おやすみ 今日、おぎやんを怒らせちゃったって言うか・・・。 朝、おぎやんが比呂に用事があったみたくて教室に顔を出したんだよね。 で、俺、なにかなーとおもって駆け寄ったら 『CD借りてたから返そうと思って。紺野いる?』っていうの。 なんのCDかなって思ったらさ、俺がまだ聞いたことないエルレのCDだったの。 比呂が俺より先に、エルレのCDをおぎやんに貸したのがむかついて おぎやんに、比呂の悪口いいまくっちゃったんだ。無神経だとか・・浮気もんだとか・・・。 勢いでだよ、もちろん。心の底から思ってるわけじゃない。 そしたらおぎやんがね・・・怒ったんだ。『幸村のそういうとこ、俺は好きじゃないよ。』って。 『比呂はお前の悪口なんか絶対言わねえのに、お前何様だよ。』って・・・。 普段、ボケたかんじで、おとなしいおぎやんにそんな風に怒られて、俺さー困っちゃって。 俺が比呂の悪口いうのなんか、ネタみたいなもんじゃん・・・・・。 怒られるなんて思わなかったから・・・・。 そしたら廊下の向こうから『あーれー?喧嘩かー。』って声がする。比呂だ。 ぱたぱたぱたーって走ってきて、俺とおぎやんの肩を抱くの。 『なにしてんの?ほんとに喧嘩?那央がなんかしたの?』っておぎやんにいう。 おぎやんは、俺の手からエルレのCDをとって、比呂に渡す。 『サンキュー。それだけ。喧嘩じゃないよ。』そういうとおぎやんは、教室の方に行ってしまった。 比呂が俺のほうを見る。俺、ハンベソ。ぐすん。 比呂がよしよしってしてくれた。そのまま水を飲みにいく。 『なんかしたの?あの人、怒ってた風にみえたけど?』 『・・・・うん。』 『お前が原因?』 『うん。』 『・・・・・。』 『俺・・おぎやんに比呂が貸したエルレのCD・・・一回も聴いたことないじゃん・・。』 『そうだっけ?』 『そう。だから、ムカついたの。』 『・・・・。』 『俺より先に、他の人に貸した比呂に、ムカついたの。』 『・・・・・・・・・・・・・・。』 水道について、比呂は蛇口をひねる。 冷たい水が、じゃーっとでてきて、比呂は手を洗って、自分の髪をぬらす。 『さっき、ノガミ先輩にあって、『後頭部が大惨事だぞ。』っていわれてさ。』 ・・・なんだ、寝癖か。俺は話を続ける。 『だから、おぎやんに、比呂の悪口いったんだ。』 『俺の悪口?』 『うん。いっぱい。』 『どんな悪口? 』 『無神経とか、馬鹿とか、エッチとか、スケベとか。馬鹿とか。』 『(・・・馬鹿二度目・・・。)』 『そしたら・・おぎやんが怒った・・・。絶対嫌われた・・・どうしよう。』 『・・・・・・。』 比呂は蛇口を閉めて、こないだ無印で買ったハンカチ出すと、手を拭いて 頭も拭いて、腕組みした。そんで、困ったような顔をする。 『そうだなー・・・。とりあえず、どうするかー。』 俺は、ベソかきながら比呂に言う。 『あやまりたい。』 『・・・・・あやまる?』 『だって・・俺が比呂の悪口を言ったせいで、おぎやんが怒ったから。』 『ああ・・そうかー。そうだなー。』 『だけど・・・。』 『だけど?』 『・・・・・。』 『・・・・だけど、何?』 怖い。許してもらえないと思う。だって、そんなに怒るようなことじゃなかったと思うし。 果たして俺の何がおぎやんを怒らせたのかわかんなくって。 でもきっと・・・やっぱ俺が、比呂の悪口いったのが悪かったのかな・・・。 腕組んで、首かしげたまま俺を見てる比呂。 ほんとの寝癖は、頭のてっぺんらへん。そこは、そのまま酷くボサってる。 かわいいよー・・・・ひろー・・・。 『だけど俺・・謝っても・・・許してもらえないかもしれない・・・。』 『・・・・・。』 『許してもらえなかったらどうしよう・・・。』 『・・・・・・。』 『おぎやん。許してくれると思う?大丈夫かなあ・・。』 うろたえる俺。同意がほしかった。絶対許してもらえるからって 比呂に言ってほしかったんだ。あの強気な感じの話し方で。 でも比呂はそんな風に言わない。 『さあなー・・。』 『・・・・・・なんだよ・・意地悪ハゲ。』 『・・・・・。』 『・・・・。』 比呂は、腕組みをやめて、腰に手をあてて、溜息をついた。 『馬鹿で無神経で、エッチで意地悪で、挙句ハゲか。最高だな。』 『・・・・・。』 比呂も怒ったと思って、恐る恐る顔を覗いた。比呂は別に普通の感じだった。 『那央がおぎやんに謝りたいなら、謝れよ。な。』 『でも許してもらえないかもよ。』 『それは、あいつが決めることじゃん。』 『・・・・・。』 『お前が悪いことしたと思うから謝るんだろ?その先のことは、あいつが決めることで お前や俺が、どうこういうことじゃないじゃん。』 『・・・・。』 『許してもらえないなら、あやまらねーの?それでいいの?お前は。』 『・・・・・・。』 俺は、比呂の顔を見るのをやめて、廊下の床をじっとみた。 比呂の顔見てると、次から次へと、好きって気持ちが飛んできて考え事の邪魔をするから。 そっけない床を見ながら、比呂にいわれた言葉を、頭と心で噛み砕く。 ・・・・・・うん・・。そうだよな・・・。俺が自分の意思でできることは、謝るところまでなんだ。 『謝る。』顔をあげた俺が言うと、比呂は、ははっと笑った。 『昼休みまでに、覚悟して、それで謝るよ。』 『そうか。がんばれ。』 比呂が先に教室に向かって歩き出す。♪俺には一ミリも謝らない君〜♪とか、 適当な歌を歌って歩く比呂の背中をみながら、俺は昼休みまでに謝る覚悟をできる自信が全くなかった。 でも、あっというまに昼休みが来て、俺、おぎやんを呼び出した。 ホットドック食いながら、廊下に出てきたおぎやんに 『朝はごめん!俺、何が悪かったかわかんないけど、おぎやん大好きだから 仲直りして欲しくてきた。ごめん!』ってあやまった。 ホットドック呑みこみながら、はとが豆鉄砲食らったような顔して おぎやんはしばらく固まってたけど、そのあとふふっと笑った。 『・・・比呂の悪口きくの、嫌だったんだ。朝は低血圧で機嫌も悪くてごめんな。俺も悪かった。仲良くしよう。』 俺はうれしくて、おぎやん抱きついた。そしてそのまま、ちょっとだけ立ち話をする。 『1時間目の休み時間に、比呂が来たよ。』 『え?』 『「俺の那央がごめんね〜。なんか変なこといったみたいで〜」って。』 『・・・そうなの?』 『そんであいつ、「ゆるしてやってよ〜。俺が代わりにお詫びするからさ〜、体で。」 っていうの』 『・・・・・・。』 『「一回500円でいいから。じゃ。」』 『あははっ。』 『ばかだろー。詫びのクセに金とるんだから。しかもワンコインだよ。』 『お手ごろだよね。馬鹿だけど。』 『だな。』 おぎやんと話せて、しかも笑えてうれしくて、スキップで教室に帰ったら 麦と坂口と小島と比呂で、黒板に落書きをして遊んでいた。 落書きと言うか、日本地図をかいてるんだけど、北海道の形が すっごいイビツですごいうけて、笑いながら近寄っていったら、 4人の足元に、小沢が座っていてびびった。みえなかったし! 比呂に向かって俺は、ピースサインした。 そしたら比呂が、にこって笑って『よかったっすなー。』と、しょこたん喋りで笑ってくれた。 ギザうれしすですよ。まじで。すっげー快晴って感じだよおれ。 そしたら比呂が、自分の机からCD出して、俺に『はい』って渡してくれた。 『あげる。それ。二枚あるから。』そういうと、小島の肩をがしっとだいて、 大きな声で歌いながら廊下に歩いていってしまった。 『逃げたな。』 『ああ、逃げたな。』 『北海道という壁にまけたな。』 『・・・・。 』 イビツにかかれた北海道。俺は手の中のCDをみて、最高ハッピーな気分になるのだった。 家に帰って、CDを聴く。比呂が大声で歌ってたのは、『おやすみ』っていう歌だった。 声が似てるから、すっごい思い出す。小島と2人で、でかい声対決みたいな感じでうたってて、 他のクラスのやつに『うるせー!!!』とか言われてたのとか、そういうの全部。 今日は部活の後、俺は塾で、比呂はバイトだから ゆっくりあえなかったんだけど、でもそれでも、なんかいっか。 今までの思い出をいっぱい巻き戻して、ゆっくりと感動に浸ろうと思う。 一周年カウントダウンだ。10日には、比呂が飯食いに連れて行ってくれるっていってた。 今日はサヤくん、夜泣きしないかな?今日も比呂は兄バカ全開なのかな? 今日の比呂は、那央バカでした。俺はいっぱい大事にしてもらえたよ。 大好き大好き。俺も比呂バカだ。 俺の人生の主軸に比呂。サイコー!! おやすみ☆ 2008/01/08(火) 23:49:44 |
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