2006/8/1 (Tue.) 17:16:53
比呂が退院した何日か後、部活に初めて顔を出した。その後、俺ん家に詫びに来たらしい。
部活の時には、ちょっとしか話せず、俺んち来た時に俺はおらず・・。だから声が聞きたくて、あいつの携帯に電話をした。
10コールくらいで比呂が出た。そしたら外にいるとか言う。
『どこにいるの?お前。』
『えー・・?ああ・・今飯食って・・ユッキー送って・・』
ユッキー・・?
『で、帰るとこだけど・・。』
『どの辺りにいるの?』
『あー・・お前んち近所の本屋の前だ。』
『・・なんでそんなとこにいるんだよ。通り道じゃねえだろ。』
『ぼーっとしてた・・・逆方向じゃん・・・。』
・・・。
『比呂。』
『・・は?』
『そこからなら、俺んちのほうが近い。うちに来いよ。』
『なんで。』
『今日は誰もいねえんだ。な、来いって。』
・・かっこわりい・・。必死だ。俺。
『えー・・・・・。』
比呂はぐずぐず悩んでるみたいで、こいつが即答しない時は、たいてい眠くてしょうもない時。
『あ・・・。』
受話器の向こうの比呂の声。すると、外から『おーい・・麦ぃ〜・・。』と、俺を呼ぶ声。
あわてて立ち上がり窓を開けたら、家の前で比呂が手を振っていた。
『・・なんか・・着いた。』
・・・・あほ。
玄関あけて、比呂を家に入れる。比呂はふらふらとしている。
当たり前だ。本当はもっと安静にしてなきゃいけないんだから。
俺は比呂の腕を掴んで、自分の部屋まで連れて行く。
そしてベッドに寝かせると、条件反射で枕を抱きしめ、比呂は寝る体勢に入った。
『来て早々に、もう寝るのかよ。』
俺は比呂に布団をかけてやる。泊まっていってくれるのかな・・・。それとも、ちょっとだけ寝て帰るのかな。
『泊まってく?』『・・ううん・・。帰る・・。』そういうと、比呂はゆっくりと目を閉じた。
俺は比呂の髪をかきあげ顔を見る。うん・・・。顔色は悪くないな。俺は比呂に話しかける。
『駄目だろ?ほっつきあるいてちゃ。』
『・・・・ん。』
『ちゃんと病院の薬のんでるのか?』
『うん・・・。』
『・・・反省してるな?紺野』
『・・・うん。』
『もう絶対沢山の薬を飲むんじゃないぞ?』
『うん・・。』
『それから・・・』
話を続けようとしたら、比呂が俺の口を手でふさいだ。
『眠い・・。』
バタン・・と比呂の手がベッドに落ちる。すうすうと、寝息を立てて比呂が眠る。
あっという間に・・比呂はもう夢の世界だ。
甘ったれの比呂・・。
俺はため息をついて、比呂の頬を何度も撫でる。
『ゆきむらとー・・どーこいってたー?』
小声で比呂に、言葉をかける。
返事なんかない。俺はまた比呂の髪を撫でる。
そのまま手を移動させて、比呂のくちびるを指でなぞったら、
比呂の真っ白な歯が、俺の指を、弱く弱く噛んだんだ・・。
俺は・・・俺は思わず比呂の頭を抱きしめて、そのまま比呂の体にまたがった。
駄目だもう・・・。もう駄目だ・・。
俺の頭には、ガマンって言葉すら消えて、理性もクソもあったもんじゃない。
その時、比呂が俺の腹を、思い切り蹴飛ばして、俺はベッドの上から転がり落ちる。
いてえ・・・。なんだこいつ・・おきちゃったのか?俺は、あわてて体を起こす。
ここまでしたんだ。もうこうなったら、無理でも何でもヤってやる・・とおもって
比呂の顔をみたら、比呂はすっげえ幸せそうな顔で、すやすやと眠っていたんだ。
・・・・気が抜けた・・。いつもこのパターンだ・・。
俺は比呂とやりたくてたまんないんだけど、この寝顔見たら、もう駄目なんだ・・・。
比呂に蹴飛ばされた腹が痛い。
でもな・・もっと、もっともっと・・・痛い場所が俺にはあるんだよ。
