WAY BACK 「さっむいね〜…」 「ホント…。地球温暖化はどこいったんだろうな」 「フフ…。ホントだね〜」 バイトあがりの比呂を迎えに行った帰り道、シンと澄み切った空気が露出している頬に当って少し痛い。 でもさ…比呂が隣を歩いてくれて、バカみたいな例えを本気で言ってくれてるだけで、何だか心が温かい。 「今日はこっちの道から帰ろうか?」 「え…?でもそっちって遠回りじゃないの…?」 「いいのいいの。俺がこっちに行きたいんだ〜」 「…うん」 最近、たまにしかこうやっていられないから、今日は少しだけ遠回りして帰ろうって事になった。 俺の顔を覗きこむ比呂の顔がさぁ、もう…メチャクチャキュートなんだ〜。 そんな顔されたら俺は絶対断れないよ。 普段、滅多に通らないこの道は街灯も少なく、当然人通りも少ない。 そんな道を何気ない会話をしながら進んでく。 比呂、寒いの苦手なのにな〜…。 良いのかな…? 俺は楽しげに今日あったことを話す比呂の横顔を見ながら、比呂の事が少しだけ心配だ。 「比呂〜、凍えてない?」 「俺は平気だよ〜。そういうお前は凍えてないか〜?」 「あはは。大丈夫だよ〜。でも…、ちょっとだけ手が冷たいな」 比呂に尋ねると、逆に俺のことを心配されちゃう。 でも、そんな比呂の心遣いが嬉しいから、大丈夫とは言いつつもちょっとだけ言ってみる。 実は手袋はしてるんだけど、芯のほうから冷たい感じがするんだよね。 目の前で小さく両手をすり合わせて見せると、比呂はおもむろに俺の左手を掴んで、 自分の手ごとジャケットのポケットへと突っ込んだ。 「え?ちょ、比呂?」 「少しは暖かいかい?ピンクちゃん」 動揺する俺に比呂は優しく問いかける。 そんな顔にもいちいちドキッとする俺の顔はめちゃくちゃ熱い。 「うん…ありがとうね。でもさ…右手が寒い…」 「…それは考えてなかった…。じゃ、もう少ししたら場所を入れ替えよ」 照れ隠しに肌肉っぽい事を言うと、比呂はしっかりと受け止めてくれて…俺の顔を見てニコっとした。 その顔にキュンとしちゃって、胸の奥が熱くってしょうがないよ。 ありがとうね、比呂。 とっても暖かいよ〜。 左手どころか全身ポッカポカだよ…。 時間が遅いし…なによりこの通は人通りが少ない所為なのか、 比呂はポッケに招き入れた俺の手をギュッと握る。 それからしばらく歩いたあと、比呂はさっき言ってくれたみたいに場所を入れ替えて、 今度は右手をポッケへ入れてくれた。 俺は比呂のジャケットの中で暖まっていく手にギュッと力を入れて、比呂の手を強く握り返した。 比呂はそんな俺の方を見てフフッと笑って、また話をしだす。 そうやって俺達は、静かな夜道を他愛ない話を響かせながら、ゆっくりと家路を辿って行った。 「おやすみ」 「見送りは良いから、早くお家にはいんな」 「は〜い。また電話するね〜」 「おー」 家の前まで来ると、別れ際の挨拶を済ませて比呂の背中を見送った。 本当は早く家に入れって言われたんだけど、どうしてもしたかったからね。 比呂の背中が見えなくなると、俺は玄関に入って、 比呂に暖めてもらった両の手を見つめながら手の感触を思い出す。 思わず顔の筋肉が緩むのが、自分で良く分かる。 「ふふ…。ありがとうね、比呂ちゃん」 手を暖めてくれた比呂に小さくお礼を言って、それから自分の部屋へ駆け上がった。 THE END ****** 『背徳の鑑』の鉄鍼さんから紺幸テキスト頂きました! ぬくもり系の文字列をドキドキしながら目で追って 『紺幸さいこー』っておもいました。 かわいいお話書いてもらえて幸せです。 やっぱ恋人さんたちにはラブラブでいてもらいたいですね! 単純に好き!それが一番純粋で尊い気持ちだとおもうのです。 好きって気持ちがいっぱいちりばめられた キラキラしてる恋のお話・・・ほんっとにうれしいですー。 鉄鍼さん。どうもありがとうございました!! |
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