2008/7.3(Thurs)22:45:58

部活の支度を丸ごと家に忘れてきて、体操服で練習をした。
今日も早めに部活は終わり。あーあ。日が暮れるまでサッカーしたいなあ〜。

部活のあと、一人でボールを蹴っ飛ばして遊んでいたら
比呂のことを思い出して、力抜けて運動場にねっころがった。

俺は直接比呂本人から聞いたわけじゃないんだけど、
ユッキーからつらい話を教えてもらって体中トゲだらけ。

『死ね』はひどいよ。『死ね』は。

『死ぬ。』って言葉はあるかもしれないけど
『死ね。』って言葉はなくてもいいよ。
『死のう。』って言葉もなくてもいい。
『死ねば。』って言葉はこの世から消えろ。

俺は母ちゃんのおなかの中で、誰かと一緒に暮らしてた。
なのに途中でその子だけが消えて、生まれてきたのは俺ひとりぼっちだ。
その子の命を俺が欲張って、全部吸い取っちゃったのかもしれないって
ずっとイジイジしてたんだけど、比呂がそんな気持ちをけっとばしてくれたんだよ。

『愉来は幸せを託されたんだって。きっと。大切に、元気に楽しく生きるのが一番だよ。』

あの言葉をたびたび思い出して、俺は毎日明るくすごしてきた。
人の言葉って説得力ある。よく効く薬で風邪が一発で治るみたいに
俺の心はぱあ〜ってすっかり晴れたんだ。
だけど比呂が抱えた現実を知ったら、あの言葉にこめられた比呂の気持ち、
重み、命や日々の大切さ・・全部が涙にかわっていくんだ。

いつでも比呂のそばにいるユッキーの涙はこんな風に量産されてったのかもしれない。



『ゆら』


突然呼ばれて俺は目を開けた。夕焼け空を背中に背負って、比呂が俺のことを覗き込んでた。
『部室しめるってさ。ほら、起きな。』そういうと、俺の両手をひっぱって俺を起こしてくれた。

『いこう。』
『・・・・・。』
『さーかーぐーちー。』
『・・・・・・・・。』
『・・・・・・・・。』
『・・・・・・・・・・・・・・・・。』
『・・・わかったよ・・。ほら。』

比呂が俺に背中を差し出す。俺はぴょんっと比呂に飛びついておぶさる。
実に快適だ。ぼんやりしてても、比呂が歩いて進んでくれる。
比呂はユッキーのもんだけど・・俺の友達でもあるわけだ。

『ほらいそげ。チャリの鍵も部室だろ。』
『いいよーもー。このまま家まで連れてって〜☆』
『あほぬかせ。』
『ぱぱ〜☆☆☆』
『こんなに図体のでかい子供はいらね〜。』

比呂は自分で自分のことを大事に出来ないあほんだらだから
ユッキーや俺様のような手のかかる体質のやつがそばにいたほうがいいんだ。
そうすれば俺らは楽ちんだし、比呂も一人でどこかにいったりしない。
われながら最高の作戦だとおもう。



比呂の背中のぬくもりと、夕焼け空がちょっと泣けたけど。
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