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2009/3/2 (Mon.) 23:46:42 息子が泣く。 自分が生きながらえることを、申し訳なく思って18歳の息子が泣く。 死にたいと・・もう俺はいい・・といって静かに彼が泣く。 数日前に、自分の恋人を大事にしたいと・・ 未来の夢も私に語った・・その口で死にたいという彼の苦しみに 痛々しくて胸が締め付けられる。 大事なものを抱えるほど、自分の幸せに首を絞められて 自分ばかりずるいと・・満たされては駄目だと 未来を望んでは駄目だと・・そんな風に考えては 18歳なりの無邪気さで・・ 大事な人への抑えきれない想いや未来を 夢見て突然板ばさみになる。 数年前の彼は・・きっとどうでもいいから死にたかった。 大人に裏切られ、恋人にも去られ、母親に愛されない記憶の蓄積と 原因不明で死んだ父親の死の原因が自分にあると 周りの大人から責め立てられ、完全に死生観が崩壊する。 小学校や中学校の修学旅行には一度もいけず、初めての性体験は友達の母親だった。 無理やり関係を求められたというのに、彼はそれをぬくもりだと思った。 それでもなんとか本当の愛情にたどりつく。 初めての恋人は中学の国語教師の女性だった。そのころの比呂はとても安定していた。 しかし一度、墓参りのついでに寄った祖父宅で、親戚の人間に罵詈雑言を浴びせられて 服薬自殺を図り、それを助けたのがその女性だった。 認めてあげるべき愛だった。 比呂は彼女との結婚を夢見て、内緒でバイトを始める。 中学生の彼がわずかな時間で稼ぐお金などたかが知れていたのだろうが、 それでもなんとか続けていたようだ。私たちは見て見ぬふりをした。 それを指摘して話し合い、分かり合う自信がなかったし・・ 自分の意思で誰かを愛し、その人のために働く比呂を止める理由が・・ 大人の都合の言い分以外で、何一つみつからなかったからだ。 しかし大人の都合は無理やり通される。比呂は転校をすることになり その女性は学校を辞めさせられた。 比呂は完全に自分を否定した。自分が周囲を不幸にする。 自分が死ねばよかったと・・誰かが死ぬたびにそういった。 高校に入っても、好きだったその女性をわすれられず 不眠症になって激しい頭痛が続き、薬の過剰摂取の事故を起こす。 そこで初めて心療内科の診察を受け、彼の心の中の絶望を知る その後、どうやって彼と向き合っていいのか悩み苦しんだのだが 彼は徐々に安定していった。今思うと、そのころから幸村君と付き合っていたんだと思う。 比呂はいつでも周囲に気遣い、私たちとの関係をよくしようと努力してくれているように思えた。 よい方向に向かっているように思えた。 しかし雪の日が訪れた。わけもなく比呂は突然呼吸が途絶えた。 なんとか息をふきかえしたが・・記憶は過去までさかのぼった。 必死に耐えてきた過去と、今ある自分の幸せと・・父親の死という事実が 悲しいほどに比呂を苦しめる。 『生きたい』という普通の気持ちを・・いえない理由が比呂にはある。 否定され続けた幼少時代の心の傷は消えることはない。 その傷が痛むから彼は泣く。君が泣くなら僕が涙を拭く。 もう二度と君を一人にはしないよ。 |
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