じわじわ。

今日も休んだ。休み時間のたびに比呂が電話をくれた。
うれしくって、ハナウタを歌った。テレビで流れてたときにいいなって思った曲のうろおぼえ。

<今日、部活ミーティングだけだから、帰りに寄るね。

という比呂のメールにドキっとする俺。今日は7時まで、家族はみんないない。
念のため風呂にはいっておこうとおもって、湯を沸かしてじっくりあたたまった。

・・念のためってなんだよ・・・

4時過ぎに比呂がうちに来た。アイスやゼリーを買ってきてくれたんだけど
他にも紙包みを出して、『食欲でなくて昼、あんまくえなかったんだ。』って、パンを一個出して俺に差し出す。
それがすごくうまそうだったから、アイスとかは冷蔵庫にしまった。
俺がパンをぱくついてても、比呂は一向に食べようとしない。

『食べないの?比呂。』『うん。いらない。』
『調子悪いの?』『そんなの悪いに決まってんじゃん』
え?
比呂は、むくれたような顔して、俺の腰に抱きついた。
『お前はいつまでたっても、調子悪いし!いつなおんの?今?明日?』
俺、そんな比呂がかわいくて、食べかけのパンをテーブルに置いた。そんで比呂に向かって両手広げる。


いつも俺が比呂にしてもらってる『おいで。』を、俺がしてみたんだ。


比呂は一瞬、ハニワ顔になったけど、でもすぐに俺をぎゅっと抱きしめた。
『おいで』をするのが俺だとしても、抱きしめるのは比呂の方なんだな。
今日の比呂は、相当甘えっこモードはいってるようで、抱きしめられて痛いほどだった。息苦しさが、心地いい。

ちゅうされた。なんか俺のほうも、実は相当ガマンが限界だったようで、夢中になって口づけあう。
無意識に比呂のベルトをはずしていて、比呂は俺のパジャマのボタンを外して、
・・だけど脱がせはしない。かといって、行為を中断するわけでもない。

脱がせないのは俺の体調考慮してくれてんのかな?
でもエッチはするんだ・・。なんだそりゃ。強引な比呂がすごいうれしい。
お互い手で、何度も欲吐き出して、ぐったりするまで、抱き合って、すっごいすっごい満たされた。

その後。比呂が俺の体を拭いてくれて、パジャマのボタンも閉めてくれて
学校の話をしていたら、だんだん眠くなっちゃったみたくて
寝ちゃうとバイトいけなくなっちゃうから、顔あらってきていい?っていわれて、
いいよって言ったそのときに比呂の携帯が派手に鳴った。
あれ?着うた変えたのかな?アジカンの着うたが流れて、
電話に出た比呂はニコニコ話してる。アジカンか・・最近聴いてないな。

電話を切った比呂が『坂口ってさー、どこかおかしいよね、どこかが。』
といいながら、携帯を俺の机の上におく。
そんで『那央、のどかわいたろ。なんか買ってこようか?』って言ってくれた。
『サイダーのみたい。』っていったら、『いいよ。』っていってくれて、
財布もって比呂は出かけていった。サニマまで行ってくれるのかな。

俺はさっきまで比呂とえっちしてたベッドに寝転んで、しばしにやける。
そんで比呂の携帯をぱかっとあけると、相変わらず俺の笑顔が待ち受けになっていた。へへ・・・。

比呂の携帯を開いたままおいて、その隣に俺の携帯をおく。
今の俺の携帯は比呂が手紙に書いてくれた<早く治って。会えなくてつらい。>という走り書き。
並べておいて、交互に画面を覗く。

嬉しくて、涙が出そうになった。去年の俺に教えてあげたい。こんな幸せな結末を。

そういえば俺、ずっと着メロ変えてなかったんだよな。さっきのアジカン・・なんて曲だっけ・・。
俺は自分の携帯から比呂携帯に電話かけて着メロもう一回聴こうとした。

そしたら。

そしたら、アジカンじゃない曲が流れる。あ・・・この曲。俺が今日一日、ハナウタうたってた曲だ。
え・・?なんで?俺、比呂に心で『勝手に盗み見してごめんね』っていったあと、着メロの設定を見てみた。
そしたら俺専用の着メロっていうか、着うた設定してあってGReeeeNって人たちの曲だった。

曲名が『愛唄』だった。

なんか・・。俺・・なんかすごくどきどきしてさ・・。だって、ずっとゆっくり会えなかったし。
さっきやっと抱き合えて、沢山キスできて、沢山比呂に甘えることができて、
比呂と目が合った状態で、何度も『好き』っていうことができて
そういうのだけでも、感極まってしかたなかったのに・・・

だって・・俺専用の着メロなんか・・普通、俺自身は聴けないわけじゃん・・・。
俺の前では普通、その着メロは流れないんだから。
着メロ聴こえる距離にいるなら、会話で済むし、電話なんかしねえし。ならなんで?この曲なんだよ。

俺、もう一回比呂携帯に電話した。そしたらやっぱあの曲が流れる。
何回俺が比呂に電話をかけても、『愛唄』がかかるんだ。何度も何度も。

胸の奥から搾り出すようなかんじで、涙出したら、
なんかとまらなくて、サイダーと、ファンタをもって部屋に戻ってきた比呂が
その光景に驚いて、『どうした・・・?』と固まる。

俺は比呂の携帯を比呂に渡す。そんで自分の携帯から電話をかける。
あの曲が流れて、比呂が電話に出る。『ありがとう。』って、俺は一言だけ言った。

着うたの事が原因で、俺が泣いているということに比呂は気がつかなかったみたい。
『は?何が?』とかボケた顔で言ってんだよ。もーいい!お前は知らなくていい!!
俺が携帯で電話かけるたび、比呂の携帯からあの着うたが流れてさあ・・・
あたりまえのように、電話に出て・・・


比呂は俺と話してくれるんだよな・・。


いっぱい電話しよ。いっぱい電話して、比呂と沢山話そう。
俺は、比呂と同じように自分の方も比呂専用着信音を、 『愛唄 』に変えた。

これは俺だけの幸せは内緒ごと。でも小沢には言っちゃうかもな〜・・・。へへ。










2007/06/19(火) 00:06:26
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