『秋山さんと沼田さんがぎくしゃくしてる事、ピンクさんに聞きました。
あ、聞いたというか、・・・・相談です。なんか様子変だったけど、喧嘩かなー・・
とか、そんな感じのあれですけど。』
『うん。』
少しだけ考える坂口。上を向いたり、肩をすくめてみたり。
『あの・・・・僕、女の人とは友達にしかなれなくって、
付き合いたいなって思った人は全員男の人なんですけれど・・。』
『うん。』
『さらに言うと・・例えば・・ユッキは比呂ちゃんを好きになったけど、
初恋は女の先生とかだったし、実際女の人と浮気もできたから僕とは違うんですけど、
・・・・あ、浮気するしないの話じゃなくて・・・・わかりますか?』
『うん。わかるよ。女子をそういう対象としてみれるみれないって話だろ?』
口きゅっと閉じて、こくんと頷く坂口。
『・・・それで・・・・僕、ユッキちゃんが比呂ちゃんと
付き合っていることを知った時、めちゃくちゃショックだったんですよ。
僕も、比呂ちゃんのことがものすごく大好きだったので。』
『うん。』
『多分、ユッキちゃんよりも僕のほうが、早くに比呂ちゃんの事を好きになってました。
あの優しさが欲しくって、ずっと一緒にいたくって、だから飛び越えられなかったんですけど。』
『飛び越える?』
『はい。僕、好きな人に告白したの、ちゃんとできたのは麦ちゃんが初めてでした。
比呂ちゃんに対してはできなかった。勇気がとても出なかったです。
あ、飛び越えるってのは、死ぬために柵を飛び越えるっていう意味での
飛び越えるです。希望をもって柵を飛び越えろーー!!・・みたいな意味じゃなくて。』
『・・・・・。』
坂口は照れたように笑うと、
『・・聞いてて嫌だったら・・止めてくださいよ?』って言った。
おっけーって、俺は仕草で伝える。笑う坂口。
『僕とかにとっての告白は・・実る実らないだけの事じゃなくって・・
本当に・・人生かけての大勝負なわけですよ。命がけです。文字通りその意味で。
僕は・・オープンにしてきたわけじゃなかったから、告白される方も大変ですよ。
え?まじで?!・・っていうか、お前も男だろって、なるじゃないですか。』
努めて笑顔で話してくれる坂口に、かける言葉も見つからない。
『ただふられるくらいならいいです。だけど、その後の事が本当に怖い。
周りの人達の僕を見る目が変わったら?そう思うと怖かった。
それに、仮に付き合える事になったとしても、
相手はちゃんと恋人として見てくれるのかなあ・・とか、考えがめぐるわけです。
興味本位で遊ばれて捨てられたらどうしうようとか・・考えました。たくさん。
僕は高校に入ってから本当に友達に恵まれて、幸せな毎日だったし、
その幸せを壊してまで欲しがるなんて・・・怖くてとても・・。』