2006/4/29 (Sat.) 23:31:21

部活後、比呂はバイトで俺は塾。
塾あとに、いちかばちかでメールしてみたら、『暇だよ。飯でもいこー』とレスがきた。

商店街の裏通りで待ち合わせをした俺たちは、比呂おすすめの
『何気にキューピー直営っぽい』らしい洋食屋で飯にすることにした。

店に入ってすぐに、比呂の比喩に大いに納得。カーテンがね、似てるのね。マヨのパケに。
意外とお店は混んでいたけど、奥のテーブル席に座ることができた。

メニュー見ながら、それぞれに勝手に食うものを決める。
『俺は魚介パスタにしよ!比呂は?』『俺はからあげ定食。』
・・・本日もまったく芸のない二人。
頼んだ後に、比呂が俺を見て、あ・・やべえ・・みたいな顔をする。
『どしたんだい?』と聞くと比呂は『昨夜もからあげだった』といった。

『お前から揚げ好きなのなー。』『まあねー・・。』
『なんでそんなに好きなの?』『お前こそ病的に魚類がスキじゃん』


俺が好きなのは魚類っていうよか魚料理なんだけど、ま・・いいか。

・・・そんな会話を続けてくうちに、互いの料理が運ばれてくる。
魚介パスタは最高美味そう。から揚げもとっても美味そうだ。
それぞれに、互いの頼んだものが、美味そうに見えてきちゃってさ、
比呂が店の人に皿をもらって、半分ずっこ食うことに決めた。

『幸村は本格的に魚介ばっかなのな。それもどうなの。』
『大丈夫。魚はヘルシーだから!』
『・・・俺、刺身ってあんま得意じゃないんだ。』
『うっそー・・せっかくの静岡っ子なのに?』
『基本的にあれだもん。マヨかけないと食えない。』
『えーーー!まじかよ、もったいねー』
『ユッキーは刺身全部大丈夫なの?』
『醤油ナシでもいけちゃう派だし』
『・・・・すごいね・・通なのかな・・・・。』

俺ら地元では、すしとか刺身を、醤油ナシで食えるのが通みたいな感じになっていて、
比呂はそれを言ってるんだと思うけど、細かいことを話題にのせてくるあたりが、
どうしようもなく紺野ってかんじ。

から揚げもパスタも美味くって、俺らはご満悦で店を出た。
まだ時間も早いからってことで、二人でCDショップに行くことにした。

こないだ比呂からCD借りて、アシとエルレは気に入ったから、
自分でCD買おうと思って、比呂に場所をきいて、三枚買った。
比呂はというと、『アジカン主催のあれ、エルレとモーサム同じ日だよね』
とか暗号のようなことを口走りながら、何枚かCDを買っていた。

帰り道、その中の一枚を比呂が俺に渡してきた。
『これ、やるよ。』
そういわれて渡されたのは、ブランキージェットシティのCDだった。
『なんだかんだ、俺、色々あったときによく聴いてたんだ。それ。だからやる。』
・・そんな・・買ってまで?そんな・・。
『いいの?』というと、『いいよ。』という。まじうれしい。
比呂がこんな風に、半ば強引に、物をくれたのってはじめてだ。

『なんか俺さあ・・。』比呂が話しはじめる。

『・・・あんま自分のこと、人に話すの好きじゃないんだ。だから悩みもあんまお前に相談しないと思う。
だからさ、そういうのでさ、幸村を変に傷つけたら困るから先に言っとくよ。』

俺は黙って比呂を見る。

『悩みが何もないわけじゃないし、そういうのが顔に出ることもあるかもしれないんだけど・・・』
『うん。』
『でも・・相談しないのは、お前を信頼してないからとかじゃなくって・・人に言っちゃうと、
なんか弱気になっちゃうのね、俺って。だから俺は、一人で頑張りたいから、だから誰にも話さないんだ。』
『うん。』
『だけど、なんとなくやっぱ無理な時は、お前を頼りにしてる。だから、そのときは頼むよ。色々。』

・・・・うわ・・。

『うん。』

返事した俺の声は、喜びのあまりひっくり返った。
そんなことを、宣言する必要なんてほんとはないんだろう。
ただの友人に、そんなことを、ちゃんと言っておく15歳なんかいない。

比呂は俺の過去を踏まえた上で、気遣ってそれを俺に言ってくれた。
その思いやりがわかるから、俺は本当にうれしく思った。
比呂にもらったCDを帰ったら真っ先に聴いてみよう。
曲がり角で俺らは互いに手を振る。

『おやすみ、またあした。』


明日の予定なんかないのにね。
もうすっかりその言葉が定着してしまった。
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