2006/4/28 (fri.) 23:35:10 この間風邪をひいた時、心配して駆けつけてくれたひろに、『お礼に夕飯作るよ』っていったら 『俺、バイトあるから無理。っていうか礼なんかいらない。』って突き放された。 その場では諦めて電話切ったけど、やっぱりどうしても会いたくて。 会いたくてたまらなくて、メールを送る。『バイト何時まで?』 するとしばらくして返事が来る。『なんで?』 ・・・・警戒されてるのかな・・・。 『なんとなく気になっただけ。何時までなの?』 会いたいオーラを必死に消して冷静にそれだけ打って送信。 そしたらメールがかえってきた。 『22時までだけど。』 私は一気にメールを打つ。 『22時でも何時でもずっと待ってる。料理作ってひろを待ってる。』 『来なくてもずっと待ってるから。絶対ずっと待ってるから。』 送信して電源を切り、髪を縛ってキッチンに向かった。 あとはひろが来るか来ないかの結果だけ。私は今できることをしよう。 服の袖をまくって手を洗った。ドキドキする。会いたいな・・・。 ・・・そして・・。 22時過ぎ。玄関の呼び鈴が鳴る。玄関を開けると、むくれた顔のひろがいた。 思わず抱きつくと、ひろが抱きしめ返してくれる。 『あんな無茶な誘い方あるかー・・。』ってかすれ声で言う。 玄関のドアが閉まって、私達は静かにキスをした。 『ほら。これ・・。』触れたくちびるを離すと、ひろが手に持っていた紙袋をわたしてくる。 中を見たらさぼてんの小さな寄せ植え。優しくてかわいらしかった。 『快気祝い。』 『・・・そういうのって普通私が渡すものなんじゃないの? 』 『え?!なんで?!』 『だって・・なおったの私だもん・・・。』 『・・・・。』 『でもうれしいっ!ありがとう!』 『はいはい。』 ぎゅっとひろの手を握って、部屋につれていくと、『わーーすっげー・・。』って声をあげるひろ。 私がつくったのはカラアゲの山。 つい最近友達においしいスパイスの調合方法教えてもらったから、一生懸命つくったんだよ。 ひろが食べてくれるとこ、想像しながら。 『つくりすぎちゃって・・からあげしかないし。』 『や、最高じゃん。俺、たぶん世界一から揚げが好き。』 『ほんと?!』 『・・まあ・・ファンタも好きだけど・・だけどやっぱ僅差でからあげが世界一か・・。』 『ファンタあるよ!今だすね!あ、ごはんも食べる?』 『え・・なんかすみません。』 キッチンに走って冷蔵庫を開けて、ファンタをコップに注いでたら 部屋の方から『やばい』って声が聞こえてきた。 慌ててのぞいたら、ひろがもうおいしそうにから揚げ食べてて 『かおりさん、料理うまいね。モテそう』って、くちいっぱい頬張りながらひろが言ってる。 私は返事もせず微笑みかけた。幸せな気分が私を勝手に笑顔にする。 前のカレーの時もそうだったんだけど・・この子の食べ方が大好き。 育ち盛りの男の子っていう感じの、食べっぷりのよさが私は好き。 『ほんとにかおりさんが作ったの?』『からあげ屋やればいいじゃん。』 ぶっきらぼうな褒め言葉に、私の心がハート型になって揺れる。 山のようなカラアゲを全部食べてくれて、よそったごはんは一粒も残さずにきれいに食べて そそいだファンタも飲み干して、それがとても気持ちよかった。 食器を片付けるのを手伝って、帰り支度を始めたから『泊まって?』って甘えたんだけど 『・・・帰る。もう遅いし。』っていいながらひろは玄関に向かおうとしている。 卑怯だとはおもいつつ泣いた。耳を塞ぎながら、子供のように泣くと ひろが、携帯を取り出して、どこかに電話した後、荷物をまたおろす。 私は耳を塞いでいた手を離し、ひろを抱きしめた。ひろは私を抱きしめて髪に顔を埋めてしばらく黙る。 そのままベッドに倒れこんで、ゆっくりゆっくり抱き合った。ひろに抱かれながら、私はぼんやりと考える。 ひろのすきなとこ、また一個見つけたって。 ・・・・私の肌の扱い方が・・とてもとてもやさしいところ。 事の後、ベッドに寝転んだまま、私はひろの髪をもてあそんでいた。 ひろは気持ち良さそうに目を閉じて、うとうとしながら黙っている。 そんなときにひろの携帯が震える。ひろは手を伸ばし携帯を開く。 メールらしくて文章を目で追うと、すぐに返事を打つから律儀だなあとおもった。 相手は友達。男の子らしい。 『・・・そんなに大事な友達なの?』 『・・そういうわけじゃないけど・・・でも・・うん。』 『・・・親友?』 『うん。親友だとおもう。』 『・・・へえ〜。どんな子?』 『・・・・・・ちょっとお姫様みたい。』 『男の子なのに姫なの?!』 『そう。見た目めちゃくちゃイケメンなんだけどどこかにこう・・・残虐さがあるような・・・』 『残虐・・?』 『や、そういう残虐じゃなくて。』 『じゃあどういう残虐なわけ?』 『だから童話の悪役姫みたいな・・ほら・・あるじゃん・・毒発言みたいな・・・。』 『・・毒舌?』 『そう。時々・・・めっちゃ刺されてる。俺。』 『あはは』 『・・・でも、冷血って感じじゃないんだけど。あの独特な感じ、うまく説明できない』 『・・・ふーん。』 『・・で、めちゃくちゃ頭いいんだよね。』 『そうなの?』 『うん。』 『ひろはどうなの?成績。』 『・・・見た目のまんまだよ。』 『・・・ドンマイ☆』 『見た目ドンマイってどーいう意味っ!』ベッドの中。いちゃいちゃじゃれあって、笑い声が途切れたらまたくちびるを重ねる。 口数の少ないひろが、お友達の話を沢山してくれて嬉しくて・・ 私は彼の背中にのばした腕にギュっと力を入れる。 男の子の友情って、うらやましい。もし同じ年頃に男として生まれてたら親友になれてたかな。 おもったけど・・だけど・・・そういう出会いも幸せだったとおもうんだけど・・ 私は、私に生まれてきたから今・・ひろとこうして抱き合えて 繋がりあえて触れ合える・・・だからやっぱり女に生まれてよかった。 |
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