2006.5.09
意外といいやつ?


放課後、比呂が珍しく『だるい・・。』とか言うから、部活前にのんびりすることにした。
中庭の木の根元に比呂を座らせて、俺は生徒ホールの自販にジュース買いに走る。
そしたら業者の人が補充作業してて、仕方ないから渡り廊下の自販まで行って買うことにした。

途中で先生に呼び止められて、立ち話してたら遅くなった。
あわてて中庭に向かって走っていったら、比呂が佐伯と話してるのが見えた。
思わず隠れる俺。生徒ホールから中庭が見えるから、とりあえずホールに入ってみた。
話し声までは聞こえないけど、なんだか深刻そうな話をしてるっぽい。

どうしよう・・このまま帰ろうかな・・だけど部活あるし・・ジュース買う約束してるし・・
だけどだけど・・佐伯って苦手・・。面白い人だけど、比呂ほど砕けた人じゃないし・・
バスケですげえ人だから・・・微妙に別世界のひとって言うか・・・
それに比呂とすごく仲がいいから、比呂をとられちゃいそうで怖いってのもあるし・・。
なんていうか・・・・・だけど・・・

前に比呂に言われたこと思い出した。『お前、意識しすぎて自爆するタイプだろ。』って。
『話もしてないうちから印象だけで、人の中味決めるなよ。』って。
『壁つくってんのはあんた自身だよ。壁は低いうちに壊した方がいいよ。』って。

そうだ。むしろこれはチャンスだ。自分の壁を一枚ぶち壊すチャンス。
今ならそばに比呂がいる。これはチャンスだ!チャンスだ・・チャンスだっ!!

俺は佐伯の分のジュースを買った。そんで深呼吸して、二人の方に行く。
そして、佐伯にジュース渡したらね・・すっごい喜んでくれたんだよ。


佐伯って・・すげえいいやつだー・・・。向こうから沢山話しかけてくれた。
『紺野の世話、いつも大変だろー。』って言われたから
『うん。大変。』ってこたえたら、すっごい笑ってくれて、いいこいいこしてくれた。わーい。

そのあとも比呂と佐伯の会話バトル聞いて笑いまくって
ノリ引きずったまま部活に行ったらね、いつもより沢山、佐伯からパスきた。
で、練習あとに言われたよ。
『ユッキー、ポジショニングいいね。今日くらい沢山目があったり声かけてもらえると
すっげーボール回しやすい。これからもよろしく。』だって。


バスケで佐伯にほめられた〜!!!



うれしすぎて俺は、思わず震えたよ!


帰り道、比呂はバイトだから、途中のサニマまで一緒に行った。
カフェスペースで軽く飯食って、沢山話をして比呂を見送った。
あのとき・・俺ら、三人でさ・・ジュース飲みながらさ・・木の根元にすわってたんだけどさ
先生たちにやたらとね、声かけられたよ。組み合わせがレアにみえたみたくて。

岸先生なんて、無言で俺らに近づいて、手を合わせて拝んで、無言で去ろうとするんだよ!
『なにそれ!呪い?!!』って比呂が追いかけたら、『珍しいもの見たから神様に感謝』だって。

さっきね。比呂にメールしたんだ。佐伯のことで色々聞きたくて。

『比呂、バイトおつ。今日はありがと。あほトーク、たのしかった。
佐伯と俺、ちゃんと喋れてたかな。俺、まともに話するの初でさ、
緊張でかなりキョドったし噛んだ。佐伯いいやつだから、
俺に無理して合わせてくれてたのかな・・・。』


そしたらすぐに返事が来たよ。

『バイト終わった。今から帰る。今日はジュースをありがとう。
普通だったよ。大丈夫。ちゃんと喋ってたよ。
佐伯はいいやつかもしれないけど、悪魔みたいなやつでもある。
だから幸村も合わせなくていいよ。悪魔は人に合わせない。』

・・・・こんにょ・・・


俺は携帯を閉じて笑う。
比呂と佐伯のくだらないケンカを思い出して、心から笑う。


あの場に俺と佐伯と比呂がいて、佐伯と比呂が喋ってても
仲間はずれにされたとは思わなかった。
気まずくも・・・みじめでもなかった。

楽しかった。すごくたのしかった。友達って呼んでもいいのかな。佐伯のこと。


もうすぐ比呂の誕生日だ。日ごろのお礼をいっぱいこめて、沢山お祝いしてあげたい。


post at 23:06
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