手 レギュラーの奴らの試合の応援に行って来た。 行くの、すごく迷ってたんだけど・・・。 昨夜一晩悩んで、眠れなくて・・そしたら朝、麦から電話があってさ 『お前が来ないと、紺野がやる気でないからこーい。』って言われたの。 ・・・麦優しいから。 実際ね・・見たかったのね。比呂のことを一秒でも多く見たかった。 もう俺は比呂に触れることも、触れられることもなくて 片想いの頃みたく・・見て・・運がよければ話をして・・ そうやって・・心の中を満たしていくしかないから・・・。 ジャージに着替えて玄関を出た。だけど、思い直して家に戻る。 もう一度顔を洗って、髪をとかして・・比呂に買ってもらった香水をちょっとつけて ジャージの下に、比呂にもらったTシャツをきた。 ・・・もう俺は・・比呂の恋人じゃないけど・・それでも・・・自分の一番いいかんじの姿で 比呂とすれ違ったり・・話したりしたい。 市の体育館に行くと、試合は後半戦になってた。 比呂が頭に包帯をしていて、ユニフォームには血がついていた。 びっくりして・・俺・・泣きそうになって、涙を堪えた。 比呂にボールが渡って、ドリブルで進んでく。 そのまま比呂がシュートを決めた。すごくかっこいいとおもった。 俺・・気がついたら大声で応援していた。 ここのところ、ロクに喋ってもいなかったから 自分の声が自分の声じゃないような変な気分になる。 そしたら俺の『比呂ー!ガンバレー!』の声に比呂が振り返ってくれた。 視線が合う。頷いてくれた。・・・・すごく・・すごくうれしかった。 試合が終わる。結果、ピカ工は準優勝だった。 社会人の強豪チームには、やっぱ歯が立たなかった。 でも、麦も比呂も、すごくがんばってたし、悔しそうだけど、嫌な感じではなかった。 表彰式が終わって・・麦が俺のとこに来てくれたんだ。 『比呂・・どうしたの?』って俺が聞くと 『前のパターんだよ。速攻してたら突き飛ばされてさ。あそこの柵にぶつけて流血。』 ・・・鉄柵に頭ぶつけたんだって・・・。でも傷はそれほど深くなかったらしい。 『受身とれなかったの?』 『ああ・・。やっぱ本調子じゃないんだろうな。』 『え?』 『いつものあいつじゃ、余裕でなんとかできただろ。』 『・・・・・。』 『なかなおりできないの?まだあんたたち。』 『・・うん・・。許してもらえそうにない。』 麦はスポドリをのんで、ははっとわらう。 『紺野、ガンコだからなー・・。』 『・・でも俺が悪いから・・。』 俺が言うと、麦がぴしゃりといった。 『ああ。悪いのはお前だ。でも、紺野はそうは思ってないよ。』 『・・・は?』 『浮気された自分が悪いと思ってる。あいつはほら。バカだから。』 ・・・比呂はね、麦に『よくお前こそ浮気しなかったな。』って言われた時に 『浮気なんか・・する気もないのに出来るもんじゃねえじゃん。』って言ったんだって。 『あーあ・・。結局そういうことなんだよな〜・・。』っていって・・落ち込んでたんだって。 自分が浮気しなかったのは、それだけ相手が完璧だったからで 自分が浮気されたのは、それだけ自分がダメだったからだって・・・。 ・・・・・そんなことないのに・・・。 救護係のひとに、しっかりと傷の手当をしてもらった比呂が俺たちの方に走ってきた。 『おまえのでかい声、久々に聞いたよ。お前、今日は塾ねえの?』と声をかけてもらった。 『最近いってないんだ。』俺はそういう。勉強どころじゃないし・・塾いったとしても、比呂には言いづらい。 すると比呂が、俺のデコをパシンと叩いた。『勉強、しっかりヤラねーとダメだろ。』 ・・・・うん。 気を利かせた麦が、他のやつのほうに行く。2人きりだ。・・・・・・大好きだよ、比呂。 『傷、大丈夫?』 『ああ・・これ?平気平気。ちょっと血が出たから大げさにしてるけど、痛くもねえし。』 『ほんと?』 『ほんとだよ。大丈夫。』 微笑みあう。・・・・あーあ・・。なんでこんなにかっこいいんだろう。 他の部員に呼ばれた比呂は、『じゃあな。』といって走っていってしまった。 ・・・・そのまま俺、わき目もふらずに家に帰ってきた。 部屋に駆け上がって、ベッドに顔を押し付けて、わんわん泣いた。 勉強がんばらなきゃダメだって・・叱ってくれた。おでこをパシンと叩いてくれた。 会話が出来た。微笑みあえた。 なんとかしたい。やっぱりどうしても、比呂に甘えたい。 比呂といるときの心地よさと、安心感・・忘れてないんだ。絶対手離せないんだ・・・。 時間かかっても、なんとかして・・もう一度気持ちを話したい。 くじけたくない。何よりも大事だもん。何よりも比呂が大切なんだ。 大好きなんだ。 2008/02/23(土) 13:35:33 |
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