Date 2006 ・ 12 ・ 19
幸せ気分
電話したー。
家に帰ってから、そっこう風呂はいって、なんか妙に今夜、ときめき気分だったから比呂に電話したー。
そしたらちょうどバイト帰りみたくて、『家に着いたらかけなおすよ。』といわれて待つこと20分。
携帯がなって、コンマ1秒ででたら、電話の向こうで比呂が、はあはあいってて、
急いで帰ってくれたんだって思ったらすっごい嬉しくて、俺は電話切るまでときめきっぱなしだったよ。
『どうしたの?』
『え?』
『なんかあったの?電話。』
『ああ・・。特になにもないんだけど、なんとなく。』
『あはは。そっかー。』
『ごめんな、急いで帰ってきてくれたんじゃねえの?』
『ああ、まーねー。でも、最近寒いし、わりと毎日急いで帰ってんのよー。』
んふふ。バイト帰り直後の比呂は、たまにオカマさん喋りになる。
『比呂。』
『?』
『もうすぐ冬休みだね。』
『ああ・・そうだね。』
『年末年始って、店どうなんの?』
『ん?バイト?あるよ。毎日。』
『まじでーー?!』
『おう。けっこう混むんだ。去年は酷かったもん』
『ほんと?!』
『ほんとだよ。店でハルカさんが酒飲んで、酔っ払って暴れてすっげえ大変だったんだ』
『そういうので大変なのかよ!』
俺は比呂ののんびりとした、話を聞きながら想像する。中学生だった頃の比呂と、店長の秋山さんが
必死になって泥のように酔っ払ったハルカさんをなだめている姿を(地獄絵図)・・・。
のどの奥がなんかくすぐったい感じ。ああ・・でもきっと、すごく楽しかったんだろうな。
ハルカさんと秋山さんと比呂の三人をみてると、どうしようもない父親と、長男と次男ってかんじ。
ほんとに微笑ましいんだよな・・・。
ハルカさんは、責任のある場所とか、本気でキレた時には、男に戻ってしまう。
戻るって言うと語弊があるか。男として生きた時間が長かったから、
その頃の自分がふいに出る・・って感じなんだけどね。
『・・おーい。ピンクー』
思わず妄想にふけってしまった俺は、どうやら無言になっていて、
不安になったらしき比呂が、俺のことをしきりに呼んでいた。ふふ・・。
『ごめんごめん。』
『びっくりしたー。いきなり黙るから。』
『や、なんかー、酔っ払ったハルカさん想像したら、笑えちゃって。』
『あはは。そうかー。でも実際あの時は笑えなかったけどね!はは。』
『あはは。』
・・いつもね。
いつもさ、電話の切り方が、わからなくってこまっちゃうんだ。
もっと話をしていたいじゃん。
ぶっちゃけ比呂の吐息だけでも、聞けたらそれで幸せなんだ。
だからずっと、電話つなげたまんまで、朝まで比呂の寝息を聞きながら
寝たいよなとさえ、おもうんだもん・・。
だけど現実は、そんなの無理なわけさ。俺はあいつの彼女じゃねえし
そういうふうな独占の仕方を出来る立場じゃないんだ。
将来、比呂と付き合ったり結婚できる女って、ほんとにしあわせだろうなあ・・・。
最後に明日の予定の話をして、俺はあっさり電話を切った。
パタン・・と携帯を閉じ、あきっぱなしだったカーテンを
閉めようとしたら、ガラス窓にうつる俺の顔が、すげえ幸せそうに笑ってたんだ。
無意識に。
Post at 23:50