大晦日は、麦ちゃんのバースデー★国民総出でお祝いの日!
クリスマスのときよりでっかいケーキ買って家に帰ったら、
なんか、麦ちゃん髪の毛黒いんだけどーー!!!ええええーーーー!!!

『どうしたのー?!』
『いや、そろそろ俺もいい齢だし、緑から卒業しなきゃなと思って。』
『おおおおおお。』
『・・うがい手洗い。』
『はいは〜い★』

通り過ぎて冷蔵庫あけた。ケーキ入れる場所は出かける前に確保しといたし
ストンといれて、ばたんとドア閉める。

そしてまた麦ちゃんを眺めにいった。
後ろから見ると、ちょっと比呂ちゃんににてるにゃ。
若干姿勢が悪くなったこんにょひろってかんじ。

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大晦日まで仕事の愉来。今日は打ち合わせがあるとかで、市街まで出かけていった。
俺は一人で大掃除だ。早めに始めたものの、結局今日までかかってしまった。

カーテンや網戸をはずして、窓を拭き、新しいカーテンをつけた。
来年家を建てることになった今となっては、このタイミングでカーテンを替えたのは
もったいなかったかもしれない。

紺野が静岡に土地を買って、そこに一緒に家を建てることになった。
俺と愉来、紺野と幸村。四人での共同生活が始まる。

とはいっても、俺らと紺野らの生活スペースは、基本的に独立していて、
玄関とLDKでその二つの家をつなげる形になっている。
風呂やトイレもそれぞれ別だ。

最初、愉来は一緒に暮らすことに反対をしていて、2日程度の短い家出までするしまつだったのだが、
幸村のノロケ話を聞いて、それにいい具合に感化されたようで、家に戻ってきたときには、
インテリア本をどっさり買い込んできた。

決めたら一直線なんだ。愉来は。


なかなか静岡にこれない紺野のかわりに、俺と愉来と幸村で打ち合わせや進捗状況をチェックすることになっている。
大事なことを決めるときには、紺野もできるだけ参加できるよう努力するといっていたし、
来年は、俺ら四人、本当にいそがしい日々を送ることになりそうだ。


部屋の片付けも終わり、ひとりでレトルトカレーを温めて食べる。
せっかくの晴れた休日の午後、早く愉来が帰ってくればいい。

そんなことを考えながら、窓の外を眺めたとき視界に入ったのは
緑色が日に透けた俺の髪。

気がついたら俺は、行きつけの美容室に電話をかけていて、
たまたまあいていた時間に予約を取り、家を出たのだ。




緑色の髪は、紺野が『緑色がすき』といったから。
自分がスキで染めた色じゃない。それどころか嫌いなブロッコリーとも被る。
この髪色のまま、いつまでもいてはいけないと思っていた。
紺野への感情は、とっくの昔に変わったが、それでもこの先、愉来と一緒にいきていくなら、
俺はこの髪色では駄目なんだ。

色を抜き、黒く染めた。
いずれ地毛と馴染んでいくと思う。
鏡の中の自分の顔が、さらに地味に見えておかしかった。

だけど、長年心に抱え込んでいた大きな塊が砕けて消えたように感じる。


俺にとって、紺野に片思いをしていたときの思い出は、ただただつらく苦しいもので、
その最中は、それすらも幸せなことだと考えていたが、
愉来と付き合うようになってから、わかったんだ。あれは『幸せ』なんてものじゃなかったことを。


最近、毎日のように紺野と電話で話している。
主に、これから建てる家のことでなんだが、もうとっくに幸村と生涯を共にする決意をしていたあいつは、
俺なんかじゃ足元にも及ばないほどの覚悟で、将来を考えているように思える。

俺も成長したいと思うよ。
男として、ちゃんと成長したい。


家に帰ると、愉来はまだ戻ってなくて、干しっぱなしだった洗濯物をとりこんで、
片付けた後、また窓の外を見た。

あと少しで夕暮れの時間。
空の色は少しずつ変わっていった。

視界に入る黒い髪。

中学以来の黒い髪。


すると背後でドアが開く音がして
『ふ〜!寒い寒い!ただいまーーーー!!』と、愉来の間抜けな声が響いた。


そのあとの『ぎゃーーー!!!』という大声が上がるまで、ほんの数秒。



なんとなく照れくさくて、振り返ることもできない俺だけど、



来年も絶対大切にするから。








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麦ちゃん、ハッピバ★
2013.12.31