Date 2007 ・ 02 ・ 15
『ガーン』

姉ちゃんが妊娠した・・

正確に言うと、姉ちゃんが妊娠してて、今妊娠何ヶ月なんだか
わかんねーけど、とにかく4月には子供が生まれちゃうらしい・・。

んげえええええええええええ。

最近、なんかすげえよく食うし、腹出てきてて
『メタボリック?』とか俺、言ってからかってたんだけど
姉ちゃんなんも言わないで、スルーするからおかしいなって思ってたら
にん・・し・・ん・・。彼氏が今日、姉ちゃんをもらいにきた。

もらうって何だ。物じゃねえっつの!

兄ちゃんなんか、いい加減年なのに、未だにサラリーマンで頑張って
独身生活を満喫してんのによお!!!
バカだよ、ねえちゃんは。子供なんか産んだら
新婚生活めちゃくちゃで、遊び歩いたりできねえじゃん・・・・

俺、勢いで、比呂の家に行ってしまった。比呂はバイトで21時上がりらしく、
俺は比呂の部屋で待たせてもらうことになったんだけど、その時おばちゃんが部屋にはいってきた。

『幸村君。ご飯食べた?』
『・・あ・・はい・・。』
『お家には連絡したからね。』
『・・あ・・すみませんでした・・。』
『あとで送るわ。ゆっくりして行ってね。』
『ありがとうございます。』
『・・・幸村君・・。』

俺は名前を呼ばれたから、顔を上げておばちゃんを見た。
おばちゃんっつったって、まだまだ若い。それにモデルさんみたいに綺麗だ。

『・・お姉さん、赤ちゃんが出来たのね。』
『・・・はい・・。』
『・・・おめでとう。』
『・・・・・。』
『・・・どうしたの?』
『いえ・・別に・・。』

おばちゃんは、俺の隣に腰掛けた。うそだろ・・。なになに!勘弁して!!!

『幸村君・・。おなか触ってみる?』
『え?』
突然予想外な事言われて露骨にキョドる俺・・・。

『・・・ほら。』
おばちゃんは、俺の右手を両手でそっと包むと自分の腹に触れさせた。
何も感じないけど・・・でもなんかあたたかかった。

おばちゃんは、すごく優しい顔で俺に話しかける。

『動かないの。まだね。まだ動かないのがあたりまえなんだけどね。』
『・・・。』
『私も主人も比呂も、それが心配でたまらないのよ。』
『・・・・。』
『正常なのに不安なの。』
『・・・・。』
『予定日4月なんですってね。』
『・・・はい。』
『今まで一人で悩んでたのかしら。』
『・・・・。』
『それでも、必死に守りたかったのね。』
『・・・・。』
『ここまで無事におなかの赤ちゃんが育って本当によかったわね。』
『・・・・・ありがとうございます。』

俺、なんか・・・なんでかわかんねーけど
姉ちゃんの腹の子の成長を・・おばちゃんによかったわねって言われて
無意識におばちゃんにお礼を言ってた。

姉ちゃんは・・・なんでずっとずっと・・妊娠の事をかくしてたんだろう・・

『ただいまー。』
玄関の方から比呂の声がする。そして、一瞬シーンとなったかと思うと
バタバタバターっと階段をあがってきた。
『わ。』
俺の顔を見てのけぞる。おばちゃんが立ち上がり比呂に『おかえり』という。

比呂はおばちゃんの腹を、なでると
『どうした?なんかあったのか?』っていって、俺の隣に座った。

おばちゃんが、静かにドアをしめて、階段をおりていった。

ありがとう。おばちゃん。
もしおばちゃんが話してくれなかったら、俺きっと・・・比呂に対して
一番言ってはいけないことを言ってしまっていた気がする。

俺は比呂に、姉ちゃんが妊娠して、4月に生まれることを告げた。
俺はそれがすごく嬉しいんだって、満面の笑みで話をしたんだ。
比呂は、涙ぐみながら、すっげえすっげえ喜んでくれた。
すげえね・・・よかったねって・・・うん・・・。そうだね。

本当にそうだ。

望んでるよ。姉ちゃんの腹の子が、無事に生まれてくることを。
心から望むよ。会いたい・・抱っこしたいって、心から望む。
だって、子供は幸せじゃなきゃいけないんだ。
みんなに大切にされて、見守られて、沢山の愛情を注がれながら
ゆっくりゆっくり育てばいい。

俺は比呂にぎゅっと抱きしめてもらった。

比呂・・。

お前は望まれた子ではなかったかもしれないけど・・
でも今は、みんながお前の幸せを望んでいるよ。
悲しい思い出が全部報われるくらいの愛情を俺があげるよ。
会いたかったよ。ずっとお前に。
きっと俺、ずっとずっとお前に会いたかったんだ。
だから出会ってすぐに恋に落ちた。
待ってたんだ、俺。お前の人生と俺の人生がリンクする瞬間を。

ちょっと泣いて冷静になったら、比呂の手首が見えて
そこには俺が昨日あげたブレスがはめられてて、死ぬほど泣けた。

帰ったら、姉ちゃんがいたから腹を触らせてもらった。
そしたら俺、腹のあかんぼに、手を思い切りけっとばされたんだ。
わあ・・。なにこれ。かっわいい。
思わずにやけてしまった俺は、テレ顔で姉ちゃんをちらっとみる。

姉ちゃんは、泣いていた。

大切な命。大事にしよう。

明日から一緒に、ウォーキングでもしてあげようかな。



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