Date 2007 ・ 02 ・ 17
『自己嫌悪』

昨夜、2時まで粘ったけど、比呂から電話はこなかった。
朝、なんか地味気分で、学校にいこうとしたら、姉ちゃんがマタニティーとかきて、
彼氏にメールを打ってるのが見えた。彼氏っつっても、もう婚約者か。
いいよな。女は。妊娠も出来るし、結婚も出来るし、切り札いっぱいもってるもんな。

俺には何もない。・・あんなに優しくしてくれるから
比呂は俺のこと、好きなんだって思ってたけど
昨夜は電話くれなかったし・・メールだってくれなかった。

早くも手抜き?エッチもしてくんないし・・・。
あーあ・・。そんなこといっても、しょーがないけど・・。

学校について、教室行ったら、比呂と坂口が話をしていた。

『パスタかー。最近食ってない。』
『うっそ!じゃあ今度行こうぜ!比呂の気に入りそうなパスタの店。』
『おっれの気に入りそうな店ー?あんの?そんなの。』
『こないだヒノエ氏と2人でさー、学校帰りに飯食いに行って!』
『あはははははは!なんでヒノエと2人でなんだよ。』
『いきさつ話すと長くなるから、そのへん割愛ね。んでさー。』
『うん。』

『で、あそこいったのよ。商店街の先の、新しいパスタ専門の。』
『ああ!店の前は通ったことある。ビルの一階のとこだろ?』
『そうそう!そこなんだけどもよー。勘で頼んだパスタがさー。』
『・・・(ごくり)』
『超ーうめえのなんのって!』
『え?なんていうパスタ?』

『ペレストロイカ!』
『ぺれすと・・(どこかできいたことのあるなまえ)』

『魚介がごろっごろはいっててー、トマトの酸味が絶妙でー。』
『それはマジでうまそう!』
『今度みんなでいこうよ。浅井も交えて。』
『いこういこう。』


・・・・それいうなら・・ペスカトーレじゃねえか?
ペレストロイカってあんたたち・・


どこかの国の改革運動か



・・・あーあ・・。こういうときに、こういうことを
考えちゃう俺って、ホントつまんねー男だな・・・。
俺もバカに生まれたらよかった。
バカで天然だったら、それだけで友達いっぱいできたんだろうになー・・。

俺はわざとイスの音をたてて、乱暴に席に着いた。
その音で比呂が気がついて、俺のほうに来てくれた。
『おはよー。』
『・・・おはよ・・。』
むっとした顔で返事をした。でもそれだけじゃ気が治まらなくて
俺は比呂をつれて、階段の踊り場に行った。

『ねえ比呂。』
『・・・?』
『昨日電話くれた?』
『・・・・。』
『しなかったよね。昨夜。』
『・・・・・うん。』
『俺っ・・2時まで起きて待ってたんだよ!電話!』
『は?ごめ・・。え?俺約束してたっけ?』

俺は頭にきて、近くの壁を蹴飛ばした。
『約束なんてしてないよ!俺が勝手に期待してただけだよ!』
『・・・・・。』
『比呂と話がしたいって言うか・・せめて声だけでもって思って・・』
『・・。』
『・・・。』

話してるうちに・・・なんか・・冷静になったというか・・
比呂が・・なんか・・顔文字の・・・

(・ー・)

みたいな顔で俺をみてて・・、そのうちニコニコしだして・・
俺・・怒りたおしてんのに・・・

やっぱ好きだし、顔を見られて、思わず俺は赤面する。
すると比呂は、下を向いて、ははっと照れ笑いしたあと
俺のひざのへんを、軽く蹴飛ばした。

『ハルカさんが・・。』
『ハルカさん?』
『そう。昨日、お前塾だったじゃん。だから、暇だし店にいったの。』
『え?バイトしに?』
『ちがう。遊びにいったんだけどさ、そしたらはるかさんが、縫い物やってたわけ。』
『え・・・・!なんの?!』
『ぱっちわーく?っての?主婦の人がよくやってる。』
『ああ。』
『あれを一生懸命やってたもんで、俺、労いの言葉をかけたんだ。』
『・・・。』
『そしたら、すげえ怒られて。』
『えーー?なんていっちゃったの?』

比呂は俺の隣に座り込んだ。俺もストンとその場に座る。
比呂は俺の耳元で、小声でこういったのだった。

『すごいっすね。ハルカさん。武者修行ですか?』

『・・・・・。』


それを言うなら花嫁★修行


もー・・。比呂は、たまにこういうこと言っちゃうんだもん。
俺は比呂の顔をじっと見て、思わずくすりと笑ってしまった。
比呂も笑う。そして腕をめくると、俺があげたブレスをはめていてくれた。わあ・・・。

『まちがえた・・こっちじゃない。』
比呂がほっぺを赤くして、違う腕の方のシャツをめくった。
そしたら、くっきり引っかき傷。
『久々にヒスられたー。もー。』だって・・・。

あーあ。ハルカさんも、しょーもないなあ。
俺の彼氏に傷つけんなよー。
俺は比呂の傷口を撫でた。それで、比呂の顔をみる。

『お詫びにケーキ奢る事になって、そしたら流れでカラオケになって
家に着いたら23時だったんだ。
無断で遅くなったから、おばちゃんたちに、死ぬほど怒られてー。』
『・・・うそ・・。』
『・・お前の声が聞きたかったけど、いかんせん時間が遅かったし・・
だから我慢したんだけど、お前起きてたんなら、電話すればよかったね。』

ちゅ。

比呂は、俺のほっぺにちゅっとして、すくっと立ち上がった。
俺は腰が抜けそうだ。ほっぺにちゅうで、脊髄まで溶ける。


階段をおりながら、比呂が俺に
『そういえばさー、お前の大好物のパスタがうまい店をさー・・。』
とか話し出す。

『ペレストロイカを食いに行こう。』
とか言われんのかな?
あっは。
もしそういわれたら、知らないふりしようっと。

だって勘違いしたまんまの、比呂はすっごくかわいいから。


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