親指 今朝、小沢と少しだけ言い合いになってその落ち込みを、そのまんま、一日背負ってしまった俺。 比呂が心配してくれて・・・だから相談に乗ってもらおうと思ったんだけど 昼休み、あいつは、先生の用事を手伝うことになっちゃって俺は後回し・・・・。 もう俺なんかどうでもいいのかなー・・・。 そんな風に、グズグズ悩んでて、部活でて、塾行って、帰ろうとしたら 塾の前で、比呂が待ってた。『一緒に帰ろう?』っていわれた。 俺、ほんとは嬉しかったんだけど、思わず比呂に対して感じ悪いこといっちゃったんだ。 『なんでそういうのを、前もっていっておいてくれないの?』って。 でも実際そうだ。いつも比呂は突然だし。 花束のことも、ちょっと前ならアイスだってそうだし・・ 今日だって・・こんなに勝手に俺の事待っててさ・・・。 比呂がくるってわかってたら、もっと綺麗な服きてたよ。 少なくとも、前もって約束してくれてたら、 もっと早くに俺は、ときめきモードに入れて幸せだったのに。 ・・比呂が、ため息をついて、ちょっとだけ考えてからいう。 『たしかにそうだ、わるかった。じゃ、気をつけて帰りな。バイバイ。』 自転車に、またがって、比呂はそのまま帰っていってしまった。 俺。 俺、自分がどんだけ勝手かわかってる。わかってるんだけど、なんかイライラして・・・ 比呂に八つ当たりしちゃった・・・・。だって小沢と喧嘩みたいになって、 あそこまで色々いわれたことなかったし・・・・友達のアドバイスにしちゃ、絶対いきすぎだと思ったし・・ すげえ・・俺は傷ついたし・・・。 何でこんなにうまく行かないの? 俺、比呂が待っててくれて、ほんとは嬉しかったのに。 何で俺・・あんなこといっちゃったんだろう・・・。 ほんとはこんなに心細くて、比呂に抱きしめて欲しいのに。 シクシク泣きながら自転車押して、帰り道を進んでいたら 道沿いにある薬局の駐車場に、比呂の自転車がとまっていた。 ・・・俺は店内をそっと覗く。比呂が、シップを買っているのが見えた。 店から出たとこで声をかける。『どうしたの?!けがしたの?!』 そしたら比呂は、ビクっとして、持ってた袋を落っことした。 シップと包帯・・・・。怪我したのかな・・。 『比呂・・・どこかいたいの?』 比呂は俺に左手を差し出す。 『部活の時親指がグキっとなって・・んで、腫れた。』 それを聞いて俺は、比呂の手を両手でつつみこんで親指をじっとみた。 ・・あ・・。すごい腫れてる。痛そう・・・。俺は比呂をみる。 『こんなでバイトいったの?』比呂は、黙って頷いた。 そんで俺に向かってこんな事を言う。『・・・痛い。』 俺たちは路肩に自転車停めて、ガードレールに腰掛ける。 俺は比呂の手にシップを貼り、ゆっくり包帯を巻いて留めた。そんでそのまま比呂の手を握る。 『ごめんね?さっき・・酷いこと言って。』 『・・いいよ別に・・・。お前もなんかあったんだろ?』 『小沢と喧嘩して・・・。』 『うっそ、まじで?』 『なんかそれで・・イライラして・・・なんか・・ごめん。』 そしたら比呂は言った。 『理由があるんだし、仕方ねえよ。』 そのまま比呂に相談をしようかとおもったんだけど・・・ でも相談するって事は・・比呂からもらった花についての 言い争いの全部をさ、言わないといけないってことじゃん・・・。 いえない・・絶対比呂にはいえない・・・・。 だってあれは、半分照れ隠しみたいな感じで卑屈になってただけだもん・・・。 比呂はそのまま、サニマにいって『アイスかってやるから、元気出せ。』って言ってきれいに笑ってくれた。 喧嘩の理由を比呂に聞かれることはなかった。 2007/05/29(火) 23:33:33 |
|||
NEXT |