は安心したような顔で笑った。

『比呂に用事だったの?』
『ああ・・。別に大したようじゃなかったんだけどさ』
『うん。』
『うん・・。まあ、なんとなくね。』
『そっか。』
『じゃ、俺、帰るわ。』
『え・・。もう帰るの?』
『ははっ・・。お前がいるなら大丈夫だろ。なんかあったら電話して。』
『えー・・。ゆっくりしてけばいいのに。』

俺がごねると麦は笑って
『比呂が起きたときに、俺がいないほうがいいって。絶対。』
っていった。ちぇ。

俺は玄関先までおりて麦を見送る。
『泊まるの?』ときかれたから『ううん。帰るよ。』と答えた。
麦はそうかー・・とかいいながら、自転車の鍵開けて
おやすみーって帰っていった。

比呂の部屋に戻ると、相変わらず王子様は眠っていて
俺は母親に電話して10時過ぎには帰るからっていった。

比呂の髪をなでて、あたまをさすって、頬にちゅっとして手をぎゅっと握ってみた。
そうこうしてたら比呂の寝顔が柔らかくなっていったのがわかって
薬きいたんだーとおもったら、安心して俺も少しだけ眠った。
9時半ごろ、比呂が目を覚まして、俺を起こす。
やっべ、朝まで寝ちゃうとこだった。俺は比呂に『大丈夫?』と声をかける。

比呂は、疲れたような顔で頷くと『麦・・きたの?』と俺にきく。
『きたよ。よくわかったね。』といったら『声が聞こえた気がしたから。』と比呂がいった。

話してるうちにだいぶ比呂の目がしっかり覚めてきて
俺が一緒にいるうちに麦に電話してお礼を言ってた。
俺は比呂のとなりに寄り添って、電話のやり取りを聞いて笑った。

頭痛薬は3錠だけ比呂の部屋に置いて残りは俺が持ち帰った。
比呂がそうして欲しいって言ったから。

俺はそれを了承するかわりに、比呂にしっかり約束させる。
頭が痛くなったときは、夜中でも明け方でも俺を呼べって事。


家に帰った俺は、頭痛薬のビンを目に届くとこにおいて
しばらく眺めてかんがえた。
俺も、しっかりしないといけないんだよなって・・
思ったんだけど・・だけど・・・
でもどうしても俺は比呂を頼っちゃうし
ヤキモチだって、きっとなおらない。
頭が痛くなったのも俺のせいかな・・。
なんだか悲しくなってくるよ。

だから、また比呂が頭痛くなったら
俺は急いで比呂に薬を届けよう。
薬がなくなったら俺が買いに行こう。

俺たちの関係って・・一体なんなんだろうな。


2007/11/06(火) 22:40:22
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