2006/7/5 (Wed.) 13:56:13
今日はあいにくの雨。
登校時間が一番酷く雨が降っていたので、生徒たちはみんなずぶ濡れになって学校に来た。
この学校の子は、雨でも何でも、ちゃんと自転車で通ってくる。
安全面で心配な部分もあるが、そんな彼らをとても立派だと俺はおもう。
1時間目の休み時間。1年の紺野が授業の御用聞きにきた。
『失礼しまーす』と、気の抜けた声で挨拶をし、俺のところに歩み寄ってくる。
俺は今日やるプリントを、紺野に渡して授業の内容を説明した。しかし紺野の反応がない。
紺野の顔を見ると、ビックリしすぎて声が出ないというような表情で俺を見ていた。
『・・なに?』
『なにって・・、何その頭・・。どしたの?』
そういえば昨日、家で彼女に髪を染めてもらって、ついでにちょっと切ってもらったんだ。
『・・なに?変?』
『変じゃないよ。変じゃないけど、似あわなくない?』
『(ガーン)』
『誰かと思った・・・・つか、どうしてきった?』
『いや別に・・。』
『ふられたのか。』
『・・・は?』
『そうか、ふられたんだな。』
『・・・・いや・・あの・・』
『かwわwいwそwうwにwwwww』
・・・・お前・・(怒)。
紺野は、プリントを俺の机に置くと、床にしゃがみこんで、俺に話しかける。
『もー・・先生〜、まじで何した?浮気?借金?結婚詐欺?』
『はい?』
『でも俺は先生いい人だと思うよ?こんないい人振るなんてどんな女?見せて?』
『いや、あのな。』
『写真は?写真。』
『ないよ。』
『嘘だ、携帯見せてよ。本当は撮ってんでしょ?』
『ばっ・・ばかいうなよ。そんなもん』
『みせらんねーとこみると、ハメ撮り?!なにそれずるい・・・・うらやましい!』
『ハメ・・』
職員室で思い切り『ハメ撮り』なんて言う紺野比呂。
ちっとも人の話を聞かない・・。
『まあ・・・元気出してね。』
『おいおい勝手に、話を終わらすな。誤解を解かないとっおまえ・・。』
俺があわてて紺野に言うと、紺野は人のことを哀れむような目で見て、肩をぽんっとやさしくたたいた。
・・・・。
『わかってる。わかってるよ先生。』
『なにを?』
『ねえ、他に授業の道具ないの?』
『いや・・あの・・三角定規。』
『じゃあ、もらう。』
『あ・・じゃあ・・これ。』
『あーい。じゃあ、二時間目、よろしくお願いします。』
『・・あ・・ああ。』
紺野はそういうと、全員分のプリントを脇に抱え
三角定規を右手で持つと、よたよたと職員室から出て行ってしまった。
・・・お前・・誤解したままで行くな・・・・・・
『なんであいつって、あーなの・・。』
思わずそんな一人ごといったら、向かいの席の大神先生が、ニヤニヤして俺を見ていた。
あんた笑ってる暇があったら、助け舟でも出してくださいよ。
