あいNG

すげー暇だ。比呂のバイトあがり待ちー。
塾が8時30分までで、比呂がバイト9時あがりだから
一緒に茶でもしようっていわれて、ルンルンで店に来たんだけど
なんかいま、店が激コミレンジャーで、15分バイト延長っぽい。

待てるだけ幸せなんだけどね。『ちゃー飲みいかね?』ってあの声、
最高かわいかったっす。

今日、放課後、比呂んち班が職員室掃前の廊下掃除で
俺、先生の御用聞きついでに、ちょっかい出しにいったんだけど
俺が行ったとき、なんでか比呂が不機嫌で
雨宮先生が『紺野ー。さっきの蜘蛛の巣とってくれたー?』ってきいたら
すげえ嫌そうな声で『・・・今やってりんぐー・・・・。』っていったんだ。

や・・ってりんぐ?

やってる+ING・・・・・?



それきいた岸先生が『何で紺野、ふきげにんぐ(不機嫌+ING)?』とか言い出して、
雨先生が『なんだ紺野、ししゅんきんぐ(思春期+ING)か。』って、

ほらもう誰か止めて止めて



小島がそれ聞いてゲラゲラわらって
『紺野、さっき、壁にデコぶつけて、そんで機嫌がわるいんぐ(悪い+ING)』
とかいうの。うっわ、なんだその間抜けスクープ。
『うっせ、あっほ。』とかぼやく比呂。あーんもう。かわいいな。
先生らとかが、にたにた笑う。俺ももちろんニヤニヤ笑う。

そしたら比呂が切れて、俺指差して『にやけない!そこ!』とかいうじゃん。
小島がそれ聞いて、ぎゃはははわらったら比呂、『お前のデコなんか壁にぶつかれ。だってさ。

さてとー。もうすぐバイト終わるかな。あーあ。どこにいくんだろ。
話したい事は山ほどあるよ。

*********

ただいま俺。お帰り俺。ちきしょー・・。ロクに話できなかった。
せっかく比呂が、俺好みのカフェちっくなとこにつれてってくれたのに。

俺の同中女が声かけてきて、すげえむかついた。
てめ、中学の時、俺の事無視して人格否定までしてたじゃねえか。
『ユッキーじゃん!久しぶり!』とか言って、俺の隣の席に座りやがって
そのおんなの友達のブス女なんか、比呂のとなり座って、すげえ密着して
すげーあったまきた。

あきらかに比呂目当てで、第一俺、その女に中学時代にユッキーなんて
呼ばれたことねえよ、しんじらんねー。あのおんな。

で、そいつらが勝手に頼んだパフェの金とか、全部比呂が払ってくれたんだぜ・・。
比呂のあほ・・。そんなとこまで優しくしないでいいのに。

その女共が比呂に『カラオケいこうよ!』とかいったんだけど、
比呂は空気悪くならないように、理由つけて断ってくれて
やっと2人きりになれて、俺、イラついてそのへんのもの蹴散らしてたんだけど・・
比呂が黙ってみててくれて、目が合ったら笑ってくれて、
近づいてったら抱きしめてくれたから、怒るのいったんお預けにして
比呂の胸で目を閉じて、体いっぱいで幸せかみしめた。

『ごめんね。』
『?』
『あんなクソ女が・・。』
『・・・・。』
『・・俺、比呂と話したい事、いっぱいあったのに・・。』
比呂は、ふふっと笑って首をかしげる。
『俺に話?・・何?』

その顔見たら、力抜けちゃって、なんか、俺も少しおかしくなって
話もせずに、笑いあった。目が合うだけで、顔が勝手に笑うんだ。

そのうち俺の携帯に親から電話かかってきて
しょうがないから帰らないといけなくて、比呂には本当に悪かったな・・。
でも比呂は、帰り道、片手で自転車押しながら
もう片方の手で俺の手をにぎって、
指を絡めながら今日の話を、ゆっくりゆっくりしてくれたんだ。

比呂からみた・・比呂視点の・・今日の掃除の時の話。
おもしろかった・・。なんか。そんなこと考えてたの?みたいなね。
一日比呂と体入れ替えて、あいつの目で世界を見たら
何でも楽しいだろうなって・・比呂の話聞きながら
ちょっとだけ思った。

へんな女に邪魔されたけど、俺等は安定。すっごいね。
今週は金曜休みだなー。なんか予定あったっけ?
比呂と遊びたいなー。まじで。


**********
今、比呂から電話きて、
『で、お前の話って結局なに?』とかいわれたよ。ははっ。
そんな短い時間じゃはなせねえっつの。ねー。
『服着て話すようなことじゃないし。』っていってやったら
『・・・あ、そう。』だって。もー。得意ねー、そのテキトーな返事。
じゃ、こんどゆっくり・・とかいって、さっさと電話きったよ、比呂。

気にしてくれてたことが、妙にうれしかったぞ。良かったな。今日の俺。
明日もこの幸運をひきずれ!

2007/11/21(水) 21:12:30
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