俺は、すごくずるい人間だと思う。


貧血でぶっ倒れてしまった。俺が。
貧血って言うより、寝不足・・かな・・。一睡も出来ないんだ。ずっと。
俺が倒れたとき、片腕で俺の体を抱きとめてくれたのが比呂だったんだって。
俺をおぶって保健室に連れてきてくれたのも、比呂だったんだって・・。

坂口が、その様子を、俺に真っ赤になって話すんだ。
『いいねー、ラブラブ。紺野はほんと、王子様だねー』って。
俺は作り笑いをして目を閉じた。

もう俺の王子様じゃないんだよ。比呂は。

今、保健室のベッドに寝かされて、天井見てたら悲しくなった。
ここで俺、比呂に告白したんだよ。その返事をもらったのも、このベッドの上。
ずるい俺は、先生に『家に帰るか?』ってきかれたんだけど
『家の鍵持ってないから、少し休みたい。』って嘘ついて
保健室に寝かせてもらったんだ。

ここに俺が寝てたら・・比呂があの告白の日の時を思い出して
考え直してくれるかもしれない・・・すこしは可能性があるかもしれないって。

・・昨日小沢に全部話をした。小沢は怒らなかった。
すごく優しく慰めてくれた。それがとっても意外だった。
麦に電話をしても、比呂との復縁をすすめるようなことは一切言われなかったし・・
だから俺もわかった。もう無理なんだろうなって。
俺がしてしまったことは、それくらい最悪なことだったんだって。

俺・・比呂にさあ・・女とヤっちゃったことを打ち明けるのにメールを使ったんだ。
直接話すの怖いから・・・全部の様子を、メールに打ったの。
麦が言うには、そのメールを比呂が読んだのは、病院の帰り道だったらしい。
体が辛い時に、バカな俺のしてしまった浮気話を、一方的にメールで伝えられて、
比呂は苦しかったんだろうなあ・・・。会ってちゃんと話すればよかった・・・。

っていうか・・浮気じゃない・・っていうのは・・おこがましいかもしれないけど・・・
塾の子を・・好きになったりしたわけじゃない・・・。体に流されただけなんだ。
比呂のことはずっと大好きだもん。今だって大好きだよ・・。だけど・・
比呂がね・・。浮気した日の次の日に話したときに、俺にいったんだ。

『俺からいうことはないも無い。ただ、毎日楽しくて、毎日お前に支えてもらった。
何をされたって俺がおまえを嫌うことなんか絶対ないし、・・だから・・・。
浮気じゃなくてさ・・そういう子に出会えたってことなんだよ。きっと。
だって、お前の性格で浮気なんかねえし。きっとそういうことだよ。
今までほんとありがとな。すっげー楽しかった。まじで。
お前、頑張れよ。な。俺はそういう話の相談にはのれないけど
それ以外だったら、何でもいって。じゃ。』

もうね・・吹っ切れてんの。比呂の中で吹っ切れてるみたいで・・。
すごい壁があるんだ。俺が入り込めない壁。
よりを戻してなんていえない・・そんなスキがない。

俺に対する未練とか、そういうものを一切見せない。
さんざん我侭いってきた俺に、そんな比呂の心を揺り動かせるような
度量はない・・。
俺らが今まで、幾多の困難を乗り越えてこられたのは、
俺をしっかり掴んで離さなかった比呂のおかげだったんだ・・

自分は傷だらけになって、俺に散々痛めつけられて・・
それでも俺を守ってくれた。

比呂は俺を守ってくれていた。

逃げ出して・・過去にさかのぼって・・・浮気した時の俺を
ブチ殺したい。

浮気するくらいなら、死んでしまったほうがマシだった・・。
少なくとも、比呂は裏切られたという気持ちを味あわなくてすんだんだから。

2008/02/21(木) 14:11:51
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