2006/6/7 (Wed.) 08:29:36

朝練が終わった後、俺は浅井と昨夜のリンカーンのことで話をした。
三村の突っ込みについて語っていたら、後ろのほうで比呂の笑い声が聞こえる。

声のほうに目をやったら、麦が漫画を読んでいて
それを覗き込みながら比呂がけらけら笑っていた。

比呂が笑いながら何かをいってるんだけど、それははっきり聞き取れない。
だけどそのあとに麦がいった言葉は聞こえた。『お前は本当にこういうのに弱いな。』

・・なんか・・彼氏が彼女に言っているような・・親が子供に言っているような・・
そんな感じの愛情めいたものが、つまってるような言い方だった。

俺に友達が沢山増えていくにつれ、比呂の俺に対する特別扱いは徐々に薄れていった感じがする。

実際比呂は、浅井と一番仲がいい気がするし・・。麦とも仲いいかもしれない。
俺は最近小沢や斉藤と行動することが多くなった。

もちろん俺と比呂の仲が悪くなったわけじゃない。
比呂は相変わらず俺に優しいし、いじけた顔してると声をかけてくれる。
バイト上がりに飯も食いに行くし、俺への接し方は全然変わっていない。

でも今は、他のやつともまんべんなく比呂は遊んでる。
特に浅井とは、すごく気が合うみたいで、目と目で通じてるっていうか・・そういう感じがうらやましい。

だからといって、比呂と浅井はそれほど接触があるわけでなく
でも二人でいるときの空気感が、いかにも親友ってかんじなんだ・・。
わけわかんね。

浅井と比呂のそういう雰囲気がうらやましく、
麦と比呂の、・・なんていうんだろ・・大人な麦とガキな比呂っていう構図もすごくうらやましい。

俺は比呂のことをこれだけ思っていても、
他人にうらやましがられるような接し方はできてないんだと落ち込む。

特別な存在になりたい。

想いが強ければそうなるっていうものでもなくて、どんなに努力しようとしても、
こういうふうに大して比呂を意識していない佐伯や浅井にどんどん追い抜かれる。

小沢にそれを相談したら『えー!!なにいってんのー!』といわれた。
『紺野のユッキーへの優しさは尋常じゃないよ!』ともいわれた。
『どこに行ってもユッキー第一でさ。移動も昼飯も一緒じゃん。』だって。

『でも結局・・俺・・浅井や麦にかなわないよ。』
そんな泣き言をつぶやくと、小沢は俺の背中をさすって
『ユッキーはあんなに紺野に大事にされてるじゃん・・。自信もちなよー。』
といわれた・・。

ありがと・・おざわ・・。
でもさ・・なんかさ・・結局それって自己満足じゃん・・。
比呂が心の中で俺を、どうおもってるかなんて結局わからないし
だからこそ、こんなに不安で嫉妬深くなっちゃうんだよね・・。



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