自転車とマフラー 比呂が来たー・・。超かっこよかったー・・。 10時ちょい前からずっと、窓開けて外を見てたんだけど そしたら自転車をゆっくり立ち漕ぎして、比呂が来た。黒いマフラーして。 俺、小声で名前を呼んで手を振ったんだけど そしたら比呂、すっごい優しい顔で笑ってくれたよ・・。 それだけで泣けるのね。俺。 夜だとか、風邪ひいてるからだとか、色々なものが作用してんのかな。 でも、比呂がいて、笑ってくれるあの感じ・・ぐっとくんの。なんでか。 俺の部屋の前あたりでブレーキかけて、チャリにのったまま比呂が 携帯出して俺に電話してくる。 『もしもし?』 『・・どう?熱は?』 『・・・大丈夫。だいぶ下がった。』 『・・ほんとか?』 『ほんとだよー。もー!』 『大声出すなよ、ノド辛いだろ?声小さくても聞こえるから。』 ・・・そのために・・わざわざ電話を? 俺が感動して喋れなくなってたら、比呂が俺のほうに手を振る。 泣き笑いして手を振り返した。比呂が笑った。 『明日、学校これそう?』 『・・うん・・でも、まだちょっと息が苦しくて・・。』 『・・結構こじらせてたのかな。』 『ううん、飯も食えるし、そんな酷いとは思わないんだけど。』 『あーでも、疲れとかかもね。それに最近寒暖激しいじゃん。』 『うん。』 『休めってことだよ、きっと。ゆっくり眠りな。』 『・・・一緒に寝たいよー・・。』 『・・ああ・・。』 『・・・・。』 『・・ははっ。あっほ。』 『なんだよー!もー!!!』 一言話すたびに、さよならが近くなるから、俺は自然と無口になる。 今夜はすごく寒くって、マフラーだけじゃ凍えちゃうよね、比呂。 『・・那央ー・・。』 黙ってたら比呂が話しだす。 『・・・何?』 『いいもんやろうか?』 『・・・う・・ん?』 俺がきょとんとしていたら、比呂は自分の服のポケットから ジュースを一本取り出して『取れよ?』といって、俺の方に投げる。 届くかな?取れるかな?って、ちょっと怖かったけど 比呂が投げたジュースはちゃんと、俺の手に無理なく届いた。 あれ?なんか手紙がついてる。 『・・これ・・・。』 携帯を手にして俺は比呂に聞く。 『テガミ・・ついてるよ?』 比呂はふふっとわらって、『たまには・・とおもって。じゃ、俺帰るし。』 といって、俺にもう一度手を振った。 『もう帰るの?』『帰るさー・・。あんたも、はやく窓閉めな。』 ・・・・・もー・・。気を使いすぎ。 自転車漕ぎ出そうとする比呂に慌てて俺は 『おやすみ!どうもありがとう!!』っていって全力で手を振った。 そしたら比呂が、両手使って、盛大に投げキッス一回してくれたんだ。 『キモ!』とかいって、自分に突っ込んでる比呂がすごくかわいかったー・・。 比呂の姿が見えなくなってから、俺は窓閉めて手紙を読む。 <なおへ やっぱ、お前がいないとつまんない。早くなおってください。ほんと、たのむ。 昼休み、坂口と一緒に中庭で昼寝したら、俺、寝言いいまくってたみたい。 坂口にモロきかれたみたいだけど、内容については教えてくれなかった。 ただ、あいついわく『相当病んでいる』そうだ。こわ。 調子悪い間はゆっくり休んで 風邪治ったら、その分俺のそばにいて。 じゃあねー。バイビー。 ・・比呂〜大好きだよーバイビーだって、これ、まだ流行ってんの? 比呂と坂口の間でだけいまだに流行っている『バイバイ』の変化形・・。 一度目は、目で文字を追って、二度目は声に出して読んだ。 三度目を読み始めて、ふと、坂口に電話してみる。 『イタ電反対住民の会です。』 とかいう坂口の、ぶっとんだ応対をもろともせず、俺は聞く。 『比呂。今日、寝言いった?』 『は?』 『昼休み。寝言言った?』 『えー?ピンクちゃん、なんでしってるの?』 『比呂にきいた。でも、本人、何喋ったのかしらないとかいうから。』 『・・・・。』 その後坂口が、寝言を再現してくれた。 比呂は、寝ながら俺に対して、一生懸命あやまってたんだって。 『那央、ごめん。』って、何度も言って、 すごく悲しそうな顔してるから『俺のほうが悲しくなった』って 坂口が言ってた・・・。・・比呂・・。 『何を謝りたかったのかな・・。』 俺はぼそりという。そして俺が例のごとく悪い想像を始めようとした時、坂口にきっぱり言われる。 『比呂にはヤマシイことはないぜ。絶対そう思う。』 ・・うん。俺もそう思う。 その後、坂口の好きなやつについて、色々つっこみいれたんだけど あいつ、超口が堅くって、何も教えてくれなかった。 普段はくるくるパーなのに、そういうとこガンコなんだな・・・。 電話きって、ジュース飲む。おいしかった。なんか。 早く風邪なんか治して、比呂のそばにいてあげたいと思った。 2007/11/15(木) 23:25:39 |
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