2008/2/10 (Sun.) 23:37:17

店を出たら、ハルカさんがいた。煙草を吸っていたから、声をかけた。

『お先に失礼します。』といったら、呼び止められた。
『最近、ユキムラとどーなの?』っていわれたから
『ラブラブです。』っていって俺は笑った。

ハルカさんは、俺に笑いかけて『いいわね〜。幸せそうで。』という。
俺・・なんか、急にぼーっとしちゃって、口が勝手に喋りだした。

『俺のばあちゃんが・・こないだ倒れて・・そのときに、
「比呂の子供を見るまで死ねない」っていわれて・・そりゃ無理だわ、ばーちゃん・・って・・
おもってそこは終わったんだけど・・帰ったら・・やっぱ色々考えちゃって
俺は他所の家の子とは違うんだから・・なおさら普通に普通にすすまないと
いけないんじゃないかと・・そうしないと・・結局俺の場合は
自分ごとだけではすまないんじゃないかって・・

おもったけど・・・でも・・・それをもう俺一人じゃ決められないし
続くにしろ・・終わるにしろ・・俺はもう一人でそれを決めるわけには・・

でも・・それを話したら・・きっと那央は・・俺との別れとかそういうのばっか考える・・

言えてないことは他にもあるし・・毎月病院の検査受けてることとか・・
そういう色々なことを・・あいつに言わずにいたのは・・隠してるんじゃなくて・・
やましい気持ちがあるんじゃなくて・・
ただ・・・2人の障害になるものを・・自分でつくりたくなかったから・・


でも・・俺たちは・・もうすぐ高校卒業だし・・
一年あるっていっても・・きっとそんなのあっという間だし・・・
やっぱり一緒にいるうちに・・色々考えたほうがいいんじゃないかとか・・思ったけど・・
でも・・今の俺が・・そういう話になった時に・・那央を手ばなさずにいられる自信が・・
やっぱりないっていうか・・・

お互いの将来のために・・別れようって・・言われたら、俺は引き止めたい思いはあっても・・
引きとめた後、あいつをちゃんと安心させられるだけの環境や力が何ひとつないから・・・

好きだとか・・そういう気持ちが何より大事だとしても・・
でもそれだけで、あいつの将来を・・自分に預けてもらうのは・・男として・・無責任なことだと思うし・・

そんな風に・・バカみたいに・・何を深刻に思ってんのか自分でもおかしくなってくるけど・・
でも俺は・・一人きりで生きてるわけじゃないから・・やっぱり他所の人らよりちょっとは・・
色々考えないといけないっていうか・・

気持ちの上での答えはあって・・それはずっと那央と一緒にいたいって事で
でも、それを叶えるすべがひとつもなくて、それは今の俺だからなのか・・
俺自身にそういう度量がないのかわかんないんですけど・・
でも少なくとも・・・今の俺よりは・・
きっと将来の俺のほうが・・可能性を持っていると思うから・・

ばあちゃんにいわれた事を・・それを・・重く受け止めてしまった俺の気持ちを・・・
那央に打ち明けるのは・・・とりあえず今はやめとこうとおもって・・・
でも大事な事だって言うのはわかるから・・・だから・・・

未来の俺におしつける・・。今の俺にはムリだから・・。』



・・・・そんなことを・・言うだけいって、俺は黙った。
ハルカさんは、黙って聞いていたが、俺の話を聞き終えると、少しだけ考えてから話をしだした。

『思ったとおりに動きなさい。紺野ちゃんの思うように進めばいいわ。
あんなピンクのどこがいいのか、私にはさっぱりわからないけど
紺野ちゃんがあいつを大事だと思うなら自分が思ったやり方で大事にしなさい。』

俺・・・何をいきなりあんなに沢山の言葉を
心の準備もなく話したのかわからなかったんだけど・・・

話し終えた後、すごく体が楽になって・・頭の中も真っ白になって・・・
ハルカさんの言葉を聞きながら、死ぬんじゃないかってくらい・・空っぽな気分になっていた。

俺はハルカさんの言葉を聞いたあとお辞儀をして、駐輪場にいき
自転車の鍵を開けて・・夜空を見た。

星が出ていた。


もうあんなもの、どうでもいい。俺の一番星は那央だ。

自転車を押して少し歩く。なんだか無性に悲しくなってきた。
那央は無敵すぎる。
俺の中で、あいつに勝る大事なものは、きっともう何一つない。

おっくんのことも・・きっと越えた。

生きているものが、自分の中の一番になることは
決して甘いことじゃない。那央もいつか必ずいなくなる。


そういう不安にたえられるのかな・・きっと無理な気がする・・
だけど、無理でもはったりでも
大丈夫だっていって、笑って、あいつの事をひっぱっていかなきゃ。


声が聞けたら嬉しい。顔が見れたら、すげえしあわせ。
裸で抱き合えたら、サイコーで

でも、いてくれるだけで・・ほんと・・そんでいいの。

那央が元気で・・わらっててくれたらほんとはそれでいいんだ。

はー・・・・。


なかなか難しいな。色々と。
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