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今日は麦らと回転寿司にいって、一波乱あって大変だった。
紺野が前に付き合ってたらしき女と、すし屋で出くわしてしまったからだ。

思い出すのも嫌だから、そのことには触れたかない。ちきしょ。
でもそのあとに、麦の提案でカラオケに行って そこに比呂も来て元気に歌を歌ってたのを見れてよかった。

麦がすげえ機嫌悪くて、ずっと比呂の横を離れなくて、それはそれでカチンときてたんだけど、
俺は比呂のとなりに行く勇気もない。・・・情けないな。あいかわらず。
一生こんなダメ男で終わるのか俺。

カラオケも1時間で飽きて、店を出ようってことになって
『ここは俺が。』といって、比呂がカラオケ代を全部出してくれた。

比呂は何にも悪くないのに。

『次どうする?』浅井が言う。
『遅いから帰ろうぜ。』と比呂が言う。
『そうだね。帰るか。』小沢も言う。
『じゃあ、またあそぼう。』俺はそういって笑った。

麦は最後までイラついてて、浅井になだめられながら帰っていった。
小沢は俺と紺野に手を振って、『比呂、大変だったね。どんまい。』と言い帰った。

俺も帰んなきゃと思って、比呂のほうをちらっとみたら
比呂がきゅうにへナヘナーとその場に座り込んでしまって
『頭いてえ・・。』と言い出したから、俺は背中をさすった。
ちょっと歩いたとこに公園があったから、ちょっと休んでくことにした。
ベンチに座って、少し黙っていたら、比呂が俺に話しかけてきた。

『ごめんなー・・。変なとこみせた。』
『いいよ。でも、大変だったね。』
『ううん・・・。でも、まさかあんなとこで、かおりさんが酔っ払ってるとは・・。』
かおりさんっていうのは、なんていうか・・いわゆる比呂の元カノみたいなもんだ。
ちゃんと付き合ってたわけじゃないけど、でも、関係はかなり深かったようで・・・。
『・・・家までおくったの?』
『ああ。うん。ベッドに寝かせて、すぐ帰ってきたんだけど。』
『・・・あのメガネの女の人、誰?』
『かおりさんの友達。向こうに着いたら、すげえ泣かれてあやまられたよ。』


・・・・。 なんだよ。卑怯だ。むかつく。
なんで女は、何でもかんでも泣いて済まそうとするんだ。
俺はあまりにむかついたんで、思わず言葉に出してしまう。

『泣くなんて卑怯じゃん。あんだけひどいこといってさ。
泣きゃすむと思ってんのかっつの。 これだから女は。』

すると比呂が言う。

『幸村も泣くだろ?』

『・・・・。』
『・・お前もよく泣くだろ?』
『・・・。』
『俺はお前を卑怯なやつだなんて、思ったこと一度もないよ。』


比呂は、頭が本当に痛いようで、こめかみを手のひらで時々押さえてる。

俺は、比呂の言葉をかみ締めながら、返す言葉を必死に探していた。
でもみつからない。 比呂はうつむいたまま、話を続ける。

『泣くのガマンして一生懸命文句いってたんだと思う。
かおりさんのかわりにさ、あの人がさ・・ 一生懸命言ってくれたんだと思う。
結局やっぱ、俺が悪いんだ。俺は俺なりの考え方で、必死に悩んでかおりさんと別れたんだけど、
そんなの自己満足だったんだよな。 まいったよ・・・。まじで。』
『・・・・。』
『まいった・・・・。』

比呂は今度は夜空を見上げた。俺も夜空見上げたら星が見えた。


『・・・・ヨリ戻すの?』俺は恐る恐るきく。比呂は静かに笑った。
『え?戻さないよ。』
『・・・いいの?』
『うん。戻さない。 別れた時にあの人に言った事は撤回するつもりなんかないし。』
『・・・・。』
『それのどこが間違ってるのかわからないし。』
『・・・。』
『・・・俺の中では正しいのに、あの人らの中では間違いなんだったら、それはもうさ世界観の違いじゃん。』
『・・・・。』
『・・・あの人を大事にしたくてそう決めた。今更色々言われたからって、
ああそうですかってヨリ戻すなんて、そのほうが不誠実じゃん。』
『・・・。』
『・・いや・・別に・・・えーと・・・。』
『・・・え?』
『俺、別に深刻に考えてないよ?単純に・・とっくに終わったことだから。俺の中では。』
『・・・ふふ・・。』
『・・・やめるか。こんな話は。』

比呂はそういって立ち上がった。 俺もゆっくりと立ち上がった。 話を蒸し返すのはやめようと思った。

『比呂、なんも食ってないよね。腹へんね?』というと、
比呂はにこりと笑って、『減った。なんかお前と喋ったら安心しちゃって。』

公園を出て、コンビニに行って、弁当かって紺野は帰った。
俺はちょっとだけ遠回りをして、比呂の家の近くまで送った。
『頭痛いからって、薬のみすぎるなよ。』と声をかけると
『うん。わかったよ。じゃあね。おやすみ。』といって比呂は笑ってくれた。

暗闇に消えてく比呂の背中をみながら俺は、『お前が大好きだよ。』と小声でつぶやいた。


・・・早く気がついてくれよ、俺のそういう気持ちに。
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