背中

放課後、掃除の後に比呂と麦と坂口が三人で、イスに座って話をしていた。
比呂の後姿・・。俺の大好きな広い背中。
楽しそうに話をしていて、その光景がうらやましくて
拒絶されたらどうしよう・・っていう不安を感じるその前に
気がついたら比呂のななめ後ろの席に座ってた。

少しだけ顔が見える位置。・・・あの頬にちゅっとしたいな・・。
見とれていたら、比呂が俺のほうを見た。

ギロっと睨まれる。びびる俺。そしたら今度は、あの優しい顔で・・・
いつも俺を見守ってくれてたあの優しくて愛しそうな笑顔で
俺を見てくれた。・・・・・俺・・泣きそう。

自分の座ってる席を動かして、俺向きに比呂が座ってくれた。

『塾いってる?』
『・・・うん・・』
『・・・ちゃんと飯くってんの? 』
『くってるよ。比呂は食ってないじゃん。』
『はははっ・・・でも、すっげえ寝てるぜ?』

『大丈夫なの?調子悪いんじゃないの?』
『悪かねえよ。寝てばっかだから、腹が減らないだけ。ふつうだろ。』
『ならいいけど・・・・・。』

微笑む比呂。・・・付き合ってたときと何も変わらない。

『そうだ、あのさー・・。』
『え?』
『お前聞いた?俺、バイトしばらくカフェのほう行くんだ。』
『あ、聞いたよ。ハルカさんから。』
『俺も昨日だか一昨日に聞いてさ。突然だからさ、あの人はいつも。』
『ずっとカフェなの?』
『や、違う。ちゃんと店長が決まったら、クロールに戻るみたいだよ。』
『・・・・そっか・・。俺、てっきり比呂が・・。』

比呂が俺を避けたんだと思った。

『なに?俺がどうした?っていうか、タイミングがなー。ごめんな。』
『・・・比呂はわるくないよ・・・。』
『そうなんだよ。俺は悪かねえんですよ。』
『ははっ。そうだねえ・・。』

・・・・・・俺・・・スゲエ素直だ、今日。
別れたんなら話しかけないでもいいよ・・・とか、思うことすら怖い。
俺は立ち上がって、比呂の肩を揉んだ。
ヤメロとかいわれるのが怖くて、その手は震えて、力が入らない。
でも比呂は、俺を拒絶しなかった。
『お前、うまいよねー・・。肩もむのとか。』
そんな事を言ってくれるんだ。前にも比呂にそんなことをいわれたことがある。

もどりたいよ・・。何で無くしちゃったんだろう。

部活の始まる時間が近づいたから、麦と坂口が席を立ち始めて
比呂が俺の手をぽんぽんってたたくと『サンキュー。俺らもいくか。』っていった。

比呂の手が俺に触れた。『俺らもいくか』って言葉が嬉しかった。
スキでスキでたまんないの。

あんなに長く話ができた・・。すっごいうれしかった・・・・。

学校以外でも会いたいよ〜・・。比呂ー・・・。


2008/02/26(火) 22:29:38
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