すき

『那央。日記読んだ。進路の事だけど・・・お前の好きにすればいいよ。
今がすごく楽しいのは・・・俺も同じだし・・・
離れたらさみしくなるなって思ってるのも、やっぱ俺も同じだし。
お前がちゃんと考えて、俺と一緒に横浜に行くって言うなら、俺は何も言わない。
・・・でも・・今、迷ってるなら、俺の話きいて?別にお前を責めるつもりじゃないから。

俺はね。

俺は、・・わざわざ離れてくことには意味があると思うし、無駄じゃないとおもうの。
期限のある人生時間4年分使って離れることは、辛くてもやっぱ大事なことだと思うの。

さみしい気持ちを理由にして、せっかく目標を見つけたお前が、それを諦めるのは悲しいよ。
京都のその大学選ぶのには、なにか理由があったんだろ?
俺は、お前と会えない時間が増えることもつらいけど、
俺と離れるのが嫌で、お前が夢を諦めるほうがもっと辛い。

確かに俺は決まった就職だから、進路は変えない。
でもそれは、別に俺が『やめます。』っていえば、どうにでも出来ることなんだよ。
進学も就職も、大事なものなのには変わりない。
でも俺は、横浜に行くし、できればお前が志望校に入れればいいなーっておもう。

こういう理由で・・進路を変えるって・・・どうなんだろうなって・・
俺、お前の日記読んでから、ずっと考えてたんだけど

状況は・・進路をどうこうしても、変わるときは変わる。
俺たちは、ひとりの人間じゃねえから・・状況の変化は避けられねえと思うの。
でもね。そんなのは外からの力だよ。
俺たちの内側の気持ちがしっかりしてれば大丈夫なことじゃん。
状況が変わっても、俺らの関係は変わらない。俺らが好き同志だったらね。

確かにお前が京都にいったら、隣のクラスに俺はいない。
でもさ、隣もなにも、俺たちには、学校卒業したら壁はないだろう。
クラスも何も関係ない。俺たちをわけるものなんか何もなくなるじゃん。
京都と横浜は遠いけど、だけど新幹線一本だよ。
どっちかが動けば必ず会える。会いたかったら、会えばいいとおもうんだ。

お互いの頑張る場所が近くても遠く離れても、頑張れるんならそれでいい。
でもどうせ頑張るなら那央は、せっかく見つけた夢を追いかけろよ。
お前が京都に行くって決めたとき、俺らいっぱい話し合ったじゃん。
そういう気持ちを忘れるなよ。俺も忘れないようにする。

俺の夢はお前の幸せだよ。俺一人じゃ叶えられない。
大事なんだよ、わかってくれよ。いつもお前を大事に思ってるよ。

確かに俺等は出会うまでに、多少時間がかかったかもしれない。
俺なんかお前に告られるまで、そんな風な目でみてなかったから
お前の優しさとか苦しさとかを、随分見逃してきたと思う。
もったいねーなーと思うけど、きっとそういう時間も無駄じゃなかったとおもうのね。
人の生きてきた時間に無駄なんかないんだ。きっとね。

今の那央がかわいいのは、今までの那央の生き方のおかげじゃん。
今の那央がちゃんと夢持ってるのは、今までの那央が頑張ってきたからじゃん。
俺がお前の力になれるなら、お互い頑張ろうなって・・・
離れちゃっても、頑張ろうなって・・そういう形でお前を支えたいよ。

俺が静岡を離れて、知らない土地で頑張ろうって思えたのはお前がいるから。
静岡にいなくても、俺のそばにいなくても、俺の心にお前がいるから。
心に決めた人がいるから、俺は他の事で頑張ることができる。
見えないモンだけど、支えって大きいよ。
俺が倒れたらお前も倒れるって思ったら、俺、ふんばれるもん。

もしかしたら・・俺がヘラヘラしてばっかで・・頼りないからお前が
今不安になってるのかもしれないけど・・・
ヘラヘラできんのも、お前のおかげなのね。
お前がいつも俺を好きでいてくれて・・うれしくってヘラヘラって感じ?

だから俺らが卒業して離れたら、俺も今ほどはヘラヘラできないけど・・・
仕事の合間にお前を思うよ。
それでも辛かったら電話する。そんで無理なら会いに行く。
どうにかしてでも会いに行くよ。

四年間、乗りきる努力は2人でしよう。でもそれはまだ先だ。
受験勉強は今しか出来ないんだから、迷うな。とりあえず。
行く行かないはともかく、受けて受かるだけの勉強を頑張れ。
一日二日悩むくらいならいいけど、これを引き摺ったら時間は取り返せないよ。
お前が一番よくわかってるだろ?目標は変えるな。迷ってるうちは進路は変えるな。

・・・・那央が受かって、京都行って・・頑張る姿を俺はいつでも想像して
頑張るよ。そんな俺を想像してお前も頑張ってくれよ。

那央ちゃん。俺等は出会えたんだから、もう大丈夫だよ。
出会うまでが大変で、今じゃ付き合ってんだから楽勝だよ。
乗り越えられないことって何かなーと思ったらどっちかが死ぬかってことくらいかなって・・
那央は多分長生きだろ。天使はしなないから。でも、俺が仮に死んだとしても、
こんだけ好きって気持ちはさー神様にも消せないと思うのね。
生き死にすら障害にならねーよ。すげえだろ。俺、最強かも。だから、何も怖がるな。』

バイトの休憩時間。

店のスタッフルームで比呂と俺は、話をした。
俺は泣いてて返事も出来なくて、そんな俺に比呂は、ゆっくりと優しく優しく話してくれた。
自分は最強だとかいうから、ちょっとおかしくて俺は笑った。
そしたら比呂は、俺の肩をぽんとたたいて、こういった。


『・・俺がちゃんと会いに行くから。』





2008/06/01(日) 01:39:21
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