かいぬし

今日は、朝起きたらすげえ憂鬱で何を見ても悲しくて
学校やめたくなって、勉強も全部投げ出したくなって
だけど、大好きな人に会いたいから
髪をとかして制服も着て、マフラーもして自転車をこいだ。

漠然としたこういう気分は、何の前触れもなく訪れるから
自分ではどうしていいのかわかんなくなる。

学校に行ったら、駆け足で階段を上って
廊下のロッカーの上で坂口とゲラゲラ笑ってる比呂に駆け寄り
抱きついた。


ふう。安心した。


『おーっす。どうしたー?』のんびり話す俺の彼氏。俺は、猫なで声で甘える。
『腹減ったー。餌ちょうだーい・・・。』そういうと比呂は、ぽっけからアメを出して俺と坂口にくれるんだ。

ポケットには3つアメが入ってて、俺と坂口に一つずつくれて、通りがかったほかのクラスヤツに
『おっす。アメ食う?』といって、ポンッと投げて渡す比呂。スキ。
『サンキュー紺野ー。』といいながら、そいつは自分の教室にはいっていった。

俺の彼氏は、友達いっぱいなのだ。

比呂にもらったアメは大きくて、口に入れたらほっぺが、おたふくかぜのようになった。
坂口と2人で、頬をさわりっこして盛り上がった。
気分がすっかり晴れたから、あのアメには魔法がかかっていたのかもしれない。


今日も比呂は部活とバイト。俺は部活と塾があって、なかなかゆっくりあえない。

会えないっていうことは、24時間のうち
俺の知らない時間比率が、グンっと増えていっちゃうってことで
さみしくなるし、不安になるし、悲しい悲しい悲しい・・・・

だから俺は休み時間になるたびに、比呂の背中に擦り寄った。
甘えると比呂は、俺を撫でてくれる。目が合うと、微笑んでくれる。

塾の帰りにバイト先に寄ったら、比呂はスタッフルームで煙草を吸っていて
吸い終わるのを大人しく待ってたら、比呂が俺を抱きしめてくれて、
たばこの味がするキスをした。
その間、何も言葉を交わさない。俺も、比呂も何も言わない。

言葉など必要ない。この行為は愛だ。

俺は比呂のにゃんこ。
気分屋だけど、気まぐれの原因は全部比呂なんだよ。
こまらせてみたいな・・気持ちを確かめてみたいな・・・
優しくして欲しいな・・・・俺だけをずっと好きでいてほしいな・・

どんなに甘えても、全然平気な飼い主の比呂はずっと俺の事を
かわいがってくれるんだろうなって思う


俺は飼い主に忠実な飼い猫だよ。

餌くれないと、死んじゃうからね。


2008/02/06(水) 22:21:44
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