『おかえり』

アイスを食い終わった頃に、比呂から電話がかかってきた。

アイス食いながらずっと、比呂が自転車で走る道を思い描いてて、
あいつが家に着いて、チャリに鍵かけて、玄関開けて、おばちゃんにアイス渡して
階段あがって、部屋に入って・・・ベッドに寝転がって
そろそろかな・・とおもったら、俺の携帯が鳴って、すげえ笑えた。

予想到着時間ぴったりだ。

そんなだから、電話に出た瞬間『おかえりー』といってしまった。
比呂はそれに対して、あたりまえのように『ただいま。アイスどーだった?』とこたえる。


その後、明日の約束を、2〜3分話して、あとは、なんてことない雑談をして、
『おやすみ。』っていって、電話を切った。
時間にして・・5分くらい・・かな。

でも、俺まだその電話の余韻を、引きずってる・・よ。


比呂は、家がわりとアレだったから
夜中に出歩くとかそういうのも、結構さもないことみたいなんだ。
でも俺は・・違うのね。
普通の家庭で、普通の親に育てられたから
夜中に出歩くなんて、中学まではありえなかったの。
高校に入って、比呂と出会って、多少夜遊びするようになったけど
でもね、やっぱ・・あたりまえじゃねえの。夜遊びすると、ドキドキするし。


さっき、比呂が来てくれたじゃん。
あいつはさ、あたりまえみたく塀ののぼって、木も登って会いにきてくれたけど
そんなの俺にとっては、ありえないことなわけなのね。
前にも何度かそういうのあったけど、でも今日は特別幸せだったんだ。
なんでだろう・・・・。きっとその、比呂のあたりまえっぽさが
俺の心を射抜いたんだと思う。・・・だって嘘みたいだもん。

去年の今頃は、もう俺、確か比呂に恋をしていたぜ?
かなうなんて思わなかったし、現に片想いは苦しかった。
だけど、毎日比呂を好きで、好きで憧れて、欲しくて欲しくて

そんな比呂が、夜にコンビニいってさ・・
アイスコーナーで、俺の探してたアイスを見つけてくれたんだよ。
なんでみつけてくれんの?他人だったら、確実にスルーしてただろ?こんなアイス。

でも見つけてくれて、買ってくれた。
その帰り道に俺んち寄って『食いな。』って置いていってくれた。
そんなとこ、想像すらしたことなかったよ。片想い時代。


で、その後の電話で『おかえり』と俺が言ったら
あたりまえみたく比呂が『ただいま』っていってくれた。
・・・俺・・本当に、幸せかみ締めるよ。
俺のために、わざわざ遠回りして、アイスを届けに来てくれた比呂。

この嬉しい気持ち、ちゃんと一晩温めて明日いっぱい返したいよ。



沢山沢山、比呂を大切にしたいと思う。



2007/05/03(木) 23:36:25
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