はっぴー!

朝いちばんで比呂に電話したら『・・・・・は・・い・・。』って声が、ガラガラで、
風邪か?!!とおもって、大騒ぎしたら
『・・・寝起き・・いつものー・・騒ぐなー・・うるさい・・・・・』
って言われちゃった。ははっ。言われてみりゃ、そのとーりだー。

『昨日はごめんね? 』
『・・は?・・ああ・・うん。』
『今日、バイトだよね。』
『ああ・・・・・・う・・ん。』
『・・・この頃・・デートできないね・・・。』

しょぼん。落ち込む俺。うなだれると、目の前に自分のパンツ姿。
朝勃ちバッチリしてるのがむなしいぜ。

一人で勝手に気まずくなってたら、比呂の電話口で
がさがさって音がして、そんでゲホゲホ咳したとおもったら、
さっきよりハッキリした声で、比呂が話しだす。

『できるよ。今日なら。バイト早い時間にしてもらったから。』
『え?!』
『昨夜、お前との電話切ってから、ハルカさんに頼んでー・・
10時から3時にしてもらったんだ。だからその後ならいいよ。』
『うそっ!!ほんと!!!』
『ほんと。』
『んきゃー!!!!』

俺は思わずベッドの上に立ち上がってジャンプして、天井に頭をぶっつける。
その音にびっくりした兄ちゃんが、慌てて俺の部屋に入ってきた。
電話の向こうでも比呂がビックリしたような声で
『何今の音。』って俺に言う。あはは。愛の音だよ。

兄ちゃんが、ずっと俺を心配そうに見てるから、
『大丈夫!』って声をかける。そしたら比呂が
『ならいいけど。』って返事した。あはは。

兄ちゃんが出て行ったから、早速デートの約束をする。

『俺ね、今日は時間あるからっ・・何時でもいいよ。だから三時でいい?』
『・・・いいよ。うん。じゃ、三時に店でもいい?』
『ベリーナイス!いいよ!!全然大好き☆☆』
『は?』
『ううん。大丈夫。三時だよね。いくいく。うん、大丈夫。』
『ああ・・うん。じゃ、あとでまた。』
『うん。じゃあー・・ちゅして?』

『・・・・・・・・は?』

『ちゅ☆』
『・・・・・・・・。』
『・・・・・・・・。』
『・・・ちゅ・・』
『わーい!』
『どうした!那央!大丈夫かお前!!!』


昨夜、比呂と電話切ってから、俺も色々と考えたの。
今までの事、いっぱい思い出して、すっげえときめきハートだったよ。
だから今日の俺は甘い。浮き沈みはげしくてごめんね。

3時に店に行くと、比呂はすでにバイトをあがって
スタッフルームで携帯メールをしてた。相手は坂口らしい。
『最近、坂口と仲いいね。』
『・・うん。まあねー。』
『・・・浮気?』
『・・・・・』

見つめあう俺たち。俺は、ペロッと舌だして、にっこり比呂に笑う。
比呂は、携帯をパシンと閉じて、立ち上がると俺の頭を撫でてくれた。

ほんとはエッチしたかったんだけど、俺、6時までに家に帰らないといけなくって
だから比呂に頼んで、ボーリングに行った。
こないだ比呂から聞いた坂口とのボーリング対決の話がおもしろかったから。
ボーリング場は混んでたけど、ちょうど一組カップルが帰る時で
俺等はその人らの使ってたレーンですぐにゲームができた。

比呂って、ストライク出してもガーター出しても、超たのしいんだよ。
特にガーター出した時の小言がさー、おっもしろいんだー。
球とか靴とかのせいにして、説教すんだよ!『ちゃんとまっすぐいけよ!』とか!

隣でさ、少年野球の子等が父兄とかと、
3レーン貸切でなんか行事みたいなことしてたんだけど
比呂の一言一言に笑うのね。特に2〜3人が。
俺らが先に終わって、レーンから離れる時にさ
『じゃあね!こんの!』とか手を振られてたよ。あはははっ!

残り時間が1時間ちょいしかなくなっちゃって、
俺は帰ってから飯だったし・・・すっごい中途半端になっちゃったーって
ボーリング場打診したこと後悔しそうになってたとき
比呂が俺に『夕飯買うから、スーパー行ってもいい?』っていうの。

スーパーはいって、比呂がカゴをもって、俺はとなりを歩いて、
『りんご食いたい』って比呂が言うと、俺がそれを持ってきてかごに入れてさ。

『何のもうかなー』
『・・・・(ファンタを持ってきてかごに入れる俺。)』
『お。わかってるねー。那央ちゃーん。』
『えへ?』

みたいなノリで、ラブラブで買い物したんだ。ねだったらお菓子も買って貰えた。

レジ済ませたら残り40分くらい。わ・・。微妙かな・・・。
そう思ったら比呂が俺に『のりな』っていう。
比呂の自転車の後ろにのって、比呂にギュッっとだきつく。
向かった先は比呂の家。残りあと30分弱。

比呂は、買ったものを玄関に置いたまま、俺の手を引いて部屋につれてく。
そんでベッドに俺を寝かせると、すっげえ甘いキスをした。
抱きしめて、下唇を甘噛みしながら、舌で優しくなぞる。
俺が少しだけ口を開くと、くちびるをちゅっと吸う。
俺は比呂の頭をそっと抱く。大好き。
ドキドキして、なんかぼんやりしてきて『んっ・・』って声が洩れてしまう。
その声を吸い取るように比呂が、俺のくちびるを塞いで
そんで、おでこにちゅっとした。

ギュッと胸に抱きしめられる。比呂は俺のつむじに顔を埋める。
もう、家族との約束なんかどうでもいい。このまま比呂と裸で抱き合いたい。

だけどね。比呂は、キスだけして、そんでただ俺を抱きしめて
6時まであと10分ってくらいのときに、俺の背中をぽんぽんって叩いたんだ。

『送るよ。』

・・・言われちゃった。

『やだ。』
っていったら、すごい優しい顔で微笑んでくれた比呂。
それだけで俺、すっごい満たされちゃった。全然まだ、恋心が新鮮だ。
時間ないのに、わざわざベッドで、沢山キスしてくれた比呂。

どうもありがとう。

家まで比呂に送ってもらって、俺は家の用事を片付けて
飯食って、風呂に入って・・・ちょっと色々考える。

風呂から出て、カーテンを閉めようと思って
窓の方にいくと夜空は真っ暗でさみしいなあっておもった。

寂しいと思えるのは、満たされてる瞬間が俺にはあるからなんだ。

これから2年、3年と付き合いを続けていくうちに
比呂と会わなくても平気になるときが来るのかなあ・・・。
俺は一生無理なんじゃないかなって思う。
っていうか、比呂との恋が俺の人生の全てなんじゃないのって思う。
こんなに夢中で、こんなに取り乱して、しがみついて絶対離せないもの

これから他に見つかるのかなって考えたら
絶対ないって・・ほんとにおもうんだ。

人生ってさ・・種から芽がでて葉っぱが大きくなって
茎と根が伸びて花が咲いて、種をつけて朽ち果てるように
絶対終わりが来るものだけど

俺の花は、比呂からの栄養頼りに咲いてる気がすんの。

比呂からの栄養がなくなったら、種もつけられずに萎むんだろうな。
でも死ぬこともできないで、思い出の中の恋愛にしがみつくんだろうな。
比呂と別れた後の俺はきっと、今現在、比呂と付き合ってる俺を
懐かしく思うんだろうな。
それで、きっとおもうんだ。『あの頃に戻りたいなあ』って。

戻りたいなって思うってことは、この恋を俺が失っているってことじゃん。

そんなのがずっと後になればいい。ずっとずっと後になればいい。

今は幸せの真っ只中だ。今日が幸せなら明日の俺も幸せだ。
比呂がよく言うように、毎日普通なら、10年20年後も普通に過ごせてるんだろう。
俺と比呂は、恋人である状態が普通なんだよね、今は。


俺の普通が、比呂と恋人であることだなんて・・・
俺、最高に恵まれてるなー・・・。

あー、なんか今、すっげー最高。

最高なうちに眠る。おやすみ。


2007/12/29(土) 23:20:58
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