『もー駄目だ。大好きだ。』

泣きたい。すげえ泣きたい。

比呂が俺の足の上でさっきまで寝ててさ・・。
10分したから起こしてさ、寝ぼけてる比呂を床に座らせて
ソファーベッドをベッドにして、んで比呂をベッドに寝かせたんだ。

そしたら、すげえ幸せそうに寝るんだ。俺の枕に顔摺り寄せて。
『あー・・好き。俺、布団と結婚したい。』っていうんだ。
俺はそんな比呂が、好きでたまらねえよ。

シチュー失敗を納得できずに、さっき台所でシチューの箱見たら
俺、(牛乳もしくは水○○CC)ってとこを、
(牛乳・水を各○○CC)と勘違いしてたって気がついた・・。
そんなもんマズイに決まってる。それなのに比呂は、全部食ってくれてさ。
『俺、こういうの好き。』だって・・・。『あったかい。おいしい。』ってさ・・・。

目の前でくうくうと眠る比呂。 俺は、比呂の手を握ったよ。
比呂の手の甲に、頬ずりをしたよ。 比呂はちょっとだけ、目を開けたけど
『ごめん・・眠い・・。明日話しよう。』とだけ言って、また眠ってしまった。

大好きだよ・・・。困っちゃうくらいこいつが好きだ。

手首とかが骨っぽいとことか、運動神経いいとことか
変なとこで短気なとことか、笑い方があかんぼみたいなとことか・・。
生傷絶えないとことか・・にんじん食えないとことか・・・
俺の作ったまずいシチューを全部、うまいっていいながら食ってくれたこと・・・


・・・俺の人差し指のばんそこに・・・きっと比呂は気がついたんだとおもう。



ジャガイモ切ってるときに、指をちょっとだけ切った。
比呂には見せないようにして、知らん顔していたんだけど、
シチューの皿を片付けるときに、比呂が言ったんだ。

『しみるだろ?俺が皿洗う。』

あんなに眠そうにしてたんだよ。それがパタッとおきて、シチュー食ってくれてさ・・。
その間、俺のばんそこには、何一つ話題をふらなかったのに、その一言だよ。

しみるだろって・・一言だよ・・。 やだもう・・俺・・。比呂が大好きだ。

中学時代にイジメにあってて、クラス中からシカトとかされてたから、
だからきっと、その反動で比呂の優しさに惹かれてしまったんだと思ってた。

でも違う。でも違うんだ。 ほんと違うんだ。こいつの優しさは。

比呂は俺に特別な感情なんか持ってないとおもう。
でも優しい。俺の過去の事情を知ってるから、ちゃんと特別扱いしてくれる。
ひいきしてもらえるから俺は、いつでも不安にならずにいられる。


そういう配慮に体ごと、引き込まれてしまうのはどうしようもないじゃん・・・。


しみるだろ・・って・・。ああそうだよ。
しみるよ、めちゃくちゃ。しみて死にそうだ。
お前の顔も、声も優しさも、全部愛しくて、心にしみるよ。



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