高校に入学したばかりの・・・まだ比呂との関係が一般友達レベルだった頃。
すでに俺は、常に比呂のそばにぴったりくっついていた。
話題もないし、話しかける勇気もない。でもそばにいたい。
そんな感じだったから、黙ってくっつくよりほかなかった。
比呂は最初「・・え?どうしたの?」って聞いてきたりもしたけれど、
2~3度繰り返したら状況に慣れたようで、その後はとくに何にも言わなくなった。
クラスの奴からは『背後霊?』『地縛霊かな?』とか散々なことを言われたけど
俺がカチンと来る前に比呂が「俺の予想では守護霊だと思う」って言ってくれた。
ご利益を期待して、坂口や佐伯が「俺のことも守ってくれ」って言うから無視した。
そんなある日、いつものように比呂にくっついてたら、突然比呂が俺の頬を触った。
びっくりして腰が抜けるかと思ったし、まわりのみんなもびっくりしてた。
「幸村、いつもよりあったかいよ?熱ある?」
って比呂が言う。それを聞いて斉藤や大きい小沢が俺の顔をペタペタ触った。
「熱無いよ?気のせいじゃねえの?」
大きい小沢がそういうと、比呂があっ・・て顔したあとにハハハって笑った。
「ごめん、俺だ。Tシャツ着るの忘れてた」
リュックから白いTシャツを出して、制服のシャツを脱ぐ比呂。上半身裸。
その頃の俺には片思いの自覚は無かったけど、ドキドキしたのは覚えてる。
比呂はシャツを着るとまた席に座って、そのまま斉藤たちと話を始める。
で、振り返って俺に「どうした?」っていうんだ。
「いいよ、くっついても」って。
俺がまた比呂にくっつくと、奴らの話は再開した。
俺は会話に混ざらない。ただ比呂にくっついてる。それだけ。
ただそれだけの・・俺の大切な思い出。