『早くも決意崩れる』の巻

今日は、ちょっと早めに家を出て、比呂の通学路で待ち伏せした。
っていうか、ほぼ家の前で待ち伏せだったから
他人から見たら完全なストーカーだったとおもう。

それで、比呂が家から出てきたから、電柱の陰に隠れたんだけど
そしたら女が比呂に話しかけてきて、手紙渡そうとして比呂に断られていた。
乗った自転車から一旦降りて、その女に頭を下げてる比呂。
なんか頼まれてたけど、できません・・みたいなことを言って断ってる風に見えた。
女は泣いて手紙をしまうと、路地を走っていってしまって
後姿を見送っていた比呂がまた自転車にまたがる・・と
俺とガッツリ目が合ってギョっとされた。

『・・・・・・・・・・。』

自分イメージでは元気な声で、おはよう！っていったつもりだったのに
顔がめちゃくちゃ寒くて冷たくて、あれ？とおもったら、俺、泣いてた。
自転車を押して、比呂が俺に近づいてきてさ・・・
『那央・・』っていう声が、ものすごく小さくて低くてかすれてんの。
朝だから・・・寝起きと同じような・・・俺の大好きな声でさ・・・。

俺、メソメソ泣きながら比呂にさ・・『女に告られたんだね。』っていったんだ。
そしたら比呂は違うっていって、『道聞かれただけだよ。』だって。
見え透いた嘘ついてる比呂の顔は、すっごく優しくて・・目がかたっぽ一重で・・

俺、泣きながら『俺だけの比呂でいてよ。』っていった。
『・・うん。』って比呂はいってくれたよ。俺だけに見せるような優しい顔で。

俺は今日から生まれ変わろうとおもって、テーマは『男らしさ。』だったのに
朝っぱらからナヨナヨメソメソ最悪展開で、でも・・愛をいっぱいもらえたから嬉しかった。
朝のことは、いいこと以外スパっと忘れて、男の子らしく頑張るぞー！とおもって
１時間目の授業はキリっとした顔で授業を受けた。『ユッキー・・怖いよ。』って加瀬にいわれた。

で、休み時間に廊下を見たら、死にそうな顔で歩く比呂を発見。
体操服姿が寒すぎて、俺と目が合ってもしゃべれないんだよ。
・・・そんなひろがかわいくて、体育から帰ってきた比呂をとっつかまえた。
『おれの弟になにすんだー！』って坂口がいうからとりあえず無視をする。
『はいはい。パパと一緒に先に行こうね〜。』っていって
麦が坂口を連れて行ってくれたから、俺はまだ寒くて固まってる比呂の手を握って
一階の階段下の倉庫につれていった。

『なんかした？』比呂がやっとこさ喋る。かわいいの、それが。
ぼけたような顔で、すごくかわいいんだ。俺、比呂のことをじっとみて『ちゅして。』っていった。

『いつ？！』『今。』『え？いいのっ？』

・・・いいの？って・・なんだよー・・・もう。
そしたら比呂が、俺の事をさ、ぎゅーっと抱きしめてチュ・・どころじゃないキスをしたんだ。へへー。

午前中いっぱいキスの余韻に浸ってうっとりしてたら
また加瀬が来て『どしたの？キモイよ？風邪のひきはじめ？』
とかいうから、『なんでもないよ。水のみにいこうよ。』って
２人で水をのみにいったら、水道に坂口がいて
『あーー！ピンクのおまえ！てめえ紺野になにしたー！！』とかいうから
『なんで？』ってきいたら、坂口がハンカチで手を拭きながら
『いつもの３割り増しくらいでおかしい、あんたの比呂ちゃん。』っていうんだ。

なんかね・・
ボケまくってるみたくてさ・・昼飯のパンを袋開けないでいきなり食いだそうとしたり
教室のドア開けないで廊下に出ようとして扉にバーンとか・・

想像したら笑えた。
でも、考えてみたら比呂は休み中も仕事でいそがしかったんだよね。
俺とのキスでそうなったというよりは、多分過労・・。笑い事じゃないや。

ということで、午後からはちゃんと男らしく、『頼られる俺☆2008ファイナル』くらいの勢いで、
色々頑張ろうと思ったんだけど、放課後の掃除のとき見かけた比呂が、
ホウキをずるずると引き摺りながら、教室から出て行くのを見たらキュンときちゃって
駆け寄って『愛してるよ！』ってこっそりいって、そのまま走り去ったのね、俺。

で、廊下を曲がったあと、そっと比呂のほうを覗いてみたら
比呂がぽかーんとした顔で立ってて、そのあと
俺・・もう駄目〜・・みたいなかんじで、ホウキを小脇に抱えて
両手で顔を覆って、ふにゃふにゃ〜って廊下の壁にもたれかかったんだよ。


・・・か・・・

かわいいよーーーーーー！！！！




でもその直後、イノキのモノマネしながら接近してきた西やんに抱きつかれて
２人でなんかヒソヒソはなしながら、比呂はどこかに消えていきました。


そんでさ・・さっき、電話したんだけどさ・・声聞いたらさ・・朝のこと思い出しちゃってさ・・
俺、携帯にぎりしめたまま、ぼろぼろ涙がとまんなかったんだ。
俺の携帯・・防水とか大丈夫かな・・・とか、本気で心配になるくらい涙が出てさあ・・・・

『那央』って呼ばれるだけで嬉しくてさ・・俺は『うん』って大きく頷くんだ。

包容力の差は圧倒的。やっぱ比呂にはかなわないとおもった。
でも、まだ諦めないぜ。俺は生まれかわるんだ。今の・・こういう駄目な部分も・・・残しつつの〜
強い男に生まれ変わる作戦・・・的な？


・・・・・・。


う〜ん・・。



小沢に相談しよ。


2008/12/15(月) 23:37:06
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