2007/1/22 (Mon.) 16:44:38
昼休み、紺野ちゃんにメールで呼び出されて、機械科の実習棟そばの外庭に行った。
今日は機械科の子達は、実技の定着度調査があって今まで習った技術系の事を、一日かけてテストするんだ。
そんな大変な時に、何なのかなって思ったら、紺野ちゃんが、神妙な顔で俺のことを待っていた。
『紺野ちゃーん。』と駆け寄ると、紺野ちゃんは俺をみたけど、すぐにうつむいてしまう。
目に涙がたまってる。なにかあったのかな・・・。
『ごめん・・。幸村に話した。』
やっと紺野ちゃんが口を開く。ああ、転校のことか。そんなんでこんなに落ち込んでるの?
ちょっと前に、紺野ちゃんに転校の件を打ち明けた。
そのとき、2月になるまでみんなに黙っててって約束したんだ。
気を使わせたくないし・・・なんとなく・てれくさいし。
俺は紺野ちゃんのほっぺに、へにゃちょこパンチを食らわせた。
『言わないって約束だろが〜★』と、茶化す感じでいったんだけど、
紺野ちゃんは泣いちゃって・・ほんと、そこまでなんで気にするのさ。
俺・・正直言うと、もっと早くに紺野ちゃんは、周りのやつらに言ってると思ってたよ。
紺野ちゃんが、俺と目を合わせないまま、話をする。
『もうさあ・・みんなに言えよ。どんどん日ばっか過ぎちゃって俺・・どうしていいのかわかんないよ。』
・・・一生の別れじゃあるまいし・・、そりゃ俺だって君らと別れるのはさみしい。
だけど俺はもう何度目かの転校なんだよ?慣れてるから大丈夫なのに・・・・。
笑いのツボのおかしい俺は、最近涙腺系もイカレてるらしく、やばいのね。紺野ちゃん実習服だし・・
いつもと何気に違う感じだからか、余計に俺の心にずしんと響いた。
『紺野ちゃん・・俺ね・・みんなに気を使わせたくないんだよー。』
『・・・。』
『俺が転校するって知ったら、気を使うじゃん。みんないいやつだし。』
『・・・。』
『出来ればいきなり転校したいよ。この雰囲気のままでさー。
毎日楽しいし、毎日笑って楽しいことだけで終わりたいんだー。』
そしたら紺野ちゃんが、俺にへにゃちょこぱんちをくらわせてきた。
ぼろっぼろと泣きながら、いつもより早目の口調で捲し立てる。
『終わるってなんだよ。終わりじゃない!!そんなこと俺の前で言うな!
俺がどんだけ瑞希と離れたくないか・・・絶対お前わかってんじゃん。』
『・・・・。』
『みんなだってそうだよ。転校なんか関係ないっ。みんなずっと、瑞希といたいんだよ。
気を使わせたくないって・・そんなの・・』
一瞬紺野ちゃんは、言葉につまったが、またすぐに話を続ける。
『・・・この際、今でも2月でも一緒だと思う。だったら俺は早く伝えた方がいいと思う。
俺は秋にお前にこれを聞いて、今までいろいろ考えたけど、結局未だに心の準備が出来ないよ。』
『・・・・・』
『納得なんかできないじゃん。大好きなのに離れるんだよ?いつ聞いたって無理。それでもわかっていたいんだよ。
一緒にいるうちに思い出も作りたい。しばらく会えないなら、覚悟もしたい。だから話そうよ・・、瑞希、話せよ。』
・・・だけど・・
『だけど・・何度も言うけどさあ・・気を使うだろ?そんなの聞かされたら・・・。』
そしたら紺野ちゃんが声を荒げた。
『気くらい使わせてくれたっていいじゃん・・・・気ぐらい使わせてほしいよ。
俺らはお前が転校するって時に、気遣うことさせてもらえねえの? 』
『・・・・・』
『・・・瑞希はいつも・・・俺に気を使ってくれて、優しくしてくれたじゃん・・・。』
『・・こんのちゃん・・・』
『しばらく会えない時期のための準備じゃん・・お前大事にしたいよ・・。
このままお前がなんも言わないで・・・・突然いなくなっちゃったら・・』
『・・・。』
『気を使えなかった分、一生後悔が残るよ。』
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・・・放課後。俺はとりあえず麦に自分の口から転校のことを話した。
麦は絶望するみたいな顔をした後、無理やり笑ってくれたけど、結局最後にはぼろぼろ泣いてくれた。
小沢には電話で話をした。そしたら部室まで会いに来てくれて、俺の手を握ったまま、ぐずぐずと泣いてくれたんだ。
坂口は、そんな俺達のやり取りを見て、泣いてくれて
さっきからいろんなやつからの、メールがひっきりなしに俺の携帯に届く。
ああ・・・。こんなんじゃ・・別れが余計辛くなるじゃん・・・。
つらいなあ・・・だからいつもサクッと転校するようにしてたのに。
でもね・・・。嬉しい。友達泣かせてるのに何故だろうね。本当に・・嬉しいんだよ。
だから俺は今日は思い切り泣く。部活終わったらみんなで、別れを悲しむ会やってくれるんだって。
そんで明日から気もちいれかえて、今までどおり楽しもうって。
・・俺、ここにきてまだ片手であまるほどの年数しかいないのに、
こんなに抱えきれないほどの友達に囲まれることが出来た。
別れをこんなに惜しんでくれる・・・大事な大事な俺の友達。
大事な親友。本当にありがとう。