ほ。

塾あとにバイトに行って、そこで比呂と合流。
更衣室で一緒になって、比呂はジャージから普段着に着替える。
そしたら朝に風呂でじゃれあった時に、俺がつけちゃたキスマーク発見。
比呂に教えたら、ふふっとわらって『全然気がつかなかったー。』っていった。

結構目立つって言うか、Tシャツだったらギリギリ隠れるけど
比呂が持ってきた着替えが、鎖骨モロだしの服だったもんで
メチャクチャ見えちゃう位置でさ・・。
どーすんのかなっておもったら、比呂はバックをガサガサ漁って
バンソコ貼ってそれを隠した。

・・・・でさ。俺がそれ見て、なんか不安になっちゃう前に、ちゃんと言ってくれたんだー。
『仕事だから、一応隠すー。他人に見せんのももったいないし。隠れた?』って。

・・・優しいな。比呂は。何で俺の気持ち、わかってくれるんだろう・・・。

そのあと5時までフルにバイト。台風気味で天気悪いのに
なんでか客がやたらと来て、ハロウィン系の雑貨が売れて比呂はずっとラッピング。
最近比呂目当てできてる女子中学生に、
『紺野さん、それ怪我ですか?』ってキスマーク指摘されてさ、
近くにいた俺のほうが焦った。

比呂は、『ああ・・。ちょっと怪我・・。ふふっ。 』ってそれだけ言って、軽く流して・・
そのあとちらっと俺を見て、またうつむきながらふふっと笑った。

もー・・・・。俺マジで比呂と結婚したい。

バイトが終わって、家に帰る途中、2人でスーパーに寄って
鍋の材料をかったんだ。提案者はもちろん俺様。

『鍋にしない?2人きりであれだけど・・。』って自信なさげに俺が言ったら、
比呂は、にこっと笑ってくれて『あー、いいね。食いたい。』だって。
思わずスキップしそうになるくらいうれしかった。

鍋の材料を買って、明日の朝のパンとかも買って
本気で新婚みたいな気分、比呂のとなりで俺は浮かれる。
帰り道・・ケーキ屋の前で比呂が立ち止まってさ
『那央ちゃん、ケーキ買おうぜ。』っていうの。

俺はいいけど比呂は甘いもの好きじゃないじゃん。
だけど、俺が返事する前に、さっさとケーキ屋にはいっちゃうのね。
俺に二つと、あと比呂は自分用にゼリーみたいなのを選んで買った。


鍋は俺一人で作ってあげたかったから、比呂には先に風呂に入ってもらう。
『手伝うよ』って言われたんだけど、そこは強引に押し切って。
ゆっくり風呂にでも入って、疲れを取ってほしかったんだ。
山梨から帰ってすぐに、俺と会ってきっと気づかれしてると思ったから。

・・・なのに比呂はさっさと風呂から出てきて俺の料理を手伝いだす。
『ゆっくり入ってくればよかったのに。』って俺が拗ねたら、ははって笑われた。
『那央こそ入ってこいよ。寒かっただろ?』って、俺に風呂を勧めんの。
『俺は飯あとに入るー。もー、あほ!』『俺、完全に尻に敷かれてんなー。』

喧嘩にすらならねえよ・・。むむむ。

鍋はかなりうまく作れた。お互い腹が減ってたからガツガツくって、バカ話して笑った。
途中で浅井から比呂携帯に電話が来て2人で携帯を奪い合いながら、
浅井と色々話をした。あっという間に鍋は終わった。

さー片付けようって思ったら、比呂が俺に風呂に入れって言う。
後片付けしてくれるんだって・・。
どうしようって思ったけど、言葉に甘えてはいることにした。
湯船に浸かりながら、俺はちょっとだけ泣いた。

比呂があまりに俺にとって完璧すぎて・・
もしかして比呂って人自体が夢なんじゃねえのかなとか思って。

たびたびそういう感覚になる、贅沢な悩みだ。
付き合い始めの頃は、ぶっちゃけそのうち本性がでて
俺を苦しめるんだろう・・とか思ってたけど
9ヶ月ほどたった今も、何一つ比呂はボロを出さない。

・・・この優しさが比呂の本当の姿なのかなって・・
そういうことに気がついたら、俺の恋心はますます加速して
自分のアラばっか見えて恥ずかしかった。

風呂でたら比呂がコーヒー淹れてた。ケーキも用意してくれてて
風呂で温まった体に、その優しさがじんわりしみた。イスに座って、比呂と向かい合う。
俺はケーキを一口食べる。甘くてうまくて思わず声上げて
『うっめー』って言いながら比呂を見たら、比呂が俺の事を愛しそうにみていた。

『おっまえ、ほんとケーキとか好きだよなー。』って言いながら比呂が目線をそらす。

比呂の後ろにある流しの脇のほうに、灰皿があって吸殻が一つ捨てられていた。
『吸ったの?煙草』
『ああ・・一本だけ。』
『・・・・。』

吸ってるとこ・・・見たかったな・・。

ちぇってかんじでケーキ食ってたら、比呂がテーブルを指でととん・・と叩く。
目を上げたら比呂が俺を見てて『どーなの?最近。』っていうんだ。

『え?なにが?』
『塾でも何でも色々。』
『・・・・え?』
『・・ほら俺さ・・最近自分のことばっかで、お前の話きけてなかったし。』
『・・・。』
『ごめんなー。なんか、心配ばっかかけて。』
『ううん・・。そんなことないよ。』
『・・で、お前は大丈夫?変わったことねえの?』
『・・・・変わったことは・・・そうだな・・・』
『うん。』
『・・・・・。』

涙がボロッと出た。

比呂がビックリしたような顔で黙る。涙がでた俺自身がびっくりした。
え?泣くような空気じゃねえだろ。そしたら・・俺の中の弱虫が、勝手に話を始めたんだ。

『さやくんが・・うまれてから・・俺・・なんか・・比呂をとられちゃったような気になって・・
寂しくても・・俺の都合で・・約束しちゃ駄目な気がして・・電話も・・ガマンしてたんだ・・・。』
『・・うん。』
『俺・・・何度もメールや電話しようと思って、何度も途中で止めてる・・んだ。
最近なんか・・なんか・・・比呂は俺といるよりさや君といたほうが
楽しいんじゃねえかって思って・・・。』
『・・・・・。』

持ってたフォークを皿に置いて、俺は泣きじゃくった。実際寂しかったんだ・・。あの子が生まれてからずっと。

比呂は俺の頭を撫でてくれて、左手をそっと握ってくれて・・・指を一本一本撫でてくれて
『・・うん・・・。わかった・・・ごめん。』
っていう。そんで、ゆっくりと話を続けるんだ。いつもみたいなあの、静かな口調で。

『那央の前だと・・なんか気が抜けちゃってさ・・ちょっと・・そっけなかったかもしれない。
こんな言い方するとなんか変かもしんねーけど、やっぱ山梨いくとさ・・すげー疲れんの・・。やっぱまだね。
こっちに戻るとお前がいるじゃん。ほんっとーに、俺の心の支えなんだよ。お前が。』
『・・・・・ほんとに?』
『ほんとさー・・。だから・・今もすっげー楽。名前呼んだら返事がすぐ返ってくるとこに、
お前がいてくれんのが、嘘みたいに嬉しいし・・楽しいっていうのはもちろんだけど・・・・・。』
『・・・・・?』
『なんていうのかなー・・うーん・・ほっとするって・・かんじ?』
『・・・・比呂・・・。』
『みたいな?』
『ははっ。』

胸が締め付けられて苦しいほど、ときめいてもう俺天国行き決定。
顔が赤くなってくのもわかったし・・やたらとすっごい嬉しかった。

『俺も比呂といるとほっとする・・。塾やバイトはなんだかんだいって
少し気疲れするとこだし・・・でも比呂に会うとほっとする。
全部の気持ちで甘えられるし。付き合えてよかったと思うし・・・これからもずっと仲良くしたい。』

よくもまあ、こんなこっぱずかしい事が、すらすらといえるもんだな俺。
比呂はそれを聞いて、かなり照れていた。でも、嬉しそうに笑ってくれたけど。

ケーキ食って、片付けて、歯を磨いたあと、俺は比呂のノートパソコンで
ゲームやりながら寝ちゃってたみたいで、今気がついたら、比呂がいない。
窓から外を眺めたら、比呂が庭の花の手入れをしながら、煙草吸ってるのがみえた。

だから、そのまま日記書こうと思って、パソコンつけて起動している間に
比呂の携帯がそばにあったから、魔がさして、ぱっと開いてみる。
待ちうけが俺の寝顔だった。きっとちょっと前に撮ったんだろう。

グっときた。なきたくなった。

恋愛っていいなーって、今日もまた思った。



2007/10/28(日) 00:03:55
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