俺はずっと比呂の味方 夕飯食ってたら、かあちゃんが迎え火の話して・・俺、ハっときがついて、比呂に電話した。 盆時期って比呂、すごく不安定になるんだ。だから、慌てて電話したんだけど、 そしたら携帯繋がらなくて、家に電話したらおじちゃんがでて、後ろで赤ちゃんが泣いてて・・ 山梨にいるはずなのになんで?とおもったら・・ 『お盆だから、比呂と一緒に過ごそうとおもってね。』って・・。 麦や浅井も電話してきたとか言ってた。比呂本人は、バイトにいってた。 いつもは盆の間は休むのにって、疑問におもっていたら、おじちゃんが 『いつまでも、卑屈になってられないからって、そういってバイトにいったよ。』って教えてくれた。 この時期比呂は、黒く染めた髪をわざと色落として、地毛の赤毛で引きこもり生活をする。 おじいちゃんの家にいって、線香あげて、話して帰ってから ずっと引きこもり生活するのね。毎年毎年大きなプラモを一体ずつ完成させるんだ。 でも今年は、髪も黒い毛のまま。バイトいって働いている。 おじいちゃんちで、親戚の人と出くわしたけど 言われた文句に対して、ちゃんと文句を言い返して大喧嘩して帰ってきたんだって。 『胸がスカッとしたよ。今までなんで比呂は、言われっぱなしで 全部受け止めてしまうんだろうって、おもっていたから。』 そういうおじちゃんの言葉を聞いて、俺は胸がぎゅーっと痛くなった。 強がって文句言ったんじゃないかって・・言い返したことで、比呂が心の傷を さらに深くしてはいないかって・・・。 でもね、10時過ぎに比呂が着信あったのに気づいて電話してきてくれたんだ。 俺が『おじちゃんから事情聞いたよ』っていったら、比呂はふふっと笑ったんだ。 『お盆なのに、バイトいれてんだね・・。髪もそのままなんでしょ? 』っていったら 『いつまでも、殻にこもるやり方を続けていくのは、男らしくないとおもったから。 』っていうの。 『来年には一件店をまかせられて、頑張ってかないといけないし いい加減にしなきゃいけないなって・・思ったんだ。 やっぱ俺は、俺の人生をちゃんと生きなきゃいけないし この時期におっくんが心だけで戻ってきてくれるんなら 今頑張ってる俺を見て欲しいから、ちゃんと働いて、友達とも遊んで お前と沢山仲良くして、そういう姿をおっくんにみせたい。』 って。 ・・・・うれしかった。 『親戚の人・・なんていってきたの?』 今までだったら地雷だった話。でも俺は、それを比呂に聞いた。 比呂はちょっとだけ黙ったあと 『いつもどおりだよ。死ねだのなんだの。』 俺は目を閉じて痛む胸を押さえた。 『大丈夫・・・?』 絞り出した声はとても小さい・・。 でも比呂は、電話の向こうで、ははっと笑って言い切った。 『大丈夫だよ。』 どんな反論をしたのかとか、そんな話は比呂はしなかったけど 喧嘩してスッキリしたっていってた。 今思えば、なんでいつも言い返さなかったんだろうって不思議な気分だって・・。 だけどね、比呂が言うんだよ。『何かを乗り越えたような感じはしてる。』って。 俺は、電話切ったあと空を見た。この夜空の下で沢山の迎え火がともされているんだと思った。 命がなくなっても大切に思われるってどういう感じかな・・・ 音羽さんは、去年までとは違う今年の比呂を見てどう思うかな・・・。 目を閉じた。 うん。 そんな比呂を、音羽さんはきっと誇りに思うだろう。 強く生きることは難しい。でも、比呂は強くあろうと、ちゃんと努力をする。 心を折るような辛い記憶が、全身にのしかかろうとも 抱えた苦しみや悲しみの重さに、押しつぶされそうになろうとも比呂はちゃんと立つ。自分の足で。 その強さがどこから来ているのかといったら・・ きっと子供の頃に見ていた音羽さんの姿からなんだろう。 強い父親であろうと頑張った音羽さんの姿が比呂を導いているんだろう。 俺も思った。比呂は乗り越えた。 周りの人間からしたら、たいしたことない様に思えようと 比呂からしたら、とても大きな決断で、勇気のある判断だったんだとおもう。 長く続けてきたことを変えるって、ほんと大変なことだもん。 なんだか俺も勇気をもらったような気分になって 今夜は徹夜で勉強しようかなーって思って 夜食買いにコンビニいったら麦にあって 少しだけ話して別れたんだけど、泣きはらしたような目をしていた。 麦もね、きっと心配したと思うのね。比呂のこと。だけど、比呂は大丈夫だった。 なんか・・俺を置いてどんどん男らしくなっていっちゃうなーって・・そんな気がする。 でもいい。俺はあとから追いかけるから。 よーっし!がんばろー!! 2008/08/13(水) 22:59:30 |
||
NEXT |