あったか5


	あったか。比呂がー・・初デートでいった遊園地に連れて行ってくれたー・・。すっげうれしかった。相変わらず人はまばら。観覧車のペンキは綺麗に塗り替えられていた。俺はもうメリーゴーランドには乗らないし、比呂もそれを勧めたりしなかった。ジェットコースターのって、初デートの思い出を話しながら園内を歩き観覧車にのって、キスをした。やたらと照れくさかった。観覧車を降りてから、飯を食いにいこうと思ったけどせっかくだから外で食おうってことになって園内ではコーヒーを飲んだ。俺がベンチに座って、比呂は立ったまま話をする。両手でカップを包み込むように持った俺は、比呂のことを下から見上げる。・・大人っぽい顔つきになったなー・・。比呂と冬の空。・・・とても綺麗だった。バレンタインに、結局勇気が出なくって渡せずにいたチョコを渡した。手作りって・・やっぱ重たい？つかキモイ？とか自分でヒいて当日は・・朝ソッコーでコンビニでかったチョコをプレゼントに添えて渡したんだ。でもやっぱ・・一生懸命気持ちをこめてつくったやつだから思い切ってあげたのね。・・比呂のさー・・なんていうんだろう・・・。前にもまして頼れる感じ？そういうのに甘えてみちゃえって思ってさ。すっげーーーーーーー・・・・喜んでくれた。『お前作ったの？うそ！どうやってつくった？魔法？！！』とかいうから『本みて作った・・・でも・・あんま自信な・・』自信ないって言おうとしたら、比呂はもう食い始めてて・・・。『最高っ・・・。』っていってくれたんだ。あれつくったんだよ・・ガトー・・・ショコラ？見た目は完璧だったんだ。でも、味見できねえじゃん。きっちり一個分しか材料用意してなかったから。直径１０センチの小さめのやつを作ってさ、比呂はそれをガブって食べてくれて・・この子のこういうときの食いっぷりがすっごい好きで、思わず見とれる。反対側から一口食ったら、ほんとに美味くってさー・・ほっとしたら泣けてきて、気がついたら比呂よりもいっぱい俺のほうが食っちゃってた。あほすぎ・・・。恋人イベント、すげえスキなのね。だって俺らって・・なんていうんだろう・・・やっぱ男同士だからさ・・・恋人って意識があんまできないっていうか・・仲良しの最上級みたいな・・そんな感じなのね、実は普段。愛してるけど、なんかさ・・・恋人？っていう実感は・・あるんだけど、でも、でもー・・・友達としてもつるんでるから・・なんかさ・・曖昧なわけ。でも、バレンタインとかクリスマスとか、そういう日に２人きりで会ってるとめちゃくちゃ恋人って感じなの。俺、比呂の恋人であれることが、自分の一番の誇りなの。比呂の恋人になれた俺が、一番大好きな俺の姿なの。あー・・なんか・・わけわかんないや。比呂が優しくてさ・・ケーキ入れてたラッピングとか綺麗にたたんでくれて『すげえキチっと包装してあったから、店とかのやつと思ってた・・。よかったー・・これ、捨てられてたらお前・・俺わかんないままだったよ。お前が一生懸命作ってくれたのをさー・・食えてよかったし食ったら美味かったしー・・ありがとねー・・。』っていってくれた。比呂の目がちょっと涙目で・・『涙目になってるよ？・・やっぱまずかった？』って俺が聞くと、比呂はふふっと笑って、そしたら涙がちょっとだけこぼれた。『その手・・。』『え？』『・・これ包んでるときに？』『・・・・。』俺の両手。ケーキラッピングする時、包装紙であちこち切っちゃったんだ。俺、こういうの苦手だから、硬めの紙で包装したのね。切れるじゃん、紙ってさー・・手とかさー。痛えんだよね・・まじで。それに比呂が気づいてくれたんだ。俺は両手を擦る。へへ・・。この痛みも比呂の一言で報われた。一生懸命、愛してよかった。比呂のこと。俺の顔が勝手に笑った。早めの時間に遊園地を出て、電車で帰る途中、また二駅前で俺たちは降りた。ゆっくりと歩きながら、色々な話をした。そんな道すがら、キュートなカフェを発見して、そこで飯を食った。飯を食いながら、俺たちはまた話をした。色々なことを話しつくした俺たちは、互いの声についてまで話題に上げる。お互いに、それぞれの声をとてもスキだって、言い合って、そしてふふっと笑った。比呂は俺の声を聞くと、力が抜けるんだってー・・。なにそれ！ 5時から比呂はバイトで、俺も家の用事があったから間に合うようにさよならして、それぞれの場所に向かって歩いた。それがなんだか、今日はとても感慨深くてさ。あー・・ちゃんと・・俺らしっかりと、付き合ってこれたなーってそういう実感？安定？絆？一人ですっごい幸せかみしめた。目の前の左手には比呂からもらったペアリング。去年の俺は、してなかったんだもんね。幸せな時間は俺たちのあいだに、確かにしっかり流れてる。あったかい一日でした。うれし涙がでるよ。愛ってスゲエね。 2008/02/16(土) 23:57:43

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