肝試しが中止になったから、夕飯後はずっと自由時間になった。
俺ら学校の林間学校の自由時間ってちょっと変わってて、消灯時間が定められていない。
自由時間=寝ててもおきててもいい時間・・なのだ。

俺は比呂に昼間誘われたから、比呂の班のバンガローに向かった。
ドアをノックしたら坂口が出てきて、『あ、ユッキー。入りな。人生ゲームやろう!』という。
あれ・・比呂はどこかな・・?そう思ったら部屋の奥のほうから声がする。

『あー・・幸村ー。ごめーん・・、俺、ちょっと寝る〜・・』
比呂が部屋の隅っこに布団ひいて、寝ようとしている。調子悪いのかな?
『どうしたの?大丈夫?』駆け寄って声をかけたら、
『なんか、薬が強いみたくって、飲んだらねむくなっちゃったみたい。』
と、坂口が教えてくれた。

・・・比呂は林間学校の前に、薬の飲みすぎで死に掛けて、色々大変だったんだ。
きっとその関係の薬なんだろう・・まだ飲んでたんだな・・しらなかった。
俺は納得して、比呂の頭を撫でた。
『じゃ、おやすみー。』
『うん。ごめんな?誘ったの俺なのに。・・じゃ、おやすみ・・』
比呂はそういうと、パタンって音たてて布団に倒れこみ、くうくう眠ってしまった・・。

う〜ん・・かわいい・・・

でも困った、この班の子たち、あんまり免疫ないんだ・・・。
すると坂口が話しかけてくれて
『ねえねえ。お前らとこの班って、いい感じに木が生えてるんだって?』
という。
『うん、木陰で涼しいよ。』
『いいな〜・・。このバンガローは駄目だよ。すっげえ暑いんだもん。』
『ふふふっ。だけど夜は涼しいんだね。』
『そう!そうなんだよ!涼しいっしょ?』
『うん。』
『寒暖差が激しいのね。風邪ひかないように気をつけてくりっ!』

・・坂口って・・普通の会話もできるんだな・・・。

5分くらい、そのまま話しこんでたら、ドアをノックする音がする。
小沢が来た。委員会の見回り当番が終わったらしい。
紺野が部屋の隅で寝ているのをみて、突然小沢が変なこと言い出した。

『幸村さー、さっき頭痛いって言ってたよね。』

『え?』



『ちょっと紺野の横、寝かせてもらったら?』
『・・・・・・』


えーーー!!!




すると坂口が露骨に心配して
『うそ!じゃ、ほら、布団敷くから寝な!まってて。ふとんふとん〜!!』
でたよ小沢の華麗なホラ。
坂口がかいがいしく敷いてくれた布団。比呂のま隣だ。・・天国みたいだ・・・。

『バンガローに戻る時に起こすから。ぐっすりねなよ。』『・・・・はい。』
口裏合わせて目を閉じる俺。小沢は人生ゲームの輪にはいったらしい。
わいわい盛り上がる声を聞きながら、俺は薄目を開けて比呂の寝顔をみる。
みんなが起きてる中で、俺と比呂だけが眠っている。年明けに親戚の家にいったときみたいな気分だ。
比呂の寝顔・・・。大好きだよ〜・・。
俺は比呂の手をつんとつつく。比呂は手をビクっとさせたけど、よっぽど眠かったんだろう。
そのまますやすや眠ったままだった。

ゲームの方ではどうやら小沢に子供が生まれたらしい。
『おめでとうございます!』『小沢さん!第一子誕生おめでとうございます!』
アホみたいに盛り上がるバンガロー内。

目の前には比呂の幸せそうな寝顔。

明日も楽しい一日にしたいな。